「未熟な僕を試合で我慢強く使い続けてくれたからこそ、今の自分があると思っています」
2016年にアントラーズへ移籍した三竿健斗は加入当初、出場機会に恵まれない日々が続いていた。劇的な変化が訪れたのは2017年、監督交代がきっかけだった。
この年も石井監督が指揮を執っていた5月末まで、三竿は出場わずか5試合とポジション争いで苦しんでいた。だが、大岩監督が就任すると状況は一変。一気に序列を覆し、監督交代後はリーグ戦21試合に出場と劇的に出場機会を増やした。
大岩監督に守備者としての資質を見出された三竿は、翌2018シーズンもチームの中心に据えられた。指揮官からピッチ上で自由を与えられ、プレーしやすい環境を整えてもらった。「試合に使ってくれるということが一番の信頼だと思います。ほんとに自由にやらせてもらっていましたし、信頼を感じます」。三竿は感謝の気持ちを話す。
そして、三竿は指揮官からの信頼を得て、大きく成長を遂げた。それは選手としてだけではない。指揮官からミーティングで贈られた言葉が胸に突き刺さり、人間として大きく成長するきっかけになった。「『信頼されたければ、まず相手を信頼しろ』だったり、『厳しい要求することによって、周りに自分の言葉に責任をもたなければいけないから、自分も今まで以上にやらないといけない』だったり、心に残る言葉はたくさんあります」。言葉にしきれない感謝が三竿の言葉からは伝わってきた。
二人はコーチ時代も合わせると、約3年間ともに戦ってきた。2017年はリーグ戦最終節で優勝を逃し、2018年は宿願のACL制覇を果たしたが、国内で3つのタイトルを失い、W杯直前での本戦メンバー落ちも経験した。そして、2019年はここまで3つのタイトルすべて、怪我や出場停止で欠場した試合で失った。勝利の喜びもともに分かち合ったが、その分、悔しい想いもたくさん味わってきた。互いに本気で戦い抜いたからこそ生まれた絆がある。
「すごく感謝の気持ちはあるし、大事なときに僕がいなかったり、目の前で優勝できなかったり、タイトルをACLしか獲れていないので...。最後は天皇杯を獲って、いい形で終わりたいと思います」
その目は決意に満ちていた。己を大きく成長させてくれた指揮官への感謝を胸に、三竿健斗がアントラーズを決勝へと導く。
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