PREVIEW

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 天皇杯準々決勝 Honda FC戦から明治安田J1第30節 浦和戦まで、チームは不本意にも中8日の準備期間を得た。中8日の準備期間は、選手たちの疲労を回復する絶好の機会となるが、YBCルヴァンカップ決勝、ACL準決勝の舞台に立つことが出来なかった悔しさは否が応でも込み上げてくる。

 だが、やはりこの準備期間はポジティブに捉えるしかない。Honda FC戦の試合後、伊東幸敏が話していた言葉を借りれば、「ここから先は、毎試合決勝戦のような重要な戦いが続いていく。今のままでは、勝つことは難しくなる。まずはしっかりと身体を休めて、オフ明けに、みんなで1から浦和戦に向けて取り組んでいく」ことが求められる。残るリーグタイトルと天皇杯を絶対に制覇するためには、この準備期間を、最大限に有効活用して、シーズン最終盤の決戦に臨む必要があるーー。

 かくして、チームは2日間のオフ、1日練習を挟んで、もう1日のオフをとり、心身の回復とこれまでの戦いを振り返る時間を設けた。複数の大会を並行して戦う選手たちには、身体を休め、ゆっくり立ち止まって考える時間が、これまでほとんどなかった。開幕前は果てしなく長い旅路のように感じていたリーグ戦も、気付けば残り5試合になっていたような感覚を覚える。シーズン終盤に訪れたつかの間の休息で、ようやく冷静に歩いてきた道筋を振り返る時間を得られた。

 シーズン序盤は、様々な課題に直面していた。特に試合終了間際のリスクマネジメントは、改善するまでに時間を要し、開幕の2月から3月にかけて戦った公式戦8試合で、無失点に抑えた試合はわずか1試合のみと深刻な課題になっていた。だが、それでも8試合で7ゴールを量産した伊藤翔の活躍に助けられ、なんとか勝ち点を拾った。

 4月に入ると、チームのパフォーマンスはさらに落ち込んだ。伊藤翔の連続ゴールも止まり、アウェイFC東京戦で1-3の屈辱的な敗戦を喫するなど、深刻な不振に陥った。暗闇の中をもがくような日々が続く。だが、それでも選手たちは前を向き、胸を張って戦い続けた。慣れない右サイドバックで奮闘していた永木亮太、疲労の影響を隠して試合に出場し続けていた犬飼智也を筆頭に、全ての選手が勝利だけを目指して戦い抜いた。

 そんな懸命にプレーを続ける選手たちへ光を照らしたのは、アントラーズファミリーだった。5月3日の明治安田J1第10節ホーム清水戦、カシマスタジアムには3万1,182人が詰めかけた。割れんばかりの大声援が相手を圧倒する。アントラーズレッドを纏う選手たちが、奮い立たないはずがなかった。声援に心を震わせたという土居が先制点を奪うと、後半に2ゴールを加えて、3-0と快勝した。苦境に立たされていたチームが、ともに戦う背番号12の後押しで、調子を取り戻した。

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 そして、アントラーズは5月から8月にかけて行われた公式戦22試合で13勝5分4敗と好成績を残す。カシマスタジアムに限ってみると、9勝2分無敗と圧倒的な強さを示した。新たな挑戦を求めて海を渡る選手を見送り、負傷で戦線離脱を余儀なくされる選手もいたが、ブエノや名古新太郎の台頭、新加入の相馬勇紀、上田綺世、小泉慶の活躍など、チームの総力を結集して、勝利を重ねた。

 9月18日にはアウェイゴールの差でACL敗退という大きなショックを味わった。だが、その直後の天皇杯ラウンド16では、横浜FMに中村充孝の3ゴールで立ち直る強さを示した。10月13日にYBCルヴァンカップ敗退を喫し、またも悔しさを味わった。だが、明治安田J1第29節 松本戦では後半の追い上げで最低限の引き分けに持ち込み、天皇杯準々決勝ではしっかりとHonda FCに勝利した。

 ここまでの戦いを振り返ればわかる。どんな苦しいときも、チーム一丸で支え合い、這い上がってきた。競争しながら団結し、勝利を積み重ねてきた。だから、我々には揺るぎない自信がある。最後まで団結して戦えば、どんな困難も必ず乗り越えられると知っている。

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 リーグ戦は残り5試合。ここから本当の勝負が始まる。現時点では優勝争いというスタートラインに立ったに過ぎないだろう。これまで戦い抜いてきた試合の価値も、これからのたった5試合で決まってしまう。一戦、一戦、目の前の試合に集中して戦うこと。それだけが重要だ。最終結果以外は、何の意味も成さない。

 残りの全試合で我々の団結を示そう。勝利への揺るぎない自信をもち、これまで通り、目の前の試合の勝利だけを目指して戦おう。その先には、必ず歓喜の瞬間が待っているはずだ。

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