FREAKS

「感謝」の思いを胸に

LIFE STYLE ~トップを目指して~

第1回 鹿島アントラーズユース 3年生

LIVE STYLE

鹿島アントラーズユース

2023/4/18

筋トレが好きなストイックな選手たち

常にストイックな選手たちにとっては、トレーニングルームも大人気だ。どの選手も頻繁に利用し、筋力トレーニングにも時間を割いている。池田が「筋トレが好き。トレーニングルームが一番のお気に入り」というように、さまざまなトレーニング器具が備わっており、それぞれの鍛えたい部分を強化することができる。馬目にとっては懸垂や逆立ちもお手の物。「よく食べて、トレーニングをして、よく寝ること」を実践し、プロになるための体作りに励んできた。

トレーニングルームでは、器具を使わなくとも広い室内にマットを敷けば体幹トレーニングも行える。「プロになるために、フィジカルコンタクトや空中戦の強さを武器にしたい」と語るDF大山幸路は「そのために毎日、体幹トレーニングをしている。ケガの時期にトレーナーから教わったトレーニング方法をアレンジして、自分で考えたメニューをこなしている」と、自ら考案したトレーニングメニューで自身の肉体を鍛えている。

現在、右腕を負傷している嶋田は「電気治療やアイシングをして、なおかつ下半身の筋トレをしっかりやって、より早く復帰できるように準備している。専属トレーナーもサポートしてくれるのでありがたい」と再びピッチに立てる日に向けて治療を続けている。そのようにトレーニングルームはそれぞれの目的に応じて多様な形で使われている。

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筋トレが大好きな池田は軽々とバーベルを持ち上げる


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昨年はケガに苦しんだ坂本だが、ピッチに立てなくてもトレーニングルームで汗を流した


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トレーニングルームで逆立ちを披露する馬目。バランス感覚も磨いている


勉強面でもチームプレー

ただし、アントラーズユースの選手であるのと同時に、彼らはそれぞれ1人の高校生でもある。そのため、サッカーのトレーニングばかりに夢中になるのではなく、学業を疎かにしないことも大切だ。「高校生になってから勉強をやるようになった。良い点数を取れたらうれしいし、周りのみんなも勉強しているから、自分もやらなければと頑張れる」と小倉が言うように、テスト期間の前になると選手たちの生活はより“勉強モード”へと切り替わる。それぞれ、得意な科目と不得意な科目があることは当然のことだろうが、長山が「同じ学年の人に教えてもらったほうがわかりやすかったりもするから、テスト前はみんなで協力し合いながら猛勉強する」と明かすように、サッカーの試合と同様に勉強面でもチームプレーを披露。長山は自らの部屋で得意な数学をチームメートに教え、自身も「教えることで、自分にとっての復習にもなる」と相乗効果を生み出す。全員が学業にも励んでおり、嶋田は「勉強面で劣っている選手はいない」と胸を張る。

「プロになることもそうだが、世界に出て活躍する選手になりたい」という夢を持つMF平山京吾は、「1人部屋だからこそ集中して勉強できる」と日常的に英語の学習に取り組んでいる。「世界で活躍するために、夜などに最低30分は英語の勉強をしている」というように、サッカーと同様に英語学習でも重要視するのは日々の積み重ね。3月にオーストラリアへ遠征に行った際に、英語のネイティブスピーカーとコミュニケーションを取り、「英語をもっと勉強しないとダメだと痛感した」とさらなる語学力の向上に努めている。

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テスト前には長山が小倉に数学を教えるなど、それぞれが協力し合って学力向上に努める


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海外で活躍することを目指す平山は毎日の英語学習を欠かさない


必要不可欠な“家族の支え”

そんな選手たちは皆、中学校卒業と同時に親元を離れてアカデミーハウスに入寮した。大山は「家族が好きなので当初はちょっとホームシックみたいになった」と入寮当時の自分自身を懐かしみ、「今はもう大丈夫です(笑)。ここでは自分のことは自分でやらなければいけない。自立できる環境がある」と自身の成長を振り返る。小倉も「小学生や中学生のときは、サッカーの準備などはほとんど親にやってもらっていた」と実家では頼り切りになっていたことを明かし、「親がいないことで、自分でやることの大事さを感じている。最初は大変だったけれど、もう慣れた。自立や成長につながっている」と実感する。

三沢は中学時代に山形県からアントラーズアカデミーの門を叩き、当初は母親とともに鹿嶋へと居を移してアントラーズジュニアユースでの3年間を過ごした。ユースに昇格し、入寮するとともに母親は山形へと帰り、今では「親がいないので自分ですべてやらなければいけないから、親のありがたみを感じている」と話す。「両親と頻繁に電話で話し、6匹の愛犬の状況も確認して癒やされている」という池田は、オフの日になると「両親を呼んだら地元の千葉県から鹿嶋に来てくれる。一緒に買い物をしたりして過ごす」と家族団らんのひと時を楽しむこともあるようだ。

プレミアリーグ昇格、クラブユース選手権優勝、そして、トップチーム昇格――。アントラーズユースの3年生10人がこの地で高校時代を過ごす目的はそれぞれが多く持つが、その一つに「感謝」や「恩返し」という言葉も発せられた。

「親や、これまでに指導してくれた人たちがいつも応援してくれることに対して結果で恩返ししたい」(壱岐)

「親はわざわざ鹿嶋に引っ越してきてくれて負担もかけたから、絶対にトップチームに昇格したい」(三沢)

さまざまな思いを胸に、それぞれの夢と目標を実現させるために――。雨にも負けず、風にも負けず、アントラーズユースの3年生が高校生活最後の1年間に全力を注ぐ。

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巨大な照明の下に並ぶ生け垣の向こうにはトップチームの練習場が広がる。その場所でボールを追いかける日が来ることを目指し、3年生は今日も汗を流している