INTERVIEW
鹿島ユース2024 REVIEW
鹿島アントラーズユース 柳沢敦監督

2019年からユースのコーチとして、2021年からユースの監督として、6シーズンに渡り“トップの主役となる選手育成”を目指してきた。2019年にコーチの立場で経験した、プレミアリーグ。その年に降格となったが、昨年に自ら監督として高円宮杯プレミアリーグ復帰。その1年目で最終節まで優勝争いを演じた。柳沢敦ユース監督が振り返る、2024シーズンとは。
アカデミー全体で戦っている空気感
――最終節の結果を終えて、得失点差2で惜しくも優勝に届きませんでした。振り返っていかがですか?
「ポイントは第21節横浜FC戦でした。最終節を残して優勝を争う直接対決だったので、そこで勝ち切れるかどうか。そこができなかったことが大きな差だったかなと思います。リーグ全体としてはそこまで大きな差があるリーグではなく、どこが優勝してもおかしくないと感じました。その意味では選手たちが優勝を争うシビれる試合ができたのは、いい経験ができたなと思います。サッカーに“たられば”はないものですが、今シーズンは振り返ると結果的に多くありましたね」
――ホームでの敗戦は1試合のみ。ジュニアやジュニアユースの選手たちがチャントを歌ってユースの選手たちを応援する姿はアカデミーとしての一体感を感じました。
「やはりホームのアドバンテージを強く感じました。そのなかでアウェイでどう戦うのかは教訓になったなと思います。カテゴリーに関係なくユースの選手の名前で応援するジュニアやジュニアユースのみんなの姿は、やはりアカデミー全体で戦っていると感じましたし、みんながつなげてきたものをいい形で表現できればと思っていました。ユースの選手が目標とされる存在になるのも非常に大事なことです。優勝できなかったのは残念ですが、それをユースのみんながいい形で表現してくれました」
――今シーズンはプレミアリーグで中学生を起用。Bチームも「IFAリーグ1部(茨城県リーグ)」で優勝し、茨城県代表として「高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2024 関東2部リーグ」参入を決めました。
「プリンスリーグ参入を決める試合で、非常に悔しい思いをした選手たちが躍動している姿はとても頼もしかったです。それを満男(小笠原テクニカルアドバイザー)がBチームの監督としてうまく引き出してくれていたなと感じました。これからまた競争がグッと高まる雰囲気があり、今後に期待しています。まず“戦える選手”というのがベースにあって、そこに個の技術の高い選手がよりタフになってきているので、その意味ではレベルが高くなっていると思います」
――プリンスリーグ参入戦では、中学2、3年生も出場していました。ジュニアユースとユース、ユースとトップチームというカテゴリー間の連携や関わり合いについてはいかがですか?
「ジュニアユースの選手がたくさん試合に出ている環境なので、常に連携を取り合っています。日常から良かった選手を聞きながら、ユースとジュニアユースの交流戦をしたり。常にいい選手は上のカテゴリーでやるべきだと思っていたので、本当にそういうことができる、またできているのはJクラブならではの強みだと思います」
――カテゴリーに関係なく、選手育成を一番にしたいい体制が作れているのですね。
「アカデミーのスタッフ間での考えが一貫しているので、僕自身もすごくやりやすかったです。この人は違うことを考えていて、この人は違うサッカーをやりたいとなると、なかなかうまく子どもたちに伝わらないし、長い目で見てもつながっていきません。アカデミー全体が、年代ごとに大事な根本的なメンタリティやフィジカルだったり技術面についての価値観が一貫しています。その意味で迷いなく指導に取り組めたので、とてもやりやすかったですね。ただ、より質の高い選手が多くなってきています。そこをいかに増やし続けるか、いかに成長させることでトップにつなげていくか。それが今後、さらに上積みしていくべき部分だと思います」
――自主練をしていたジュニアユースの選手をユースの練習に入れてあげたこともあったそうですね。
「そういうのもきっかけの一つですよね。自主練に来ていて、頑張っていればそういうこともあるんだって。あのときはいいタイミングでしたね」
――チャンスを少しでも与えて見せていくことは意識しているところですか?
「そうですね、やはりアカデミー年代ではみんなにチャンスが与えられていることが必要です。ただ、そのチャンスは自分でつかむものだし、どこに転がっているか分からないもの。それが試合なのか、その日の練習なのか、はたまた自主練なのか。いつチャンスが訪れるか分からないからこそ、“常に準備していることが必要なんだ”ということは、常に選手たちに伝え続けていることです。チャンスをつかむ子もいれば、チャンスがありながら苦しんでいる子もいます。みんなそれぞれが違う状況でもがいている。そのなかで、みんながより良い方向に行ってもらいたい。その一心ですね」
――柳沢監督自身、19年間のプロ生活を経験しました。メンタルは長くプロとして続けていく上で大事なことの一つと言えるのではないですか?
「本当にそうですね。基本は上手くなりたい、上を目指したい、負けたら何クソと思うような人じゃないと、やっぱり上には行けない。悔しい気持ちは常に持っていないといけません。でも、自分もサッカーでうまくいかないとへこむタイプだったので、そこをどう奮い立たせるかは、いろいろな人の話や先輩との食事での話を聞くことで助けてもらった部分があります。そこも育成年代とはいえすごく大事なことで、それが“手助けをする”ということ。チャンスを与えるのも一つだし、個別に呼んで話をすることもたまにありますが、僕らスタッフはそういうところでしか手助けができないんです。プレーするのは本人だし、やっぱりやらされるのは嫌でしょう。自分から取り組んでいるときが一番身になっていくものです。そのスイッチが入るか入らないか。僕自身も中学生のときに入らないことがありましたが、変な話ですが、何かを間違えたり何かを失ったときに、初めて自分で気がついてスイッチが入るのだと思います。何かを失ってからでは遅いので。いい意味でのきっかけを与えたいなと思っています」

みんなの支えがあって良いチーム作りができた
――かつてアントラーズの選手として戦った仲間が、OBコーチングスタッフとしてアカデミーを支えています。この環境を柳沢ユース監督はどのように捉えていますか?
「スタッフのみんなとは、一緒になって子どもたちとやってきた感覚があります。一人ではやり切れないことばかりだったので、本当にみんなに支えてもらいました。チームとして今年の成績までなんとか持って来られたのも、みんなに助けてもらったおかげです」
――組織としてとてもいいチームを作っているなと見ていました。
「いやあ、本当に良いチームでしたね。里内さんの熱い感じや『俺の孫くらいの子たちや』と言いながら、ものすごく選手たちとコミュニケーションを取っているんです。地元はどこで何が好きとか、ピッチ外のところでもいろいろな話をしていて、もちろんピッチ内のコンディショニングやプロの選手としての必要な考え方まで、人として大きく成長するきっかけを与えてくれる存在です。 満男は満男で、ものすごく情熱を持ってやってくれていた。僕は一人に何かを話すというよりは、全体に声かけることを意識していました。これは必要ないことかもしれないと悩んでいることの一つですが、ただ、満男は子どもたちに対して個別でいろいろな話をしてくれていました。その意味では、僕はフラットに全体を見ながらだったので、選手たちからすると直接的に支えになってくれていたのは満男だったのかなと思います。 ソガ(曽ケ端GKコーチ)も昨年の1年目から怖いキャラなのかと思いきや、不思議と選手にイジられる優しい一面もあって、選手が『お父さんみたいな感じで優しく見守ってくれる』と言っていたり、すごくいい存在だなと思います。 イチさん(市川コーチ)は、いろいろなことを教えてくれました。アカデミーの指導者としての経験が長いので、悩んだときに聞くといつも意見をスパッと言ってくれる。昔はどうだったとか、こういうときはこうだったとか。もちろんその通りにするときもあるし、自分の考えで決めることもありましたが、いつも的確な判断材料を与えてくれて基準を作ってくれた。僕自身もその意見をもとにすることで決めやすかった。すごく助かりました。チームを見る視点でも、締めるところは締めてくれるので、すごく頼っていましたね。 岡本コーチもピッチ外では子どもたちの私生活の部分で寮とか係の仕事など細かいところまで見てくれていたので、選手が思っていることや抱えていることをよく聞いてくれていました。大岩コーチと福原コーチも同様に、選手たちとよくコミュニケーションを取っていろいろとやってくれていた。本当にいいチームで、僕は何もやることがなかった。役割分担ができていたなんて言ったら失礼なくらいですよ。一緒にやれて本当に良かったです」
――曽ケ端コーチの誕生日に選手たちから水をかけられて祝福される姿がありました。トップのときには想像できないイジられシーンで、とてもチームとしていい関係にあると感じました。
「本当ですよね(笑)。昨年のインドネシア遠征のとき、なか日にプールでの自由時間があったんです。そのときに、ソガが優しい目で見守っていて、選手たちからお父さんだかお兄ちゃんみたいとイジられたり。まあ、満男がいるから成立しているところがありますけどね。選手の前でもたまにイジるので、それを真似しているのかもしれない(笑)。選手たちからすると、『ソガさんて実は優しいんだ』みたいな」
――柳沢ユース監督にとって、監督という立場では初めてのプレミアリーグになりました。ご自身がこの1年間を通して感じたことは?
「僕自身も必死でした。選手と同じで、監督としては初めてのプレミアリーグ。責任あるポジションでやらせてもらえることに感謝しながら、選手たちとともに、もがき苦しんで成長できたかなと思います。でも、細かいところを思い出すと、失敗やもっとこうしておけば良かったかなというところが多々あるんです。それでも前に進んでこられたので。より良くしていきたいという思いが心にあって、良い方向に導いてあげたらという気持ちを常に持ってやれたかなと思います。できたかどうかは別ですよ。できなかった部分が多いので。ただそんななかでも、ともに戦ってくれたみんなに感謝したいです」
――2025シーズンはトップチームのコーチ就任となりました。今シーズンは、今後につながるユースでの1年間になったのでは?
「プレミアリーグに上がって1年目。残留という目標から、みんなが何かを掴みたいという気持ちで戦ってくれた結果、終わってみれば選手の頑張りがあっていい結果が出たかなと思います。ただ、もう一つ足りなかった部分が何だったのか。そこは今後につなげていかないといけないかなと思います。僕は来シーズン、トップチームのコーチとなりますが、今後も変わらずトップとアカデミーで連携していくことになります。タイトル獲得に向けて、僕自身は新監督である鬼木さんをしっかりサポートしていければと思っています。アントラーズのために、来シーズンも全力で取り組んでいきますので、ユースはもちろんトップチームも含めて応援してもらえたらうれしいです」
