ACADEMY FREAKS Vol.7

練習から“1点”にこだわって

INTERVIEW

鹿島ユース2024 REVIEW
佐藤海宏キャプテン

高円宮杯プレミアリーグ復帰1年目で幾多の激闘を繰り広げ、惜しくも頂点には立てなかったものの最終節まで優勝争いを演じた鹿島ユース。
キャプテンとしてチームをけん引した佐藤海宏選手が、高円宮杯プレミアリーグでの戦いと、チームの2024シーズンの歩みを振り返る。

3年生が下級生に助けてもらった

あと2点、届かなかった。

高校生年代の最高峰の舞台である「高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2024 EAST」に復帰した1年目、終盤戦まで上位争いを繰り広げ、最終節の尚志高校戦でも2-1の勝利を挙げた。しかし――。

「勝った気がしなかったです。なんか、勝ったけれど、“悔しい”っていう思いが一番。試合後は自分の気持ちが、はっきりしませんでした」

首位の横浜FCと勝ち点で並んだものの、得失点差で“2”点及ばず、2位でシーズンを終えた。念願だったプレミアリーグEASTの優勝と、「高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2024ファイナル」への進出はかなわず。佐藤海宏は無念の思いを、後輩たちへの期待へと昇華させる。

「来年は“優勝候補”としてプレミアリーグEASTを戦い、自分たちの代以上の結果を残してほしい。優勝して、プレミアリーグファイナルでも勝って日本一になるところまで、自分たちの分も頑張ってほしいです。ユースにもジュニアユースにも本当にいい選手がたくさんいて、下の学年の選手たちが、上の代の試合に出場する機会が増えてきています。彼らはそれぞれの年代で活躍することに満足するのではなくて、常に上を目指して戦ってもらいたいと思います」

2023年にプリンスリーグ関東で優勝し、プレミアリーグプレーオフを勝ち抜いてユースを最高峰の舞台に押し上げた代から新チームへと移り変わる。佐藤海宏が“キャプテン”に指名されたのはプレミアリーグEAST開幕の「1週間前くらい」だった。

「柳沢監督から個人的に呼ばれて言われました。そのときは心構えもあったので、プレッシャーに感じることもなかったし、自分に任されたのだから、しっかりとその役割を果たそうと思いました。ジュニア、ジュニアユースでもキャプテンだったので、ユースでもそれなりに務められるのではないかと思ったんです。ただ、リーグ戦が始まるとまた違った心の持ちようになったり、気持ちの変化だったりを自分の中で感じていました。ユースのキャプテンとなると、より責任が大きくなるなと」

キャプテンとして臨んだ、プレミアリーグEASTの初陣。「昨年からプレミアリーグEASTに出ている選手も多くいて、開幕前は優勝候補だと思っていた」と評する柏レイソルU-18を相手に1-3で敗北を喫し、チームとしての実力不足を痛感した。脳裏には、市川友也コーチの言葉がよぎる。

「選手は誰もプレミアリーグEASTを経験したことがなく、自分たちがどれくらいやれるのかもわからない中で、以前にその舞台を経験している市川コーチから“このままでは残留争いをするぞ”と発破をかけられたことが自分自身の心に残っていました。もちろん“優勝”を目標に掲げていたけれど、そんなに簡単なリーグ戦ではないと気が引き締まりました。実際に1勝するのにも時間がかかり、難しいリーグ戦だと実感しました」

開幕から3試合で白星を挙げられず、「不安になることもあった」というが、第4節の横浜FCユースで初勝利を手にする。試合会場となったのは、アントラーズの“聖地”である県立カシマサッカースタジアム。この1勝が、快進撃への起爆剤となった。

「前期の横浜FCとの試合で、カシマスタジアムでプレミアリーグ初勝利を挙げられた。いい形で勝つことができたので、選手のみんなも自信が湧いてきたし、勝ったことで得られたものは大きかったです。その後も、その試合を基準にしながら戦っていくことで、連勝できたり結果もついてきた。チームのさらなる自信につながったように思います」

5月、6月にかけては青森山田高校(第6節・3-0)、昌平高校(第7節・1-0)、大宮アルディージャU18(第8節・4-0)、FC東京U-18(第9節・2-1)を破竹の勢いで次々と撃破し、4連勝を達成した。7月のリーグ中断前に行われた川崎フロンターレU-18との試合では、劇的な形でシーソーゲームを物にする(第11節・4-3)。好調を支えた一因として、キャプテンが着目するのは1、2年生の活躍ぶりだ。

「下級生はそんなに緊張している様子も見せず、自信を持って戦ってくれました。特に1年生は、昨年まで中学年代でプレーしていて高校サッカーの経験が浅く、2年生も試合経験が少なかったりして慣れていない状態でした。それがこれまで2年間、高校年代でプレーしてきた自分たち3年生の力が必要ないくらい。本来は自分たちが下級生のことを引っ張っていけたらと考えていたのですが、むしろ3年生が助けてもらったと思っています」

 

キャプテンとして培った経験や、精神的な強さを生かして

2年生の大川佑梧、長疾風、1年生の吉田湊海、福岡勇和、平島大悟、大貫琉偉といった下級生たちはAチームの主力となり、年代別日本代表にも招集された。そんな中で迎えた、7月下旬の「第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会」ではグループステージ敗退となったが、その後の石川県での合宿で、ひときわチームとして成長を遂げた。

「夏の帰省からチームに戻り、石川県の和倉ユースサッカー大会に参加しました。ただ、その大会では早々に敗退してしまい、そこから強化合宿が始まりました。練習試合の合間にも走ったり、今振り返るといい思い出だけれど、そのときはすごくきつかったです……。“あのときに比べたら、もう他にきついことなんてないだろう”と思うくらい。たぶん、みんなも同じ感想だと思います(苦笑)。それからは試合の前半にいいプレーができなくても、ハーフタイムの円陣で“俺たちはきついことをやってきたじゃん!”って言い合って開き直れるようになりました。きつい練習を乗り越えてきたことで、チームの一体感がより高まったと思うし、それが1年間を通してチームとして成長できたところだと思います」

強化合宿によって、選手たちはよりたくましくなった。精神的にも、そして肉体的にも。それは感覚ではなく、実際に数値としても具現化されていたという。

「この一年間、柳沢監督から“チームで結束すること”を強調され、きつい練習のときには声をかけ合って、チームとして少しずついい雰囲気で取り組めるようになってきました。それに、自分たちのパフォーマンスデータで見ても、いい数値が出て、強度の高いプレーができた試合はほとんど勝っています。その数値を変に意識するわけではないけれど、後半に足をつる選手も少なくなったし、高体連の強豪チームに対しても自分たちの強度が通用するようになってきました。それは1年間を通してきつい練習をたくさん積んできたことで身に付いた自信がベースにあるからこそ。例えば、後期の前橋育英戦(第20節・2-1)では、いい数値も出ていたし、同点に追いつかれてからも切り替えて1点を取って勝てたし、いいサッカーができました」

日々の積み重ねが、プレミアリーグEASTでの2位という結果に結びついた。アントラーズの選手として求められる“タイトル”には手が届かなかったが、その舞台で味わった悔しさと教訓は、この先の未来に向けた糧となる。

「最終的に他のチームと比べて失点数が多かったことが、優勝できなかった大きな要因だと考えています。踏ん張るべきところで踏ん張れずに連続失点してしまったり、自分たちが点を取った後に、すぐ奪い返されたり。立ち上がりや終盤といった、試合を分けるような時間帯での失点も、自分たちには多かったと一年間を通して思います。前期でいったら市立船橋高校戦(第2節・1-1)で後半アディショナルタイムに追いつかれたり、前橋育英高校戦(第10節・0-4)で4失点したり。勝った試合でも、川崎フロンターレU-18戦(第11節・4-3)では3失点と、失点数は多かった。どこかであと1点、2点でも減らしたり、一方でゴールを決められるところで決めたりできていれば、最終的にはまた違った結果になっていたでしょう。2025年は自分がJリーグの試合に出ていくためにも、やはり練習から“1点”にこだわって取り組んでいきたい。試合で自分に1本でも得点チャンスが来れば、それを決め切れるように。そして、どんなに危ないピンチの場面でも、自分が守ってチームを救えるように」

佐藤海宏自身は2025シーズンから、徳田誉、松本遥翔とともに正式にトップチームの一員になる。スクール、ジュニア、ジュニアユース、そしてユースで培ってきた経験を、次はプロの世界で生かす。

「自分は鹿嶋市出身で、サッカーを始めたときからこのクラブが目標でした。アントラーズのアカデミーにはスクールから入って、カシマスタジアムにトップチームの試合を見に行って、2018年のACL(AFCチャンピオンズリーグ)決勝など優勝する場面も見てきました。このユースではキャプテンを務められたからこそ、1年間を通して、いろいろな状況に応じた解決方法だったり、改善策だったりを考え、習得することができました。このクラブに関わる多くの方々にいろいろな経験をさせてもらい、自分はプロになれたと思っています。だから、これからもこのクラブで活躍して、タイトルを獲ったり、さまざまな形で恩返しがしたい。自分がプロになっても、アカデミーの選手たちを応援しているし、彼らにも自分が活躍する姿を早く見せられるように頑張っていきたいです。これからプロになって、また多くの壁が待ち受けていると思いますが、ユースのキャプテンとして培った多くの経験や、身に付けた精神的な強さを生かして、一つひとつ乗り越えていきたいと思っています」

さまざまな人たちへの感謝の思いを胸に、プロフットボーラーとしてのキャリアを歩んでいく。これまで20冠ものタイトルを獲得してきたアントラーズのエンブレムの上に、さらなる星を刻むために――。それが、佐藤海宏にとっての恩返しの形であり、アントラーズに関わるすべての人を笑顔にすることが、唯一無二の目標なのだから。

「特にプレミアリーグEASTの後期だったり、ホームの試合だったりは、普段はトップチームの試合を応援するサポーターも多く駆けつけてくれて、自分たち選手のモチベーションにもなりました。自分たちがきついときに声援を送ってくれたり、いいプレーをしたら拍手してくれたり、本当に多くの方々に応援してもらえて、自分自身もプレーしていて楽しかったし、幸せでした。温かいご声援をいただき、ありがとうございました。これからもトップチームやユースに限らず、ジュニアユースやジュニア、スクールも含め、アントラーズのエンブレムを胸に刻んで頑張っているアカデミーの選手たちを応援してくれたらうれしいです。これからもよろしくお願いします」

アントラーズというクラブと、そのスピリットを受け継ぐキャプテン・佐藤海宏の栄光へのストーリーは、この先の未来へと続いていく。

アカデミーで培った経験と感謝の思いを胸に、2025シーズンはトップチームでプレーする