ACADEMY FREAKS Vol.6

個を育てながら勝つ

2024シーズン・アカデミークライマックス

鈴木修人アカデミーマネージャー

昨冬はユースが「高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2024プレーオフ」を勝ち抜いてプレミアリーグ昇格を決め、鹿島JYが「高円宮杯JFA第35回全日本U-15サッカー選手権大会」で優勝した。この冬も各世代で“日本一”を懸けた戦いが繰り広げられる。鈴木修人アカデミーマネージャーが2024シーズンの各チームの戦いぶりを振り返るとともに、全国の舞台に挑むチームへの期待と、これからのアントラーズアカデミーを展望する。

 

ジュニア つくばJ
JFA第48回全日本U-12サッカー選手権大会 12/26(木)~29(日):鹿児島県

ジュニア世代こそ“個の力”が大事

11月17日(日)、県立カシマサッカースタジアムに近接する鹿嶋市卜伝の郷運動公園で「JFA第48回全日本U-12サッカー選手権大会」への切符を懸けた熱戦が繰り広げられた。茨城県大会の準決勝でつくばジュニアとノルテジュニアが相対し、結果は1-0でつくばジュニアが勝利。続く決勝でも、3回戦で鹿島ジュニアを1-2で破って勝ち上がってきたFC COLORZ(つくば市)を1-0で撃破し、全国への切符を手中に収めた。

「つくばジュニアは夏のチビリンピックで全国3位となり、そのときよりもさらにレベルが上がっている印象を受けました。特にエースストライカーの宗方颯人とGK菅龍也にはかなりの将来性があり、全国大会でも注目されることでしょう。彼らを中心に、チームに一体感が生まれていたことも、僕としてはうれしいことでした。那須川将大監督の熱量も選手たちに伝わったと思いますし、県大会優勝に値するチームでした」

通称“全少”と呼ばれる、小学生年代日本一を決める大会には、アントラーズ勢として2年ぶりの出場となる。昨年は3チームとも県大会決勝を前に敗退していたため、つくばジュニアだけでなく、鹿島ジュニアとノルテジュニアも並々ならぬ思いでこの大会に臨んでいた。

「鹿島ジュニアはケガ人が出てしまったりして、うまくいかない時期もありました。今大会では、結果的に準優勝するチームに敗れてしまいましたが、全力を尽くして戦ったと思います。今後はもっと下の世代から、優秀な“個”をどんどん育てていかなければいけないと考えています。一方、ノルテジュニアはこれまでの公式戦でつくばジュニアに勝つこともありました。小笠原賢二監督のもとでスピード感のある戦いを見せて、選手一人ひとりがとても成長していると感じていましたが、今大会ではつくばジュニアに“個の力”で上回られたことが結果につながったように思います。改めてジュニア世代こそ、より“個の力”が大事だと再認識しました」

つくばジュニアは鹿島ジュニア、ノルテジュニア、そして茨城県内の小学生年代の全チームを代表して、12月26日から鹿児島県での戦いに挑む。

「試合内容と結果を大事にしたいので、つくばジュニアにはいい戦いを見せてもらいたいし、選手がフットボールを楽しみながら優勝を目指してほしいです。彼らが最終日に“いい景色”を見られるように頑張ってほしいと思います」

県大会を勝ち抜き、JFA第48回全日本U-12サッカー選手権大会出場を決めたつくばJ。アントラーズ勢として、山田大樹選手を擁した2013年の鹿島J以来2度目の日本一を狙う

 

ジュニアユース 鹿島JY
高円宮杯JFA第36回全日本U-15サッカー選手権大会 12/14(土)~27(金):大阪府・東京都・他

夏を経て“大人”へと成長

輝かしい栄光のフィナーレから1年後、鹿島JYが再び「高円宮杯JFA第36回全日本U-15サッカー選手権大会」に挑む。キャプテンのMF小笠原央をはじめ、DF倉橋幸暉、MF岩土そら、FW滝澤周生、FW髙木瑛人の5人は前回大会決勝の大宮JY戦でもスターティングメンバーに名を連ねた。最上級生になった今年、関東リーグ1部で上位の成績を収めて本大会へのシード権を獲得。史上4チーム目となる大会連覇を狙う。

「彼らの個の能力と、フットボールの質の高さはもう皆さんもわかっていることでしょう。ただ、夏まではチームとしてチグハグな面も散見しました。何かがちょっとうまくいかなくなったら、チームとしてもうまくいかない方向に行ってしまう。それが夏以降にみんなも大人になり、この鹿島JYでの最後の大会となる高円宮杯で“連覇するぞ”という意識が高まってきています。優勝した昨年のチームよりも、さらにアグレッシブに得点を取れる攻撃的なサッカーを見せて、連覇を達成してもらいたいです」

鈴木アカデミーマネージャーが指摘するように、夏の「第39回日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会」ではベスト16に終わるなど、その実力を発揮し切れずに悔し涙を流す試合もあった。それから選手たちを“大人”に成長させたのは、ブラジルでの経験だ。

「夏にブラジルへ遠征し、今の生活環境が決して当たり前ではないことを実感したり、現地で生活するブラジル人のフットボールに向き合う姿勢を目の当たりにしました。鹿島JYの小笠原、倉橋、岩土、滝澤、髙木、つくばJYのGK大下幸誠は年代別日本代表にも選ばれて、フランスやクロアチアなどいろいろな国で戦う経験も積み、人としてもっと成長しなければいけないことも体感できたことでしょう。鹿島JYの3年生も今は非常によくコミュニケーションが取れていますし、そういった経験値がいい方向に働いていると思います」

夏以降に、心身ともにたくましくなったのは鹿島JYの3年生ばかりではない。ノルテJYとつくばJYの選手たちも飛躍的な成長を遂げた。全国大会への予選となった「高円宮杯JFA全日本U-15サッカー選手権関東大会」では、準決勝でノルテJYがつくばJYに1-2で敗れ、決勝に勝ち上がったつくばJYも浦和JYの前に延長戦の末に0-1で惜敗。ともに本大会出場はかなわなかったが、鈴木アカデミーマネージャーの目にはチームの確かな成長ぶりが映った。

「つくばJYはGK大下を中心に、2025年にユースに昇格するMF熊澤結人ら3年生と下級生がまとまり、すばらしいチームに成長しました。最後は浦和JYに負けてしまいましたが、出せる力をすべて出し尽くしたのではないかと感じています。ノルテJYに関しては、関東リーグ2部の前期で降格圏に沈んでいましたが、鹿嶋での合宿やブラジル遠征を経て、後期はほとんど負けずに中位まで盛り返しました。この半年間でとても伸びてきたチームでしょう。高円宮杯関東大会のつくばJY戦でもすばらしい戦いぶりを見せていました。どちらのチームの3年生も、この悔しい気持ちを忘れずに、次のステージでも活躍してほしいです」

鹿島JYは12月14日に大阪府での高円宮杯初陣へ。そして、ノルテJY、つくばJYも含めた3チームから選ばれた精鋭たちは、2025年からユースの一員となる。

「来年は鹿島JY、ノルテJY、つくばJYの選手たちだけがユースに加わります。今年の1年生でいうとFC多摩(東京都)出身の吉田湊海のように、中学時代にアントラーズアカデミーではないチームに所属していた選手が、新たにユースに入ることはありません。それはつまり、アントラーズアカデミーで素晴らしい選手たちが育っている証でもあるので、2025年度のユース昇格選手にも大いに期待していただきたいです」

鹿島JYは「高円宮杯JFA第36回全日本U-15サッカー選手権大会」に向けてトレーニングを積む。惜しくも関東大会で敗退したノルテJYとつくばJYの3年生も新たなステージへ進む

 

ユース 鹿島ユース
高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2025関東2部参入戦 12/14(土)~18(水):千葉県

もう一つ上のステージへ

高円宮杯プレミアリーグEASTに復帰して1年目のシーズンは、終盤戦まで上位争いを繰り広げた。結果的に優勝には届かず、2位でシーズンを終えることになったが、高校3年生のFW徳田誉とDF松本遥翔がトップチームに帯同するなか、キャプテンのDF佐藤海宏を中心に堂々とした戦いぶりを見せ、選手層の厚さを印象付けた。

「まず、柳沢敦監督をはじめとするコーチングスタッフ陣の顔ぶれが素晴らしいので、間違いなくいい方向に選手たちを導くことはわかっていました。でも、ここまでの成績を残してくれたのは予想以上です。“トップチームの主役を輩出する”というアントラーズアカデミーのテーマに沿って“個で試合を決められる選手、チームにタイトルをもたらすことができる選手を育成しよう”としきりに言い続け、みんなでそれを実行してきました。それが実を結び、とても素晴らしい選手が育ってきています」

アカデミーの“集大成”ともいえるユースの成果について、鈴木アカデミーマネージャーはそのように絶賛する。ただし、その理由は高円宮杯プレミアリーグEAST復帰1年目に2位の結果を残したからだけではない。この1年間での選手個々の成長ぶりにも満足げな表情を浮かべる。

「個を育てながら勝てていることに、非常に満足感があります。もちろん、僕たちはアントラーズなので日本一にならなければいけません。そのために、この年代でいい選手を育てれば、徳田選手と松本選手のようにトップチームにも呼ばれます。年代別日本代表に招集される選手も出てくるでしょう。そうなると、しっかりと毎試合メンバーをそろえて臨むことが難しくなります。それを今年、プレミアリーグを戦ってすごく感じました。だからこそ、下からの底上げが大事だったし、いい選手をたくさん抱えるだけではなくて、しっかりと競争させることができた自負もあります。例えば、後期のFC東京戦では最終ラインの佐藤海宏選手と大川佑梧選手が年代別日本代表に招集されて不在だった上、FW吉田湊海選手がケガで離脱するなど、それまでのベストメンバーで戦うことはできませんでした。それでも3年生のDF土橋竜之介選手と1年生のDF元砂晏翔仁ウデンバ選手が攻守において活躍しました。個人的に、チームとしてすごく成長できているのではないかと感じた試合でした」

チームの底上げの一役を担った下級生の活躍ぶりも見逃せない。2年生のDF大川やMF中川天蒼、FW長疾風は主力としてチームを引っ張り、1年生のDF元砂 晏翔仁 ウデンバ、MF大貫琉偉、MF平島大悟、MF福岡勇和、FW吉田といった面々も、し烈な競争を制して先発出場のチャンスを得ている。そんな下級生の活躍を支えているのがGK岸野瑛太、DF佐藤海宏、DF玉木亜門、MF小笠原聖真ら3年生の存在であることを鈴木アカデミーマネージャーは強調する。

「ベンチ入りも含めて主力メンバーの半数以上が1、2年生です。ただし、彼らがのびのびとプレーできるのは、しっかりと3年生が力をつけてきたからでもあります。僕が大学で指導していたときに、最高学年の4年生の意識がより高まったことで、グッと伸びる選手が出てきたことがありました。ユースでも、毎年3年生の成長がキーポイントになることは、コーチングスタッフたちも、僕自身も分かっています。トップチームでも、かつて小笠原満男さんの横で柴崎岳選手が育ったように、チームを支えるベテランがいることで、若手選手がのびのびとプレーできることは、皆さんもご存知でしょう。そうしてアントラーズはタイトルを獲ってきました。今年の夏以降、この1、2年生と3年生がしっかりと戦える土台を作ったところに中学3年生も力になってくれました。GK岸野を含めて3年生が後ろでしっかりサポートしていたのが、この順位で終われた一番の要因と考えています。1、2年生が活躍しているけれど、3年生の頑張りはすごく助けになっていたと思うので、そういうところもコーチングスタッフのみんながうまくマネジメントできていました」

高円宮杯プレミアリーグEASTで戦うAチームばかりでなく、茨城県のIFAリーグ1部でしのぎを削るBチームの戦績にも注目すべきだろう。今年、明秀学園日立高校や水戸ユースなど、県内の有力チームが集うリーグ戦で、Bチームは優勝した。12月14日(土)から始まる「高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2024関東 プリンスリーグ関東2部参入戦」の初戦となる聖望学園(埼玉県)を破り、16日(月)の代表決定戦にも勝利すれば、2025年度はプリンスリーグ関東2部で戦うことになる。Bチームももう一段階上のレベルで戦うチャンスが待ち受けているといえるだろう。

「Bチームは主に小笠原満男テクニカルアドバイザーが指揮を執っています。その週の練習で頑張った選手をしっかり観察して、試合に起用している印象もあり、しっかりと練習に向き合うメンタリティーのある選手をここで活躍させて、Aチームに送り込んでいる形です。すごく個が育つ取り組み方だと思いますし、ここで実力が伸びてきた選手が活躍することにより、IFAリーグでも、プレミアリーグでも勝ってきました。結果的にIFAリーグでは優勝することができ、12月14日からはプリンスリーグ関東2部参入戦を戦います。個に特化した戦い方で勝ち、また来年に選手たちをタフに鍛えるためにも、もう一つ上のステージに行けるように頑張ってほしいです」

鹿島、ノルテ、つくばの茨城県内3拠点で活動するジュニア、ジュニアユース、そして、そこから選ばれし選手が集うユース。選手個々の成長のために、すべてのチームがより高いレベルで切磋琢磨するのが、アントラーズアカデミーだ。来たる2025年も、茨城県内外から集まってきた有望選手たちが、それぞれのチームで激しい競争に挑む。

「アントラーズアカデミーは今、いい状態で進んでいると思っています。ここからトップチームに何人の選手が上がっていって、何人の選手が活躍できるのか。その人数をより多くするために、僕たちコーチングスタッフ陣もますます頑張っていきたいです。来年はアントラーズでサッカーをしたいと、鹿島ジュニアユースに加入してくれる選手たちが全国から集まります。鹿島JYは有望な選手が集まり、他チームで活躍している選手に選んでもらえる育成組織になりました。これからスクールやジュニアで育った選手と、他チームからスカウトした入った選手による競争が、もっともっと熾烈になっていくと思います。ファン・サポーターの皆さんには、今後もアントラーズアカデミーの活動をサポートしてもらえるとありがたいです」

アントラーズのトップチームの主役になることを目指して――。伝統のエンブレムを胸に刻む選手たちは、2024年冬の日本一と、その先につながる選手として成長を目指して、今日もこの地でボールを追いかけていく。

アカデミーの集大成の場となるユースは、トップチームの練習グラウンドの隣ピッチで汗を流す。まずはこの場所を目指し、ジュニア、ジュニアユースの選手たちは競争を続ける