ACADEMY FREAKS Vol.5

日伯友好カップの意義とは。 「この大会をきっかけにU-15ブラジル代表ができた」

INTERVIEW

ジーコCAに聞く
日伯友好カップの意義とは

今年で24回目を迎える日伯友好カップは、今やU-15世代におけるブラジル国内で一番最初の一番大きな大会となっている。アントラーズからも毎回ジュニアユース3チームが参加。本大会を創設したジーコCAはどのように本大会を振り返るのか。遠く離れたブラジルの大会に参加する子どもたちへの影響、また最近の選手の特徴など、「いつもに増して強豪がそろった」とスタッフも納得の第24回大会を振り返る

日伯友好カップ誕生の経緯とは

日伯友好カップは、今年で24回目を迎えました。どのような経緯で開催されたのですか?

「我々はこの大会を開催する前から、ジーコサッカーセンターで1週間から10日間のサッカースクールを開催して日本の少年たちを受け入れていました。その際に、ブラジルの学校の生徒たちのチームと試合をしていました。クラブチームと日本人では実力差が大きく、対戦するわけにはいかなかったからです。当時は日本とブラジルのサッカー交流を推進して、少年たちが基礎技術を磨く練習を午前午後で実施したり、より練習できる環境作りの活動をしていました。

そのなかで、当時のアントラーズのスタッフで、その後、育成部長になった高島雄大(現アスルクラロ沼津代表取締役社長)と話をしていたときに、彼が提案してきたんです。

『これまでは、スクール参加の申し込みをした少年たちのなかから選抜して、ブラジル・リオデジャネイロに連れて来ていた。次はクラブチームを連れて来れば大会ができるのではないか』

私は弁護士であるアントニオ・シモンエスを交えて3人で話し合い、大会開催の結論に至りました。U-15の大会は当時ブラジルでもなかったので、非常に興味深いものでした。日本の少年たちにとってはもちろん、CFZジーコサッカーセンターやブラジルのU-15年代にとって、非常に意義あるものになりました。本大会が生まれたことで、ブラジル代表のU-15カテゴリーができたほど。そのきっかけを作れたことはとても幸せに思っています。

この大会をきっかけに日本からさまざまなチームがブラジルのリオまで来てくれました。アントラーズのアカデミーチーム以外にも、ジェフ千葉、東京ヴェルディ、市川トレセン、年代別日本代表、Jリーグ選抜。リオデジャネイロ州サッカー連盟とも話をして、公式の年間カレンダーに入れることもできました。ブラジル国内のすべてのチームが、U-15年代の大会を作るというアイデアを良い形で受け入れてくれたのです。

こうして大会は成長を続けて、テレビ中継されたり、今ではFacebookやYouTubeを通して、世界中で試合を見ることができるようになりました。さらに、この大会からブラジル代表や日本代表に選ばれるような、多くの素晴らしい選手たちが生まれています」

大会決勝の解説を務めるジーコCAとゼ・マリオ(アントラーズ元監督)

 

長きにわたり大会を運営していくなか、苦労したことはどんなことでしたか?

「最大の困難は、スポンサーの獲得ですね。大会開催にはリオデジャネイロ以外の州から来てくれるチームの遠征費や、トロフィー代、食費、警備費、救急車の費用など、非常にお金がかかるものです。ただ、ありがたいのは参加クラブ、特にリオのクラブは報酬を受け取らずに参加してくれています。他の大会では参加報酬が出ることもあるのに。これはU-15のカテゴリーにとって、日伯友好カップが大事な大会である証拠でもあります。

ジーコサッカーセンターとしては、大会を運営する上で利益を得ようとは思っていません。それを大前提としてやっています。なので、スポンサーの皆さんたちから我々が受け取るすべてのお金は、あらゆる大会経費を支払うためのものなのです」

日本からの大会参加は、長時間の移動など大変なこともあります。それでも参加を続けていく意義はどこにありますか?

「重要なのは、真剣勝負を通したサッカー文化の国際交流です。より強い相手との対戦を知ること。そのためにやるべき、より良い準備を知ること。そして、自らのレベルを上げること。この大会には、プロチームとしても、下部組織としても、ブラジルで最高峰のチームが集っているのですから。

ブラジルでは今、全国選手権がU-20とU-17であります。まもなくU-15も開催されることは間違いないでしょう。ただ、現時点で開催されているU-15の選手権は主に地域リーグなので、他の州のチームと対戦する機会がありません。この大会によって選手育成だけでなく、ブラジル国内の別の州同士のチームとの対戦が初めて生まれたのです」

この大会が始まったとき、ブラジルではどう受け止められましたか?

「大きな意義あるものとして受け止められました。それはブラジルにU-15の年代別代表カテゴリーが新たにできたことに表れているでしょう。これまでなかったものが、この大会をきっかけにできたのですから、大きな影響があったと言えます。当時、CFZリオの監督を務めていたアンドラージが、U-15ブラジル代表の最初の監督を務めました。その後も、年代別ブラジル代表の総合コーディネーターであるブランコが大会を見に来ているし、CBFブラジルサッカー連盟のテクニカルオブザーバーであるエジガー・ペレイラも来ています。昨年はU-15ブラジル代表監督のドゥドゥ・パテトゥッチが毎日試合を観に来ていて、中継では解説を務めて表彰式ではトロフィー授与の役を引き受けてくれました。すごく良いことですよね。

そして、この大会に出場した多くの選手たちから、代表選手が出ています。一部の例を挙げましょう。ブラジルでは、アリソン(リヴァプール)。ヴィニシウス・ジュニオール、ホドリゴ(2選手ともレアル・マドリード)。ルーカス・パケター(ウェストハム)、フィリッピ・コウチーニョ(元リバプール、現ヴァスコ・ダ・ガマ)、ウイリアン(元チェルシー、現オリンピアコス)、マルキーニョス(PSG)、マルセロ(元レアル・マドリード、現フルミネンセ)、ヘナト・アウグスト(元バイヤーレバークーゼン、現フルミネンセ)……。彼らはみんな、W杯でもプレーしました。

日本代表もそう。ガンバ大阪の宇佐美貴史はバイエルン・ミュンヘンでもプレーした。セレッソ大阪だった柿谷曜一朗、東京ヴェルディにいた森本貴幸、セレッソ大阪にいた山口蛍、浦和レッズにいた酒井宏樹、権田修一は日本代表GK。ヴィッセル神戸の井手口陽介。みんな日伯友好カップでプレーした選手たちです。

それから、鈴木優磨、土居聖真、町田浩樹、上田綺世をはじめ、多くのアントラーズのアカデミー出身選手がプレーしました。もっとたくさんいますが、この大会の重要性を知る上でパッと名前を挙げただけでこれだけの選手がいるのです。

そして、期間は1週間とはいえ、ブラジル国内で2番目に大きい大会です。このカテゴリーでは、現在ナイキカップが最大で、その次が日伯友好カップ。だから、ブラジルでは毎年『今年も開催されるのか?』とみんなが聞いてくる(笑)。我々はそれをとても幸せなことだと思っています」

 

昨年、レアル・マドリードのロドリゴが、日伯友好カップについて「U-17やプロに上がれるかどうか、ヨーロッパでプレーする機会を得られるようになるかどうか、その分岐点になる大会だ」と話していました。選手自身が大会参加の重要性を理解しています。先日のコパ・アメリカ大会中には、ジーコCAも日伯友好カップに出場したブラジル代表選手たちと再会し、話をしていましたね。

「選手たちがこの大会中に“見てもらえる”“分析されている”ことを知っているのは、とても重要なことですよね。今年もこの大会でプレーする選手のなかに、U-15ブラジル代表に招集されている選手たちがいます。視察のために年代別ブラジル代表を統括するブランコとエジガーがここに来るのも何も不思議なことではありません。

クラブも選手たちも日伯友好カップの重要性を理解しています。だから、大会参加してくれるクラブは、みんな最大の親しみを持って対応してくれています。我々はその協力にも大きな感謝をしています。

場合によっては、U-14のチームを参加させることで将来への投資として参加するクラブもあります。というのも、この期間にU-15が州選手権を戦っていることもあって、下の年代の高いレベルの試合経験は、大きな経験になるでしょう。一つ言いたいのは、私の時代にはそういう大会はなかったということです(笑)」

(笑)。今年は、アントラーズOBである小笠原満男、曽ケ端準、羽田憲司の息子たちが参加しています。父親たちも、その重要性を理解して送り込んでいるのですね。

「はい、特に小笠原はブラジルに来て、この大会を知っていますからね。そうやって引き継がれていくのは、すごく良いことですよね。彼の息子は非常に良いプレーをする、非常に良い選手です。曽ケ端は成熟してきているし、羽田も同様です。

アントラーズの歴史で非常に重要だった選手たちの息子を見て、我々はとても幸せに思います。父親たちと私は非常に長く一緒にやってきました。アントラーズだけでなく、日本代表でも私のチームでプレーしました。その息子たちをここに迎えるのは、本当に嬉しいことです。

今後、父親である彼らもブラジルへ来てくれるといいなと思っています。この大会を見るために、もしくは、どういう目的でも。なぜなら、ブラジル人は日本人が大好きですからね」

サポーターにとって、育成年代の大会を見る上で、将来有望な選手や、今後が楽しみなタレントを発見するのは一つの楽しみでもあります。ここに来て、もしくはYouTubeチャンネルZico10の中継で観戦している人たちが、そういった将来の輝ける才能を発見するためには、どういったところに注目するのが良いですか?

「才能というのは、その選手が試合に継続して出ているなかで効果的なプレーができているか。ある日は非常に良いプレーをしても、その後に消えたというものではありません。試合に継続して出場して、そこで常に一定のレベルでプレーできなければならない。そこを見るのは冷静に分析するために一つ大事なことかもしれません。

この大会には、多くの元選手や代理人が来て大会を見ていますが、彼らは必ずや良い選手に注目していることでしょう。というのも、今年も日本人だけでなく、ブラジル人にも非常にクオリティの高い選手たちがいましたからね」

それでは最後にアカデミーフリークスの読者へメッセージをお願いします。

「アカデミーフリークスを通して、読者の皆さんに話ができる機会をいただき感謝しています。皆さんもよくご存知の通り、私はいつも次世代の選手たちの手助けになる活動を大事にしています。それは日本だけでなく、ブラジルでも同じ考えです。アントラーズにとって、この大会に参加し続けていることが良い形で活かされているように思います。それは過去の参加選手たちの成長を見れば明らかでしょう。今後も同様に続いていくことを願っています。

今年のアントラーズは、非常に強いチームのグループに入りましたが、グループリーグの3試合すべてでとても良い試合をしました。ボタフォゴに勝利、フラメンゴには負けましたが、引き分けか勝ってもおかしくない試合内容でした。アトレチコ・ミネイロに対しても、多くのゴールチャンスを作り、負けはしましたが非常に良い内容でした。今回の経験を活かして、今後も彼らが成長を続けることによって、数年後にはアントラーズのトップチームで活躍していることを願っています」

表彰式でフラメンゴとコリンチャンスの両キャプテンと記念撮影をするジーコCA