浦和戦のみどころを読む!

「残り3試合、全て勝つぞ」

 勝利の余韻が残るロッカールームで、指揮官が進むべき道のりを明確に照らした。北の大地で掴み取った3ポイントとともに、鋭い眼光は次なる戦いへと向けられる。「ここまで来たら、やり続けてきたことを最後まで貫くだけ。選手たちに伝えたいと思います」。大岩監督はそう言って、記者会見を締めくくった。2017年、残された時間は270分。アントラーズファミリーの思いは一つだ。最高の景色へ、全員で登り詰めてみせる――。

 9日間でのアウェイ3連戦は、険しく苦しいものだった。雨の横浜、痛恨の3失点。トリコロールの歓喜を見届け、底知れぬ悔しさと向き合った。そして4日後、神戸で終焉を迎えた元日決勝への歩み――。ラストプレーで同点に追い付かれ、PK戦で屈辱を味わった。再三のチャンスを生かせず、追加点を奪えなかったこと。ボールを失ったこと、奪い返せずにゴール前まで進出されたこと。時計の針を進める意識が足りなかったこと。全てを悔やんでも、取り戻すことはできない。この2試合、スコアに直結する不可解な判定が立て続けに襲ってきたことも事実だ。だが胸に刻まれたのは、それを凌駕できなかった己の不甲斐なさだった。「どんな外的要因があろうと4試合、しっかりと勝って終わる。プライドに懸けても勝つ」。昌子はそう言い切り、札幌へと飛んだ。

 3万に迫る観衆が駆け付けた一戦。北海道の雄は難敵だった。全天候型のドームで、ホームチームはアドバンテージを存分に生かしてポイントを積み重ねてきた。ボールが走らず、バウンドがイレギュラーに変化するピッチ。高くそびえる黒いフェンスと赤黒のユニフォームが刹那、視界の中で同化することもしばしばあったと遠藤は言う。アントラーズは苦しんだ。「相手が前半からタイトでアグレッシブな試合をしてきて、少し受け身になってしまった部分はあった」と、大岩監督は反省の弁を述べている。秩序を取り戻してゴールへ迫っても、長い手足で立ちはだかる守護神ク ソンユンにビッグセーブを繰り返されてしまった。

 60分に喫した、痛恨の失点。それはまるで“事故のような”と形容したくなるほどに、唐突で鮮やかな一撃だった。苦しみながらも三竿健斗がプロキャリア初のスコアを記録し、進化の証を刻み込んでいたからこそ、その同点劇がアントラーズに重くのしかかる。札幌は勢いに乗った。ボルテージを高めるサポーターとともに、アウェイチームを飲み込もうと攻勢をかけてきた。

 また、なのか――。暗幕に閉ざされた横浜と神戸の夜を想起した時、負の連鎖とも言える文脈を振り返った時、札幌での残り30分は本当に重要な時間だった。踏みとどまるだけでは足りない。再び這い上がってスコアを刻まなければならない。勝ち切らなければならない。北の大地で、アントラーズが真価を問われることとなった。

 「勝ちに行こうと、気合いを入れて試合に臨んでいた」。アントラーズを力強く前進させたのは、誰よりも戦い、走り続けたエースだった。70分、金崎夢生。試合開始直後から土居とともに幾度となく繰り返してきたスプリントが結実する。山本からのスルーパスが出た瞬間、ビクトリーホワイトの背番号33が赤黒の守備網を置き去りにした。副審の旗は上がらない。ついに突破した。エースは狙いを定め、つま先で針の穴へとボールを通す。2-1。そして残り20分、やるべきことは全員が理解していた。「試合巧者という形で、ゲームをまとめられてしまった」とは敵将の弁。ホイッスルが鳴り響き、ビジタースタンドが沸騰する。唯一絶対の目標、勝ち点3を手中に収めた瞬間だった。

 不退転の決意でピッチに立った背番号3は、任務を遂行して胸を張った。「チーム一丸で戦えた。追い込まれた時に、それを証明できた」。そして続けた。「他の結果は関係ない。あと3試合、勝ちに行く」と。ミックスゾーンで異口同音に繰り返された言葉は、チームのベクトルが一点を向いていることの証左だった。

   
 さあ、リーグ戦は残り3試合だ。リーグレコードはシーズン23勝、勝ち点74。アントラーズは現時点で22勝、67ポイント。こう記されただけで、その事実を知っただけで、沸々と湧き上がる闘志があるはずだ。次の史上初を見つけるために、その道のりを突き進むために――。11月5日、浦和レッズと激突する第32節。4試合ぶりに帰還する聖地で、勝利だけを求めて戦う90分が始まる。

 国内無冠が確定した浦和はしかし、ACL決勝進出という形で底力を示した。来年もアジアの舞台で戦うためには、わずかに残る3位フィニッシュの可能性を手繰り寄せなければならない。強い決意とともにカシマスタジアムへ乗り込んでくるだろう。シーズン終盤、目的は違えど、誰もが勝利を渇望してピッチに立つのだから。

 だが、アントラーズレッドの情熱は何者をも凌駕する。北の大地に大挙して駆け付けた背番号12が歌い上げた誇りと決意が再出発の原動力となったことは言うまでもない。苦しんでも、屈辱にまみれても、それでもともに這い上がり、ともに戦い続けるファミリー全員で、真っすぐに突き進むだけだ。目前の戦いに全てを注ぎ込み、3ポイントを掴み取りに行くだけだ。今日もともに戦おう。カシマスタジアムで、ともに勝利を掴み取ろう。
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