仙台戦の注目プレーヤーは、三竿健斗!

「個人的に攻守両面において高く評価している。やってほしいことを彼なりに解釈して表現できて、相手によって対応を変えていける。そういう能力を持っていると思う」

 指揮官はそう言って、大いなる期待を隠そうとはしない。6月4日の広島戦から7月29日の甲府戦まで、リーグ戦7試合連続でフル出場。アウェイでの過酷な道のりを走り抜いた日々では、センターバックとして奮闘した。そして今、本職のボランチに帰還してさらなる進化を期す――。三竿健斗、21歳。鹿嶋で迎える2度目の夏、背番号20は飛躍の時を迎えている。

「アントラーズは全てのタイトル獲得が義務付けられているクラブだと思いますので、早くその力になれるよう、強い覚悟をもってプレーします。日本のトップレベルの選手たちから多くのものを学び、1日でも早く脅かせるような選手になれるよう頑張っていきます」

 生まれ育った東京Vに別れを告げ、鹿のエンブレムを胸に纏う決断をしたのは昨年1月のこと。ルーキーイヤーのJ2で39試合出場と、充実のシーズンを終えた19歳の若武者が不退転の決意で新天地を求めた。緑のユニフォームを纏い続けていれば、中心選手としての未来は約束されていたことだろう。それでも健斗は、国内屈指の選手層を誇るアントラーズでの挑戦を決めた。小笠原と柴崎が君臨し、自らとともに永木も加わったミドルゾーンで、激しき切磋琢磨の日々に身を投じる――。やはりと言うべきか、その道のりは非常に険しいものだった。

 2016年、健斗はJ1で4試合の途中出場を記録するにとどまった。刻んだプレータイムはわずか30分。ともに加入した永木が時間の経過とともに信頼を勝ち取り、ピッチで躍動する姿とは対照的だった。ルーキーイヤーの充実ぶりを思えば、アントラーズでの1年目は“停滞”と表現されても仕方がないものだっただろう。

 だが、健斗は牙を研ぎ続けていた。明るいキャラクターで即座にチームに溶け込んだことは周知の事実だが、全ての経験を前向きに受け止めて成長の糧にする若武者は、着実に歩みを進めていた。11月12日、暗闇に迷い込んでいたアントラーズが光を見出した天皇杯4回戦。のちに訪れる栄光の日々、その出発点として記憶される勝利の立役者となったのが健斗だ。先発出場を果たすと、気迫に満ちたタックルを連発してチームを鼓舞。「自分が戦わないと、試合に出してもらった意味がないので。練習でやっていることを出せました」と、成長の跡を示してみせた。暗闇を脱したチームとともに、力強い一歩を踏み出すことができた。

「試合が一番、課題と自分の状態がわかりますから。使ってもらえるのはありがたいことだと思います」

 そして迎えた、加入2年目。今からおよそ半年前、健斗はバンコクの地で実戦経験の大切さを噛み締めていた。中1日ペースでプレシーズンマッチを繰り返したチームにあって、背番号20は全5試合に出場。当然ながら、コンディションを上げていく時期に試合を行う難しさはあった。それでも「出場するからには“しょうがない”と言って済ませてはいけないんです」と悲壮な決意を語り、ボールを追い続けた。特に宮崎での3試合では、出色のパフォーマンスを披露。柴崎が去り、レオ シルバが加わったボランチ陣の過酷な競争を勝ち抜くという強い思いが、痛いほどに伝わってきた。「今年はスタメンを狙えるんじゃないか――」。そんな声が、報道陣からも聞こえてきた。

 ただ、道のりは変わらず険しいままだった。先発どころか、J1開幕3試合はベンチにも入れず。4月8日の第6節・C大阪戦で待望のチャンスが巡ってきたが、「“これでダメだったら次はない”という思いです。絶対にモノにしたいです」という決意は、聖地のピッチで空転してしまった。0-1。冷たい雨に打たれながら、健斗は痛恨の思いを抱えて戦いの舞台を後にした。その後2か月、リーグ戦で再び先発の機会が巡ってくることはなかった。

 今年もまた、低空飛行が続くのか――。5月末時点で、J1での出場は5試合のみ。C大阪戦を除いた4試合でのプレータイムは、わずか14分間だった。1年目を想起させる、不甲斐なき出場記録。だが、21歳となった若武者に大いなる転換点が訪れる。5月31日、大岩監督の就任――。コーチとして控えメンバーの一挙手一投足を注視してきた新指揮官は、背番号20を先発に抜擢した。6月4日、新体制の初陣となった広島戦。健斗はボランチの一角として勝利に貢献してみせる。苦しみながら積み重ねた努力の末に、ついにチャンスを生かすことができた。この日から、リーグ戦ではフルタイム出場を記録しているのは健斗の他に昌子だけ。大岩監督の大いなる期待を背負い、背番号20は躍動を続けている。

「一試合一試合が競争ですから、レギュラーに定着したとは思っていません。ただ、試合を重ねるごとに課題がわかるし、自信を掴むことができています」

 まるでスポンジのように、全ての経験を吸収して大きく逞しくなっていく。世界との差を痛感したセビージャFC戦を経て、「パススピードを意識しているので、試合でも少しずつ出していきたいです」と意気込んだ甲府戦では、金崎の先制弾につながる正確な縦パスを通してみせた。「攻撃のスイッチを入れられて、得点の起点になれたのは嬉しかったです」と本人も頷いた、会心のプレー。一歩ずつ、着実に――。健斗の進化が止まることはない。

   
 「自分が試合に出られるようになって負けていないことは自信になるし、もっともっと勝って上に行きたいです」。移籍という不退転の決断から1年半、ついに迎えた飛躍の時。積み重ねてきた日々への思い、そして今確かに宿る「自信」を全身で表現した先に、さらなる高みが待っているはずだ。三竿健斗、21歳。アントラーズの背番号20は今夜も、聖地のピッチで輝きを放つ。勝利という任務を遂行するために、全力で走り続ける。

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