セビージャ戦の注目プレーヤーは、昌子源!

「“信頼に応えたい”という気持ちでプレーしていた」

 常に進化を追い求めるチームリーダーも、この時ばかりは幾ばくかの安堵感をにじませていた。会心のゴールラッシュで大勝した、山形の夜。「さすがに疲れたけど…。“やらなければいけないのは勝つことだ”という意識をピッチで出せたと思う」。11日間で4連戦を駆け抜けたアントラーズにあって、昌子源はアウェイでの360分間、その全ての瞬間をピッチの上で戦った。独特の蒸し暑さに苦しめられた山形戦では「特に前半はしんどかった」と言うように、らしくないミスから決定機を招いたことも事実だ。それでも「良い形で守っていても、事故のようなピンチもあるから」と事もなげに言い切った守護神のビッグセーブに救われ、背番号3は責任をしっかりと果たしてみせた。5-0。クリーンシートを達成し、つかの間の充電期間へ突入した。

 28試合、2520分――。サマーブレイクへ突入するまでに、昌子が刻んだプレータイムだ。不在だったのは、天皇杯2回戦の90分のみ。充実の戦力補強、かつてない水準での切磋琢磨が繰り返される日々の中、昌子は不動の地位を築き上げ、アントラーズに不可欠な存在としてフル稼働を続けている。植田、町田、ブエノ、三竿健斗とセンターバックコンビを組み、類まれなる統率力で相棒を牽引。ボランチや両サイドバック、さらにGKまで頻繁に入れ替わる今季、昌子は安定感抜群のプレーとリーダーシップで最終ラインに君臨し続けている。

「アントラーズに加入して、剛さんにたくさんのことを教えてもらって日本代表にまでなれた。もちろん、まだまだ学ぶこともある。家族に匹敵するレベルの人だと思っているし、恩返しをしないといけない。10倍くらいにして返さないといけない。『お前がここまで成長したか』と言われるくらいの選手になりたい」

 満身創痍の身体を突き動かし、ピッチに立ち続ける背番号3。その原動力の一つが、指揮官との揺るぎなき絆だ。2011年元日、栄光の記憶とともにスパイクを脱いだ大岩監督。そして、2011シーズンからアントラーズでの歩みを始めた昌子。プロフットボーラーとしての時間が交差することはなかったが、ともに駆け出しのコーチと選手として、グラウンドで日々、汗を流してきた。そして今、指揮官とチームリーダーとして、勝利を追求し続けている。

「『うちのキャプテンは満男』とはっきり言われた。でも、広島戦では満男さんがスタメンじゃなかったからね。『俺との絆でキャプテンをさせるんじゃなくて、コーチ陣も含めた総意で決まったこと』と。『チームをまとめてくれ』と言われた。コーチ陣の総意と言われたのがすごく嬉しかった」

 6月4日、新体制での初陣。昌子は信頼を腕章という形で託され、勝利で思いに応えてみせた。「絆でキャプテンをさせるんじゃない」――。厚い信頼があってこその言葉に、背番号3は奮い立った。灼熱の広島で、チームリーダーとしての自負を一段と強くしたはずだ。

 思えばわずか5日前、聖地が言葉を失ったあの夜。昌子はACL敗退という現実と向き合い、責任を全て背負い込むかのように悔恨の思いを紡いでいた。「石井さんを優勝監督にしたかった」と唇を噛み、「何気ない声一つで解決できる失点だった。あの失点で、みんなの夢だったアジアが終わったと思うと、悔しいし申し訳ない」。静かに、絞り出していた。

 中心選手としての自覚、指揮官交代への思い――。2年前もそうだった。自らの能力と才能を見出し、飛躍へと導いてくれたセレーゾ監督がクラブを去った時もそうだった。2015年7月25日、FC東京戦。「意地でも勝ちたい。とにかく勝たないといけない」。シンプルな言葉に決意を込めてピッチへと足を踏み入れた昌子は、新体制での初戦でヘディングシュートを突き刺した。「全員の気持ちが乗り移ったゴール」。チームに勇気と勝利をもたらす一撃で、再出発への意志を示してみせた。

「歴史を振り返ると、アントラーズは圧倒的なものを持っている。しっかりと勝って終わることができるようにしたい。こういう機会じゃないと考えないことかもしれない。優勝が懸かった試合になって改めて感じるし、いま一番強く感じている。幸せ者やなって。そういう思いを背負った試合にしたい」

 周囲への感謝が溢れ出て止まらなかった、チャンピオンシップ決勝前日。背番号3という伝統の継承者として重圧と向き合い、そして魂の90分を演じてみせた。時にもがきながら、苦しみながら。そして、日々増していく責任を力強く受け止めながら――。昌子は終わりなき進化の日々を一歩ずつ突き進んでいる。2016シーズン、元日決勝を戦い終えると、刻んだプレータイムは4099分に達していた。

 そして今季、3番を纏って早や3年目。いや、まだ3年目という表現のほうがふさわしいかもしれない。“3番”を輝かせ続けるその背中はもはや、アントラーズファミリーの信頼と同義だ。幾多もの思いを背負い、“共闘”の二文字を胸に、昌子はピッチに立つ。

 さあ、戦いの日々が再び始まる。フル稼働のシーズン前半戦を経て、昌子がピッチへと帰還する。今夜の相手は、ラ・リーガの強豪・セビージャFC。この難敵を聖地で打ち破るためには、俺たちの背番号3が強力アタッカー陣とのバトルを制し続けることが絶対条件となるだろう。昨年末、各大陸王者との対峙を繰り返し、時間を追うごとに逞しく進化を遂げる姿を見て、アントラーズファミリーは誇りを宿すことができた。世界に名だたるストライカーを封じ込めるたびに、まだ見ぬ景色へと連れていってくれるような、そんな感覚すら抱くことができた。だからこそ思う。だからこそ、揺るぎなき信頼とともに希望を託す。さらなる輝きを今夜、カシマで――。アントラーズの背番号3が、アンダルシアの雄に立ちはだかる。その先に必ず、歓喜の瞬間が待っているはずだ。

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