鳥栖戦の注目プレーヤーは、山本脩斗!

「勝ち点1ではダメ。絶対に3ポイントが必要な試合」

 珍しく、と言うべきか。常に冷静で、堅実に任務を遂行し続ける仕事人が、強い言葉を使って勝利への渇望を示していた。アウェイで迎えた大一番、蔚山現代FC戦。グループステージのために是が非でも勝たなければならない一戦で、山本脩斗はその決意をしっかりと体現してみせた。派手さはなくとも粘り強く、身体を張って攻撃の芽を摘んでいく。セットプレーからヘディングシュートでゴールを脅かし、タッチライン際を疾走し続ける。

 そして52分、金崎が決めた待望のゴール。エースの先制弾につながったのは土居の飛び出しとシュートだが、そこへ正確なパスを供給したのが背番号16だった。ホームチームが見せた一瞬の綻びを逃さず、瞬時の判断で繰り出したラストパス。目立たないプレーかもしれないが、待望のスコアをもたらしたのはこのプロフェッショナルだ。「立ち上がりから試合にしっかり入って、得点が入るまで焦れずにプレーしないといけないですね。まずは無失点で抑えたいです。先制点が大事なので」。試合前の展望、その全てをプレーで示してみせた先に、歓喜の瞬間が待っていた。

「本当に嬉しいし、1年間やってきたことが実を結んだと思います。優勝は何度味わっても良いものですね」

 4か月前、2017年1月1日。誰よりも長く、誰よりも献身的に走り続けた背番号16にとって、吹田での元日決勝は2016シーズンの49試合目だった。並み居るスピードスターとの対峙を繰り返しながら、サイドバックという過酷なポジションでありながら、4265分ものプレータイムを刻んだ山本。フットボールの神様は、その献身と貢献にスポットライトを当てた。42分、ヘディングシュートでの先制ゴール。「最後に脩斗が決めてくれて良かった」――。そんな声がスタッフからも聞こえてきた。過密日程を走り抜いた姿を知っているからこそ、アントラーズファミリーみんながその活躍を喜んだ。

 チームに勇気をもたらす一撃を決め、ハーフタイムに交代を直訴した山本。身体が悲鳴を上げる中、まさに最後の大仕事だった。思いを託されたチームメイトは延長戦を勝ち抜き、19個目の星を獲得。山本の2016年は49試合・4265分の出場で6ゴール、そして2つのタイトルという、キャリアハイの成績で幕を閉じた。

 そして迎えた今季、タイと宮崎で5つのプレシーズンマッチを戦ったアントラーズにあって、山本の姿をピッチで見ることはなかった。元日決勝から得られた充電期間はわずか2週間ほど。激闘の爪痕、足の痛みを癒すにはあまりにも短すぎた。始動から別メニュー調整となった山本は、激化したポジション争いに身を置く仲間たちを横目に、リハビリとトレーニングに打ち込んでいく。チームメイトがホテルで過ごす試合日も、山本はグラウンドで汗を流していた。高温多湿のタイでも、時に厳しい寒さに見舞われた宮崎でも。来たるべき新シーズンの開幕を見据えて、己の身体と向き合っていた。

 始動から1か月。待望の復帰は2月18日、FUJI XEROX SUPER CUPだった。公式戦初戦に間に合わせたという事実こそ、真のプロフェッショナルである証左だ。82分、2点差を追い付かれて迎えた終盤という難しいシチュエーションで、指揮官は背番号16をピッチへ送り出す。すると1分後、優磨の決勝ゴールにつながるロングフィードを供給。相手のミスから生まれた得点とはいえ、勝利に貢献したことは間違いない。山本は「特に慌てる感覚はなかったし、チャンスがあると思っていました」と落ち着き払った様子で振り返っていた。「少しでも試合に出ることができて良かったです」。穏やかな表情からは、充実感と安堵感が滲んでいた。

 アントラーズ4年目、その幕開けに至る道のりは険しいものだった。新たに加わった2人のライバル、三竿雄斗と小田逸稀が個性と可能性を示す一方で、ピッチに立つことすらできなかったプレシーズンの日々。それでも今、定位置に君臨しているのは背番号16だ。リーグ戦では開幕8試合全てで先発メンバーに名を連ね、昌子と植田のセンターバックコンビに次ぐプレータイムを刻んでいる。指揮官からの絶対的な信頼は揺るがない。

「アントラーズで継続して試合に使ってもらって、チームの中で自分の能力や特長を出させてもらえるようになりました。自分の中で、プレーの“引き出し”が増えてきた感覚があるんです」

 そう語っていたのは2015年の秋。その手応えと自信は、2つのタイトルとキャリアハイの成績という形で昨季に結実した。磐田での6年間でリーグ戦のピッチに立ったのは88回、シーズン平均15試合に満たなかった山本。だが、2014年のアントラーズ加入後、3シーズンで刻んだ出場数は101試合を数える。移籍とともに始まった充実の時、栄光のキャリア――。今年6月で32歳を迎えるが、その輝きは増すばかりだ。

「本当に嬉しいし、1年間やってきたことが実を結んだと思います。優勝は何度味わっても良いものですね」。元日決勝で語られた、あの言葉には続きがある。「“また獲りたい”という気持ちになっています」

 勝利のために、次なる栄光を掴むために――。連戦の真っただ中、背番号16は今日もピッチを疾走する。

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