2017 Jリーグ展望

 チャンピオンとしての誇りと、さらなる勝利への渇望を胸に。前人未到、3度目の連覇へ。そして通算9度目のリーグ王者へ――。2017 明治安田生命J1リーグ、開幕。全34試合、激闘の日々が再び始まる。
 水色と黒に染まった等々力、勝利以外は許されない一戦で会心のウノゼロを演じ、「2点以上を奪って勝つ」という任務を遂行した魂の90分を経て、アントラーズは7年ぶり8度目のリーグ王者に輝いた。2016年12月3日。笑顔の背番号40が再びシャーレを掲げた瞬間、アントラーズレッドの歌声が埼玉スタジアムの沈黙を切り裂いた。

 だが、試合後の選手たちが紡いだ言葉は決して、歓喜の爆発とは形容し得ないものだった。遠藤は「もちろん嬉しいけど、前回の優勝とは少し違うから…」と言葉を濁せば、昌子も「ルールはルールだし、勝った者がチャンピオン。チャンピオンになれたことを誇りに思いたい」と、複雑な心境を明かしつつ、さらなる向上を誓っていた。1stステージ王者にして、年間勝ち点では3位。“2ステージ+チャンピオンシップ”という「前回とは少し違う」レギュレーションに沿って、頂点にたどり着いた。誰が何と言おうと2016シーズンの王者はアントラーズであり、その事実は揺るがない。18個目の星は未来永劫、アントラーズファミリーが誇りとして語り継ぐものだ。ただ、選手たちが追い求めていたのは、シーズンを通して首位を走り続ける己の姿だった。

「今シーズン、1年間を通して安定した戦いを見せて勝ち点を積み重ねたのは浦和レッズだと思います。僕らは敬意を表しているし、年間1位を目指して頑張っていきたいです。チャンピオンとしてこの舞台に戻ってこられるように、みんなで頑張っていきたいです」
 12月20日のJリーグアウォーズ。キャプテンが壇上で語った言葉が、チームの思いを全て表していた。そして迎えた2017年、J1は3年ぶりに1シーズン制へ回帰する。この言葉のとおり、「1年間を通して安定した戦い」を見せなければ、タイトルには手が届かない。チーム作りの進度が問われる序盤戦から、ゴールデンウィークの連戦や猛暑の夏場が待ち受ける中盤戦、そして、疲労が蓄積されたうえに重圧がのしかかる終盤戦。移り行く季節の中、常に高いレベルを維持し、勝ち点を積み上げ続けなければならない。

 アントラーズがまず克服しなければならない課題は、“勝ち点60の壁”を打ち破ること。2009年、3連覇の最終年となったシーズンに積み上げた勝ち点は66だった。以降の7年間で記録したポイントは60、50、46、59、60、59、59と推移している。まさに“60の壁”が立ちはだかっているのだ。一方、昨季の年間勝ち点首位だった浦和は74、2位の川崎Fは72ポイントを記録した。2015年のチャンピオン・広島は74ポイントだ。アントラーズは“60の壁”を打ち破り、約15ポイント、つまり5つの勝利を上積みしなければならない。それが頂点に立つための、最低条件だ。

 2月13日、Jリーグ全クラブの指揮官と選手が一堂に会したキックオフカンファレンス。石井監督は数多くの報道陣に囲まれ、矢継ぎ早に質問を受けた。その中には「“5勝分”を埋めないといけないが」というものもあった。燃えたぎる闘志を胸に、指揮官は静かに言葉を並べた。

「全ての選手が戦術を理解して、誰が試合に出ても遜色なく戦えなければならない。新戦力は予想よりも早く馴染んでいて、プレシーズンの準備は順調だと思う。昨年よりもレベルが高いチームができていることは間違いない。この補強を見れば、クラブの期待は大きいことはわかる。しっかりと応えないといけない」
 J1は今季から、優勝賞金の大幅な増額が決まった。収入額の格差はクラブ間の競争力に大いなる影響を及ぼすだけに、生き残りを懸けた戦いは熾烈を極める。今季開幕を前に大型補強を敢行したクラブは1つや2つではない。アントラーズもまた、強敵として立ちはだかってきた実力者たちをメンバーリストに加えた。昨季のレギュラーメンバーであっても、今季はベンチ入りの枠を懸けた争いに身を投じることとなる。石井監督は「2チーム分の戦力」と表現しているが、日々のトレーニングを見れば、その言葉が決して誇張ではないことがわかる。個々の切磋琢磨をチーム力の向上につなげ、勝利を積み重ねていく――。勝負のシーズンが、いよいよ始まる。

 まずは2月25日、カシマスタジアム。連覇への長く険しい道のりは、聖地に青赤軍団を迎え撃つ一戦で幕を開ける。ホームでリーグ開幕を迎えるのは、実に6年ぶり。前回は2011年、東日本大震災に見舞われる5日前の大宮戦だった。傷ついた聖地とともに立ち上がり、苦しみと向き合いながら一歩ずつ進んできたアントラーズ。今季からスタンドの入れ替えが実施され、大型ビジョンの新設も決まっている。新たな風景とともに迎える2017シーズンを、栄光の記憶で彩るために。19個の星の誇りと、勝利へのさらなる渇望を胸に、力強く一歩目を踏み出そう。連覇という物語を、アントラーズファミリー全員で、紡ぎ始めよう。
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