天皇杯準々決勝の注目プレーヤーは、柴崎岳!
その煌めきが、世界に衝撃を与えた。12月18日、FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016決勝。レアル・マドリードを相手に刻んだ2つのスコア。柴崎岳の名が、世界に轟いた。
「2位は2位なので。残念です。タイトルを獲れなかったし、歴史にもレアル・マドリードの名が残るだけ。チームを勝利に導くことができなかった」
激闘を終えた俺たちの10番。その瞳には、悔しさが光っているようにも見えた。「チームを勝たせる選手になる」と理想像を掲げ、前日会見で「レアルにも勝てると思っている」と言い放って誇りと決意を示し、その言葉を証明するかのように2ゴールを決めてみせた。同点弾の後、笑顔を見せることなく土居のもとへ歩み寄った時、その鋭い眼光は勝利だけを見据えていた。全ては、勝つために——。だからこそ、世界の頂へたどり着けなかった悔しさが強く深く刻まれることとなった。
そこに喜びはなかった。悔しさがにじみ出て、抑えることができなかった。しかし、それでも。クリスティアーノ ロナウド、ルカ モドリッチ、そして柴崎岳。大会個人賞の表彰に並ぶ姿を見て、アントラーズファミリーは誇りを胸に宿すことができた。俺たちの10番が、世界の舞台で輝いたのだから。もがき苦しんだ日々、チームのために腐心し続けた姿を誰もが知っているのだから。
「今年のヤングプレーヤー賞、受賞に値する選手は0人でした。世界に目を向ければ、ミランのエル・シャーラウィやレアル・マドリードのバラン、サントスのネイマールがいます。彼らのような活躍をしている選手がいるかといえば、そうではありません。彼らに一歩でも近付き、日本を代表する選手になっていかなければ、世界とは戦えないと思います」
2012年のJリーグアウォーズ。20歳にしてアントラーズに欠かせない存在となっていた柴崎が、己の不甲斐なさと決意を刻んだ言葉だ。あれから4年。世界の舞台でバランと同じピッチに立ち、2つのスコアを刻んだ。ここまで、決して望むような道のりではなかったかもしれない。代表のユニフォームに袖を通さなくなってから久しくもある。いくつもの起伏が立ちはだかり、もがき苦しみながらも一歩ずつ着実に歩みを進めてきた。その過程をみんなが知っている。あの言葉を現実のものとするために、戦い続けた日々をみんなが知っている。だからこそ、誇らしかった。
「アントラーズでプレーする誇りというものは、確かにあるからね」。このエンブレムを胸に戦う意味を語ってから、6つ目のシーズン。栄光の背番号10を纏って新たなステージへ足を踏み入れ、開幕前や2ndステージ終盤戦で襲われたアクシデントを乗り越え、ついにリーグタイトルへたどり着いた。12月3日のチャンピオンシップ第2戦で先発の座に帰還して魂の90分間を演じてから、瞬く間に過ぎ去った夢のような時間。16日間で5試合を戦ったアントラーズにあって、背番号10はその全ての時間、ピッチの上に立っていた。ボランチで、そして左サイドハーフで。状況に応じて主戦場を変えながら、「チームを勝たせる」。その一心で、走り続けた。
記しておきたいことがある。“白い巨人”との対峙だけがクローズアップされているが、柴崎は第1ラウンドから輝きを放ち続けていたということだ。オークランド・シティーFC戦、88分。中盤左サイドでボールを持ち、刹那の状況判断でスピードを上げてドリブルを仕掛けた。その瞬間、アントラーズのギアは上がり、相手の守備網に隙が生まれた。山本へ預けたパスからゴール前へ飛んだクロス、そして土居の折り返し。金崎が押し込んだ逆転弾は、背番号10のアイデアと判断がもたらしたものだったのだ。
第2ラウンド、マメロディ・サンダウンズ戦の63分。遠藤が左足を振り抜き、ゴールネットを揺らした場面。起点は柴崎のピンポイント・フィードだった。最終ラインの背後へと飛び出した赤崎へ、ここしかないというタイミングで繰り出したロングパス。日々のトレーニングで磨き上げた技術の結晶が赤崎へと通ると、そのクロスを土居が折り返し、遠藤が左足を振り抜くまで、アフリカ王者は無力だった。まさに流れるような、美しい攻撃だった。
「2位は2位なので。残念です。タイトルを獲れなかったし、歴史にもレアル・マドリードの名が残るだけ。チームを勝利に導くことができなかった」


そこに喜びはなかった。悔しさがにじみ出て、抑えることができなかった。しかし、それでも。クリスティアーノ ロナウド、ルカ モドリッチ、そして柴崎岳。大会個人賞の表彰に並ぶ姿を見て、アントラーズファミリーは誇りを胸に宿すことができた。俺たちの10番が、世界の舞台で輝いたのだから。もがき苦しんだ日々、チームのために腐心し続けた姿を誰もが知っているのだから。
「今年のヤングプレーヤー賞、受賞に値する選手は0人でした。世界に目を向ければ、ミランのエル・シャーラウィやレアル・マドリードのバラン、サントスのネイマールがいます。彼らのような活躍をしている選手がいるかといえば、そうではありません。彼らに一歩でも近付き、日本を代表する選手になっていかなければ、世界とは戦えないと思います」


「アントラーズでプレーする誇りというものは、確かにあるからね」。このエンブレムを胸に戦う意味を語ってから、6つ目のシーズン。栄光の背番号10を纏って新たなステージへ足を踏み入れ、開幕前や2ndステージ終盤戦で襲われたアクシデントを乗り越え、ついにリーグタイトルへたどり着いた。12月3日のチャンピオンシップ第2戦で先発の座に帰還して魂の90分間を演じてから、瞬く間に過ぎ去った夢のような時間。16日間で5試合を戦ったアントラーズにあって、背番号10はその全ての時間、ピッチの上に立っていた。ボランチで、そして左サイドハーフで。状況に応じて主戦場を変えながら、「チームを勝たせる」。その一心で、走り続けた。
記しておきたいことがある。“白い巨人”との対峙だけがクローズアップされているが、柴崎は第1ラウンドから輝きを放ち続けていたということだ。オークランド・シティーFC戦、88分。中盤左サイドでボールを持ち、刹那の状況判断でスピードを上げてドリブルを仕掛けた。その瞬間、アントラーズのギアは上がり、相手の守備網に隙が生まれた。山本へ預けたパスからゴール前へ飛んだクロス、そして土居の折り返し。金崎が押し込んだ逆転弾は、背番号10のアイデアと判断がもたらしたものだったのだ。
第2ラウンド、マメロディ・サンダウンズ戦の63分。遠藤が左足を振り抜き、ゴールネットを揺らした場面。起点は柴崎のピンポイント・フィードだった。最終ラインの背後へと飛び出した赤崎へ、ここしかないというタイミングで繰り出したロングパス。日々のトレーニングで磨き上げた技術の結晶が赤崎へと通ると、そのクロスを土居が折り返し、遠藤が左足を振り抜くまで、アフリカ王者は無力だった。まさに流れるような、美しい攻撃だった。


そして準決勝、アトレティコ・ナシオナル戦。苦しみ抜いた一戦でも、背番号10は輝いていた。28分、のちにVARによる歴史的PK判定を生むシーン。柴崎の正確なFKが、南米王者をパニックに陥らせた。西の飛び出しを阻止しようと試みた相手DFが、たまらずファウル。PKを土居が決め、アントラーズは勝利への一歩を踏み出した。そして83分。遠藤の芸術的ヒールシュートも、柴崎が放ったクロスがもたらしたものだ。“相手GKとDFの間に通す”というセオリーを実現した左足。屈強で老獪な南米王者は、両足から繰り出される正確無比のキックを前に、敗者としてひれ伏すこととなった。
夢のような時間、その中にあって輝きを放ち続けた柴崎。次なる戦いはもう始まっている。その視線の先には、19個目のタイトルしか映っていない。まずは準々決勝だ。スペイン紙に「鹿島の宝石」と称された俺たちの10番が、慣れ親しんだカシマスタジアムへ帰還する——。このピッチで、さらなる煌めきを。そして、そのキャリアにまだ刻まれていない「天皇杯制覇」を現実のものとするために。アントラーズの10番が、再び走り始める。
夢のような時間、その中にあって輝きを放ち続けた柴崎。次なる戦いはもう始まっている。その視線の先には、19個目のタイトルしか映っていない。まずは準々決勝だ。スペイン紙に「鹿島の宝石」と称された俺たちの10番が、慣れ親しんだカシマスタジアムへ帰還する——。このピッチで、さらなる煌めきを。そして、そのキャリアにまだ刻まれていない「天皇杯制覇」を現実のものとするために。アントラーズの10番が、再び走り始める。
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