決勝のみどころを読む!

 世界大会のファイナルだ。FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016、決勝。記すだけで、読み上げるだけで、武者震いが止まらない。フットボールの歴史に、KASHIMAの名を刻む時がやってきた。

 4日前、吹田の夜。準決勝で激突した南米王者は、想像をはるかに超える攻撃力を備えていた。時に豪快に、時に老獪に。ゴールへと襲いかかるコロンビアの雄は、勝利を信じて疑わなかっただろう。あれだけ攻めていたのだから。あれだけのシュートを放ったのだから。しかし、90分の先に、勝者となったのはアントラーズだった。3-0。そのスコアは驚きという生半可なものではなく、強烈な衝撃を伴って世界中へ発信された。南米王者が負けた——。試合後、敵将に飛んだ1つ目の質問は「今後も監督を続けるつもりか?」というものだった。それだけの衝撃だったのだ。

 アジア勢として、初めてたどり着いた決勝。次の史上初を見つけ出した選手たちは、しかし、至って冷静だった。試合後、柴崎が顔色一つ変えずに「当初から、この大会で4試合に勝つことが目標だった。次もしっかりと勝ちたい」と言えば、ヒールシュートでスコアを刻んだ遠藤は「タイトルを獲ってこそ評価される」と、淡々と語った。世界中に衝撃を与えた当事者の落ち着きが、ざわめき立つ周囲と鮮やかなコントラストを描いていく。植田の言葉が全てだろう。「まだ、何も勝ち得ていない」——。

 激闘の翌日、大阪から横浜へと移動した選手たちは、次なるライバルが決まる瞬間を見届けた。横浜国際総合競技場での準決勝第2試合。勝者は、レアル・マドリード。アントラーズは、世界に名だたるメガクラブとファイナルで対峙することとなった。    
  タイトルマッチの相手が決まった。準備期間は2日間。勝利だけを目指し、タイトル獲得だけを追い求め、チームはトレーニングに臨んだ。今月に入って、16日間で5試合目。しかし、身体的な疲労を凌駕する高揚感が選手たちを突き動かす。土居は言う。「充実感の方が大きいと思う。疲労なんて感じない」と。歴史を変えるPKの担い手として名乗りを上げ、その勇敢なチャレンジを成功させる——。吹田の夜、フットボーラーとして一段上のステージへ足を踏み入れた背番号8は、そう言っていつもの笑顔を見せた。誰もが自信に満ちた表情で、しかし浮き足立つことなく決戦の時へと歩みを進めていた。

 さあ、ついにファイナルだ。対峙するのは、レアル・マドリード。1902年の創設以降、フットボールの歴史を常にリードしてきた“白い巨人”が、決勝の相手だ。リーガ・エスパニョーラ優勝は32回を数え、UEFAチャンピオンズリーグは最多11回の優勝を誇る。FIFAは彼らを「20世紀最高のクラブ」に選出した。クリスティアーノ ロナウド、カリム ベンゼマ、トニ クロース、ルカ モドリッチ、セルヒオ ラモス——。そのメンバーリストにはスター選手が揃う。そして指揮官は、ジネディーヌ ジダン。かつてのファンタジスタは今年1月の就任後、50試合超でわずか2敗という驚異的な実績を残し、日本の地を踏んだ。歴史、伝統、実績。全てが圧倒的な、偉大なクラブだ。

「2位と最下位は同じ。優勝しないと何も意味がない。勝たないと意味がない。勝って終わりたいし、レアルに勝てると思っている」

 決戦前夜の公式会見。柴崎はキャプテンの言葉を引用しながら、胸に宿る決意を堂々と言い放った。栄光の背番号10を纏う24歳は、どんなメガクラブが相手でも揺らぐことのない「アントラーズでプレーする誇り」を、強い言葉で表現した。その目はただ、勝利だけを見据えていた。
 「レアルに勝てると思っている」——。その言葉を聞いて、“本気で言っているのか”と、笑う者がいるかもしれない。もしかしたら、世界中に笑われているかもしれない。笑いたい者は笑っていればいい。世界中に笑われても、アントラーズファミリーは勝利だけを追い求め、全員で勝ちに行く。キャプテンは静かに言った。「うちはそういうチームだから」と。そうだ。それがアントラーズなんだ。誰一人として「決勝に出られるだけで嬉しい」などと考える者はいない。背番号12も同じだ。みんなが本気で勝ちに行く。勝つためにできることを考える。そんなファミリーの一員である喜びを、いま一度噛み締める。そして改めて思う。今夜も勝ちたい。みんなで、勝ちたい。

 このクラブと出会って、数え切れないほどのかけがえのない仲間と出会って、ともに喜び、ともに笑い、時に悲しみ、悔しさに耐え、時に不甲斐なさと向き合いながら、みんなで一歩ずつ歩みを進めてきた。Jリーグ加盟は「99.9999%、不可能」と突き付けられてから25年。ついに、世界一を懸けたファイナルに挑む時が来た。「0.0001%」の希望を手繰り寄せて歩みを始めたアントラーズに、不可能なことなんてない。決勝進出を決めた後、ジーコはこんな言葉を贈ってくれた。「カシマは非常に良い状態にある。世界のタイトルを掴むことができるはずだ」と。その言葉だけで十分だ。力がみなぎってくる。俺たちなら、やれる。
「このクラブは、タイトルを獲ることで強くなってきた」

 18個の星の誇りと、キャプテンの言葉を胸に——。2016年12月18日。世界にKASHIMAの名を轟かせる時が来た。相手は強い。きっと今までで一番強い。だからこそ、今日もともに戦おう。この相手を乗り越えて、世界の頂へと足を踏み入れるためには、全員の力が必要だ。どこにいても気持ちはひとつ。アントラーズファミリーの底力を見せつけてやろう。

 「FOOTBALL DREAM 同じ夢を見よう」。夢は夢のままで終わらない。夢を歴史にする戦いが今、始まる。
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