「真面目。とにかく、サッカーに対して真面目」

　アントラーズ一筋の背番号5のことをキャプテンの小笠原に聞くと、そう評する。

「アントラーズらしい選手ともいえるかな。チームのためにがんばれる選手。それは試合に出ている、出ていないかは関係ない。トレーニングからそう。それも入った頃から今までずっと変わっていない。それが青木かな」

「ま、私生活はどう分からないけどね（笑）」と、小笠原は褒めただけでは終わらない。そう、青木はチームメートとして、「たまにイジりたくなる」（小笠原）仲間でもある。
　「10クラブぐらいからは話があったと思います」と本人も話すように、青木剛は高校時代から将来を期待されていた選手の1人だった。高校サッカー界の名門校、前橋育英高で中心選手として活躍していた青木だが、本人にはさほど”エリート”という意識がないという。

「だって代表に呼ばれても、タクさん（野沢拓也。現ベガルタ仙台）とかいるんですよ。自分がいかにテクニックがないか、技術がないか、そしてセンスが…。周りにいる人、出会う人がすごすぎて…」

　高校2年時には全国サッカー選手権で、ベスト4。そしてその頃からレギュラーとして出場していた青木は必然的に年代別代表にも招集された。その時に出会ったのが、野沢拓也。アントラーズサポーターには説明する必要もない、稀代の天才フットボーラーが1歳年上にいた。

　「あんな人がいるJリーグのクラブっていうのは、やっぱりレベルが高いだろうと。自分はそこまでじゃないだろうと思ったこともあります」

　特別指定選手として参加していた浦和レッズなどからもオファーがあったが、青木はこのアントラーズを選択した。その理由は、シンプル。「ここでだったら、自分がもっと成長できるんじゃないかと感じた」。自分自身の成長のため、青木はアントラーズレッドのユニフォームの袖を通すことになった。

　自分自身の成長を願い、鹿嶋の地へ来て16年目。リーグ3連覇も経験し、日本代表にも呼ばれた。Jリーグの中でもベテランの部類に位置づけられる青木だが若手の台頭もあり、今シーズンは出場機会がめっきり減ってしまった。