清水戦の注目プレーヤーは、レアンドロ!

「日々の練習から、自分の長所を最大限に磨くことが大事だ。練習が自信となり、チームメートから尊重されるようになる。アントラーズのエンブレムを身に着けた者は、自覚を持ってやっていかなければならない」

 17日、久しぶりの青空に恵まれたクラブハウス。トレーニングを終えた選手とスタッフが輪を作る。その中心には、ジーコ。「このクラブの伝統は、勝つことなんだ」。アントラーズの魂であり、アントラーズの全て――。神様の言葉が、緊張感が張り詰めたグラウンドに静かに刻まれていく。

 約10分間にわたって語られた、ジーコ・スピリットの神髄。円陣を成した選手たちの中にあって、誰よりも目を輝かせていた若武者がいた。見るからに強靭な肉体、そして両腕に刻まれたタトゥー。迫力満点の風貌、そして穏やかで優しき心――。ウェヴェルソン・レアンドロ・オリヴェイラ・モウラ、通称レアンドロ。その表情は神妙で、そして喜びに満ちているようだった。

「日本でもブラジルでもアイドルであり、功労者として来日するのは非常に良いことだと思います。日本のサッカーにおいて貢献をして表彰されたわけであって、僕が何か言葉で言うよりも彼の存在自体に重みがあると思います」

 24歳の若さにして、紡ぐ言葉は誠実で真摯だ。グレミオ、パルメイラス、そしてサントスと、フットボールの王国で存在感を誇示し続ける名門クラブを渡り歩いてきた。2013年にはブラジル代表のユニフォームを纏い、デビューを飾ったボリビア戦でスコアを刻んだ実力者。「常勝チームの選手というのは、90分間走り続けることができるものです。トップで生き残るためには、90分間を走り抜く身体を作っている必要があります。45分は普通に走れるものですが、90分を通じていかに同じレベルのプレーができるか。それが差となるのです」。静かに、穏やかに。それでいて、過酷な競争を乗り越えてきた強烈な自負もまた、滲み出ていた。

 王国で荒波に揉まれながら、力強く歩みを進めてきたレアンドロ。その足跡には“ZICO”の文字がある。CFZ・ド・ブラジリア、Centro de Futebol ZICO Sociedade Esportiva de Brasilia。通称ジーコ・サッカーセンターで、レアンドロはプロフットボーラーへの道のりを邁進していたのである。2008年、14歳の時だった。

「とても嬉しかったのは、フィジオセラピストのロドリゴを通じて『あの時のレアンドロか』と言ってもらえたことです。僕のことを見ていてくれて、覚えてくれていたのですから、とても嬉しかったです」

 自らが主催した大会に出場したレアンドロ少年のことを、ジーコは覚えていた。離日前に更新されたインスタグラムには「CFZでプレーしたレアンドロ」という記載も。神様もまた、鹿嶋での“再会”を喜んでいたのだった。レアンドロがアントラーズのエンブレムを纏う運命は、必然だったのかもしれない。

 「チーム全員で力を合わせて、全タイトルで優勝することが目標です。個人的にはいいパフォーマンスを見せて、ブラジル代表に復帰したいと思います」

 力強い抱負とともに、日本での歩みを始めたレアンドロ。加入間もないタイキャンプで、さっそく実力の片鱗を見せ付けていた。凹凸の目立つピッチをものともしない力強い突破、そして確かな足下の技術。バウンドの瞬間に軌道が変化したボールに対し、刹那の判断で足首の角度を変え、シュートを枠に飛ばす。一つひとつのプレーに、レベルの高さが反映されていた。

 だが、順風満帆な滑り出しとはいかなかった。J1開幕5試合、出番なし。5月14日の神戸戦で初得点を決めたが、アントラーズは1-2で敗れている。「最も重要なものはチームの勝利」と常々語る背番号11は、「非常に残念です」と言葉少なに聖地を後にした。地球の裏側で臨む挑戦で、思うように躍動できない日々――。24歳にとって、試練の時間が続いた。

「自分が得点を決めて、チームが勝つことができました。嬉しいです。クラブが決断をした中で、監督が求めたものを明確に表現できたと思います」

 転機となったのは、指揮官の交代だった。初陣となった広島戦で先発出場を果たすと、2ゴールを挙げて勝利の立役者に。日本で初めて味わう喜びを噛み締め、その表情に明かりが灯った。その後のリーグ戦10試合中、8試合で先発出場。3つのスコアを刻み、ゴールにつながるラストパスを5本も通している。「自分のサッカーを信頼してもらっていると思います。ずっと試合で使ってもらえるのでコンディションも上がってきました」。まさに本領発揮、充実の時を迎えている。

「日本という国が好きになりました。ピッチ内外で非常に気に入っているので、活躍を続けて、この国で長くプレーできればと思っています」と言って、レアンドロは微笑んだ。その活躍ぶりは、母国メディアにも報じられている。「日本で最良の時を迎えた」という見出しの記事を目にして、笑顔の背番号11。「活躍があっての報道だと思うし、嬉しいことです。活躍を続けていきたいし、クラブの目標である三冠獲得のために貢献できればと思っています」。柔らかい表情に、決意が宿る。その眼光は鋭く、次なる勝利を見据えていた。
   
「本当に、“サポーター”という感じですね。支えてくれていると感じます。ブラジルではミスをするとブーイングをされて、そうすると次にボールが来た時もブーイングされてしまいます。でも、こちらでは応援を続けてもらえるし、それにしっかりと応えようという気持ちになるんです。一人の人間として、そして一選手として“守られている”という思いを持っています。そういうサポーターですよ」

 3試合ぶりに帰還する、カシマでの90分。ともに戦う背番号12への思い、そしてジーコの言葉を胸に――。「どの試合でも勝たなければいけないし、勝たなければ残るものはありません」。今夜もレアンドロはピッチを駆ける。揺るぎなき決意と勝利への渇望を、聖地のピッチに解き放つ。

友達に教える
  • OFFICLA SITE
  • HOME
  • Antlers Wi-Fi
  • Match Information
  • Event Information
  • Fan Club Information
  • Goods Information
  • Today's Preview
  • Pick Up Player
  • Infographics