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 今シーズンの開幕前、土居聖真はキャプテンに就任することへの意気込みを聞かれると、次のように語った。

「ネガティブな空気ではなく、ポジティブな空気が充満するような働きかけをしていきたい。ただ、キャプテンという肩書はつくけれど、あくまで一選手であることに変わりはない。チームには、昨季までキャプテンを務めてくれた健斗もいるし、副キャプテンの優磨もいる。性格的にも言うべきところは、彼らに託そうかと思う。僕は逆に、先輩から強く言われて落ち込んでいる若手選手をフォローすることで、バランスを取ろうと思う」

 そして、始まった2022シーズン。土居はその言葉通り、ピッチ内外でチームのために献身を尽くした。開幕当初はスタメン出場を続け、チームのスタートダッシュにも大きく貢献した。

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 しかし、シーズンの経過とともに状況は変わった。怪我の影響やチームスタイルの変化があり、出場時間が減少。思うようなパフォーマンスをピッチで発揮できない日々が続いた。キャプテンとしての立場と一選手としての出場時間。さまざまな葛藤があったことは想像に難くない。

 それでも、開幕前の宣言通り、出場機会が減少しても、土居はネガティブな感情を表に出すことはなかった。前向きな姿勢を崩さず、新たなフットボールスタイルに適応するため、日々のトレーニングで自分のやるべきことを続けた。そして、ピッチ外の時間でも、タイミングを見て、若手選手に声をかける姿があった。

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「チームを引っ張ることはもちろん、大事なところで困っている選手がいれば、サポートしよう、とキャプテンに決まったときから考えていた。ピッチ内よりもピッチ外の部分。練習以外の時間でアドバイスしたりすることは、自分が思っていた以上に多くできているかなと思う。上からものを言うのは好きではないし、キャプテンだからといって威張ることも良くないと思う。そこは気をつけながら、チームをサポートしてきたつもり」

 すべては勝利のためにーー。その姿勢は出場機会が減少しても、変わることはなかった。「試合にあまり出れていない選手を含めて、全員で戦っていかないといけない。みんなで心と体を考慮しながら戦っていく必要がある」。若手選手が多い今のチームにおいて、彼の存在はこの上なく頼もしい。

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 しかし、1人のプロ選手として、現状に満足できるはずがない。今シーズンからより顕著になった「縦に早いスタイル」に適応するため、試行錯誤を続けている。

「スプリントの回数だったり、『量』も重要だと思うけど、力を出す『タイミング』や『質』も求められていると思う。すべてを全力をやると、空回りしてしまう部分も出てくる。行くべきところを大事にしたいし、フットボールで走ることは当たり前なので、走ることをベースとしたうえで、頭を使って賢くプレーしたいと思う。縦に早い攻撃が求められているが、監督からも自分たちでボールを保持できる時間はコントロールしてくれと言われている。そこの使い分けは必要だと思うし、自分がバランスを取ってチームに促していきたい」

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 言を俟たないが、彼に求められているのは、ピッチ外の貢献だけではない。経験豊富な土居だからこそ担える、ピッチ上での役割がある。

「なかなか出場機会が恵まれない中でも、自分のやることをやっているし、チームが苦しいときに自分が助けないといけないという思いがある。出場時間は限られているが、常にチームの力になりたいと考えて準備を続けている」

 チームのバランスを気にしながら、個人として結果を残す。それは決して容易なことではないが、これまで幾多もの苦難を経験してきた彼ならば、必ずまた自らの足で力強くそれを乗り越え、ピッチで笑顔を輝かせてくれるはずだ。

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「僕らは最後の笛が鳴る1秒まで全力で戦う。岩政コーチも話していたけれど、『楽な試合は1つもないし、苦しんで、もがいて、いろいろな逆境を跳ね除けないと優勝はできない』そういうシーズンだと思う。その苦しい状況が、今来ている。アントラーズファミリーの皆さんにも、一緒に苦しみながらも、戦ってもらえれば嬉しい」

 苦しんで、もがいた先に、必ず歓喜の瞬間が訪れると信じて。我々のキャプテン、土居聖真はアントラーズの勝利のために全力を尽くす。

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