PICK UP PLAYER

photo

 2022シーズンの開幕直後、荒木遼太郎は「少し重く考えすぎているかも」と苦笑しながら、自身の心境の変化を語った。

「一選手としての考え方は、1年目や2年目と比べ、3年目の今はだいぶ変わった。1年目は少しでもいいから試合に絡みたいという一心で過ごし、2年目は個人としての結果を残すことでとにかく必死だった。もちろん、今も結果を残したいという気持ちに変わりはないし、1年目も2年目も勝利にこだわってやってきたつもり。でも、3年目の今シーズンは、絶対に勝たなければいけないし、絶対に勝たせなければいけない。この思いがこれまで以上に高まっている」

photo

 昨季までの2年間は、ベテランや中堅の経験豊富な選手が多く在籍していた。頼れる先輩たちの存在はとても大きく、『ミスしても気にしなくていい。俺たちがカバーするから安心しろ』と、若手がプレーしやすい環境を整えてくれたと言う。しかし、今シーズンは選手の平均年齢がさらに若返り、荒木もチームを牽引する立場へ変化した。

「1、2年目はミスをしたとしてもすぐに切り替えて、またガンガン挑んでいく“若手らしいスタンス”でプレーしていた。その思いは心のなかに残しつつも、今は周りを使うことやチームのためにという考えが先行するようになった。これまでと心境的にはずいぶん変わったと思う。正直、ここまで自分の考え方が変わるなんて、想像もしていなかった」

photo

 試合中の堂々たる振る舞いが物語るように、彼はあまり重圧を感じるタイプではない。ピッチ外でどれほど注目を浴びようが、ピッチに入れば、思うままにプレーする。背番号を変更しても、「10番を背負うという重みやプレッシャーはいい意味で感じていない」と飄々と語った。だが、経験を重ねるなかで、アントラーズでプレーする『責任』は、強く感じるようになった。

「今の僕が感じているのは、アントラーズの選手としての責任の重さ。チームとして勝たなければいけない。タイトルを獲らなければいけないという気持ちは、ものすごく強いものがある」

photo

 プレーを楽しむだけでなく、勝利を強く意識してプレーすること。その責任感は、真の一流選手になるために、必要な要素の一つ。ただ、これを言葉だけでなく、己の体一つで体現することは非常に難しい。チームから求められるプレーと自分の得意なプレー。それが必ずしも一致するわけではない中で、自身の価値を証明しなければいけない。

「スタイル的に、周囲からは攻撃面の期待が大きくなると思っている。僕としてもたくさんのチャンスをつくり、どんどんゴールに絡んでいくプレーを披露したい。ただ、今シーズンは攻撃面だけでなく、それ以外の面でもチームの力になるつもり。守備面で体を張るのはもちろん、体力的に厳しい時間帯であっても、人一倍走って、チームを鼓舞していきたい」

photo

 天性のボールタッチ、卓越したパスセンスとシュートテクニック、位置取りで相手の急所を突ける独特な感性。彼が非凡な才能の持ち主であることは間違いない。そこに新たな武器が加われば、彼が理想とする選手像へ近づけるはずだ。

「最終的には、チームメートやファン・サポーターの皆さんから『荒木がいて助かった』、『荒木がいてくれてよかった』と思ってもらえるような存在になることを目指している」

 すべての経験を成長の糧にして。背番号10、荒木遼太郎は勝利のために戦う。

photo


pagetop