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 2020年、広瀬陸斗はリーグ優勝に貢献した横浜FMから慰留を受けながら、自らの決断でアントラーズでの新たな挑戦を選択した。

 しかし、その強い決意とは裏腹に過去2年間は苦しい時間が続いた。なかなかリーグ戦で出場機会に恵まれず、1年目は15試合、2年目はリーグ戦9試合のみに止まった。「試合に出場できなければプロの選手ではない」。オフには移籍の選択肢も脳裏をよぎった。

 それでも、アントラーズでプレーし続けることを選択した。決断に大きな影響を及ぼしたのは、 昨季までともに戦った遠藤康にかけてもらった言葉だった。

「やっさんは、アントラーズに加入してから3、4年は試合に出られず、諦めずに続けてきたことでようやく試合に出られるようになったという話を聞かせてくれた。腐らずにやり続ける選手をアントラーズは大切にしてくれるクラブだとも話してくれた。それもあったので、アントラーズを勝たせる選手になりたい、アントラーズで頑張りたいという感情がより強くなった」

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 また、元プロ選手である父・広瀬治さんに相談しても、同じことを言われた。

「自分としては、必要とされるチームで試合に出て、そのチームを勝利に導くことができれば、選手としての価値を再び上げることができるとも考えた。でも、父は自分の考えを尊重しつつ、アントラーズでプレーできることがいかに選手としてすごいことかを教えてくれた。ほかにも、やっさんと同じく、アントラーズは監督だけでなく、コーチやクラブスタッフの人たちも努力している姿を見てくれているクラブだということも言ってくれた」

 これまで順風満帆なキャリアを歩んできたゆえ、横浜FMに在籍していた2019年までは、父親にフットボールの相談をすることは、ほとんどなかった。しかし、アントラーズに加入して、初めてプレーに自信を持ちながらも、試合に出れない悔しさを味わった。そんな広瀬にとって、元プロ選手である父親からあらためてもらった助言は大きな意味を持った。

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 決意をもって臨んだ2022シーズン。序盤は出場機会に恵まれなかったが、それでもトレーニングでは常に全力を尽くした。すると、久々の先発出場となった天皇杯3回戦でアシストを記録。ここから状況は好転し、卓越した戦術眼と技術力を武器に、いま一度、存在感を示してみせた。

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 そして、ポジションを確固たるものとして、今節は浦和レッズとの対決に臨む。父は浦和で活躍した元選手。自身もジュニアユースからユースまで浦和の下部組織で育った。だが、いまはアントラーズの一員として、誇りをもって決戦に挑む。

「アントラーズの勝利のために戦うだけ。特別な意識をすることなく、目の前の1試合に向かう」

 雌伏の時を経て、たどり着いた現在地。アントラーズレッドを纏う誇りを胸に、広瀬陸斗は勝利のために戦う。

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