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 誰もが待ち望んでいた、エヴェラウドの完全復活が近づいている。YBCルヴァンカップで今季初ゴールを決めると、先のアウェイ柏戦では、371日ぶりとなるリーグ戦でのゴールが決まった。チーム最多得点を決めていた上田綺世の移籍が発表されたこともあり、彼にかかる期待はさらに高まっている。

 復活の狼煙を上げた背番号9だが、ここに至るまでの道のりは、決して平坦ではなかった。加入1年目にリーグ戦18ゴールの活躍を見せたものの、2年目の昨季はアクシデントに見舞われ、コンディション不良に陥った。感覚を取り戻すまでに時間を要し、結局、リーグ戦でのゴールは1点のみ。本人も「2021年はいろいろな出来事があって、非常に不甲斐ないシーズンだった。自分自身も苦しかったし、納得できない1年となってしまった」と悔しさを滲ませた。

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 そして、再起を期して臨んだ加入3年目の今シーズンは、鈴木優磨がベルギーから復帰。上田と染野が日進月歩の成長を見せるなかで、厳しいポジション争いを強いられた。ただ、エヴェラウドはアントラーズファミリーへの感謝から残留を決断し、完全復活を誓った。

「昨シーズンは不甲斐ないパフォーマンスだった。それでも、温かく応援してくれたファン・サポーターの皆さんには本当に感謝しているし、今シーズンこそ、皆さんの期待に応えたい。そのために、自分はしっかり準備している。まずはチームの勝利に貢献して、タイトルを獲得したい」

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 しかし、そんな気持ちとは裏腹に、今シーズンもアクシデントに見舞われた。開幕早々、練習中に負傷し、長期離脱を余儀なくされてしまう。不屈の精神で何度も逆境を跳ね返してきたエヴェラウドだが、この時ばかりは「現実を受け入れるのに時間がかかった」と大きなショックを受けた。

「ここまで長い期間、フットボールから離れていたことが初めてだった。まず怪我と向き合っていくこと。それが非常に難しかった」

 だが、それでも彼は前へ進んだ。「家族が自分の支えになった。周りのいろいろな方の支えもあり、怪我を治すことができた」と、周囲の温かいサポートにも助けられながら、負傷という現実を受け入れ、復帰に向けて前進した。

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 そして、懸命なリハビリの結果、順調に回復し、全体練習に合流するまでに至った。「非常に苦しい時間だった」と言うが、いま振り返れば、「非常に良い時間だった」と優しい笑顔で話す。彼の実直な人柄がその一言に凝縮されていた。

「こんなに長い間、チームから離脱したことは、自分のキャリアの中でもないことだった。本当に長い間、フットボールから離れていた。ここまで戻ってこられたことが、とても嬉しい。そして、なによりもサポーターの皆さんの前へ戻ってこれたことが、ものすごく嬉しい。今はまだ、もちろん自分のベストではない。ここからトレーニングと試合を通して、さらにコンディションを上げていって、『得点を取る』という本来の姿を見せたい」

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 そして、ついに歓喜の瞬間が訪れた。YBCルヴァンカップで待望の今季初ゴール。ゴールネットを揺らした後の雄叫びが、彼のここまでの苦悩を物語っていた。

 この得点で失われかけていた「自信」を取り戻した。パフォーマンスは一気に向上し、プレーに躍動感も加わった。本人も「怪我をしてから試合に出られなかった中で、ストライカーらしいゴールを決めることができた。それがチームに希望を与えられたことは自信になった」と語ってくれた。

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 そして、直近の柏戦。PKではあったが、リーグ戦で371日ぶりとなるゴールが決まった。自ら獲得したPKのキッカーを譲った優磨は、エヴェラウドへの期待を次のように語る。

「綺世が抜けた今、エヴェにかかる期待はすごく大きい。怪我から復帰したエヴェを復活させるということは、自分の大きなミッションだと考えている。エヴェが素晴らしい選手ということはわかっている。自分が決めて勝つのと、エヴェが決めて勝つのと、どちらが良いか考えたときに、みんなが彼のゴールと復調を待っていると思ったし、自信を取り戻してほしいと思って、譲った」

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 優磨がエヴェラウドにここまで信頼と期待を寄せるのは、彼がトレーニングから全力で取り組み、完全復活を目指して取り組んでいることを知っているから。彼が本来の姿を取り戻し、ゴールを量産してくれることは、アントラーズファミリー全員の願いだ。

「一生懸命にピッチで戦い続けて、チームに良い結果をもたらしたい。それが恩返しになると思う。サポーターの皆さんのことも代表して、胸についているエンブレムに誇りをもって戦わないといけない。皆さんの思いを常に背負いながら、ピッチに立つ」

 自身への期待と温かい応援に心から感謝している。だからこそ、結果で示したいと彼は力強く語る。

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「コロナ禍の後、初めて『声出し応援』の試合があったけれど、やはりピッチに立つ僕らとしては、大きな違いを感じたし、非常に力強かった。ホームでやるときは、自分たちが勝つための姿勢、強度を表現しなくてはいけない」

 アントラーズファミリーへの感謝を胸に。エヴェラウドは勝利のためにゴールを狙う。

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