PICK UP PLAYER

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 樋口雄太はアントラーズに加入して、さらなる進化を遂げた。従来の武器であった正確無比なキックと卓抜とした戦術眼、無尽蔵の走力に加え、守備の強度がより一層高まり、試合の中で「勝利に繋がるプレー」を選択できるようになった。意識の変化について、本人は次のように語る。

「プレーの幅が広がったと思う。なかでも、90分間を通して、いろいろなエリアに顔を出し、積極的に攻守に関わるという部分には成長を感じる。チーム全体を助ける動き、仲間のために走るといったプレーは、これまでの僕に足りなかった要素。アントラーズに加入してからより伸ばせた部分だと思う」

 マインドが変化した要因。それは「練習のなかに漂う緊張感」にあった。「少しでも気を緩めると、チーム内で浮いてしまうし、日々の練習の取り組み方や厳しさを求める姿勢が、自分のなかでいい方向に変わった手応えがある」。互いに切磋琢磨しながら、ただひたすら勝利を求められる環境。トレーニングの充実感を話す樋口は、どこか嬉しそうに見えた。

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「当然、よりよい内容や質の高いプレーを求めて、チーム全体で修正を繰り返していく必要はあるけれど、その過程であったとしても、常に勝ち続けること。このクラブにとって、それがなにより重要であり、求められていることなのだと認識している」

 質の高いトレーニングが実現するのは、目標設定が高いから。アントラーズファミリーが求めるのは勝利のみであり、勝利を積み重ねた先にあるタイトル獲得が求められる。樋口も要求されるレベルの変化は、ひしひしと感じている。

「一選手としてのマインドの部分が、ずいぶん変わったような気がする。仮に試合展開やプレーの内容が良くなかったとしても、最大の目標は勝つことであり、試合中は勝利を手にするために何をすべきか、何を最優先すべきかを考え、一番いい方法を選択するのがアントラーズの戦い方。アントラーズの一員になって、勝利こそがすべてであり、勝利することで周りから評価されるクラブなのだと強く感じた」

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 求められるレベルが上がれば、重圧も大きくなる。ただ、そのプレッシャーもモチベーションにして戦える強さが、彼にはある。

「カシマスタジアムでプレーできるということは非常に心強いし、球際の勝負で勝ったときに、すごく拍手をしてくれるので、気持ちが盛り上がる。自分も慣れて、すごいやりやすいスタジアムになってきた。最高の雰囲気で後押しをしてくれるので、自分たちも勝利に向かって、全力で戦いたいと思える」

 彼は繰り返しアントラーズファミリーへの感謝を話した。「いまの順位があるのは、サポーターの皆さんの後押しのおかげ」と言い、「試合前から選手を熱く出迎えてくれたことは、すごくモチベーションになる。『一緒に戦ってくれているんだな』って、あらためて感じる」と、厳しくも温かい応援の中でともに戦える喜びを語ってくれた。

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 ルヴァンカップ敗退の悔しさから1週間。勝利が義務づけられた中で何を見せられるか。次のホーム京都戦にかける思いは強い。

「感謝の気持ちを、勝利という結果で届けたい」

 樋口雄太はアントラーズファミリーへの感謝を胸に、勝利のために全身全霊をかけて戦う。

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