PICK UP PLAYER

photo

 2022シーズン、鈴木優磨がアントラーズに復帰した。希望した背番号は40。かつて小笠原満男が背負った番号だ。

「満男さんと自分を比較するのは、本当におこがましい。ただ、俺はこのクラブに在籍している誰よりも、満男さんが偉大な人だということを知っているつもり。小学1年生のときから、満男さんやソガさんのプレーを見てきたし、このクラブをタイトルへと導き、日本を牽引してきたことを理解している。自分自身の決意を示すためには、この40番しかない。このクラブの歴史や価値を知っているのは自分しかいないし、自分自身にプレッシャーをかける意味でも、『40番が欲しいです』と伝えた」

 鋭い眼光で決意を話す。「自分はアントラーズに関わるすべての人たちを笑顔にするため、このクラブを優勝させるために帰ってきた」。真っ直ぐな性格の持ち主。彼の言葉に嘘偽りはない。

photo

 1月13日、優磨は練習合流初日から格の違いを見せつけた。ぶつかられてもビクともしない強靭な肉体に、強烈なパーソナリティ。体中から溢れんばかりの熱をチームメートに伝えていった。「優磨くんの存在は刺激になる」。練習後、みんなが口々にそう語った。

「俺が若手の時は、先輩たちが一丸となって戦っている姿を見て、これがアントラーズなんだと感じてきた。それを今度は自分たちが、今の若手に見せていかなければいけない。俺もいろいろ考えてやらなければいけないような年齢になってきたんだなって思う。昔はただ、前を向いて、突っ走っていればいいという感じだったのにね...」

 2年半の欧州挑戦を経て、優磨は精神的にも肉体的にも逞しくなった。かつては「とにかく自分自身が生き残ることに必死だった」というが、今では「チームがどう勝つか」を強く意識する。

「満男さん、ソガさんを筆頭に、篤人さんやヤスさん。これまでチームを勇気づけ、奮い立たせるプレーを見せる先輩たちがいた。アントラーズとして、そこは絶対に変えてはいけないし、なくしてはいけない部分だと思う。俺は俺らしく、そうしたプレーを見せていきたい」

photo

 その風貌やイメージからエゴイスティックな選手と思われることがあるが、それは全くの誤りだ。もちろん、生来的なストライカーの資質を持ち合わせてはいるが、前線のポストワークで味方に時間を与え、献身的なプレッシングで味方の守備の負担を減らすことも厭わない。勝利のために身を粉にして戦うことで、味方の闘争心に火をつけられる稀有な存在だ。

「チームを引っ張っていこうという思いはない。自分らしくプレーすることが、チームにいい影響をもたらすと思う。俺もまだ25歳。これまで見てきた先輩たちがそうだったように、チームを引っ張ろうとするのではなく、自分自身のやるべきことを全力でやるつもり。その結果、チームに良い影響をもたらすことができると信じている」

photo

 その言葉通り、G大阪との開幕戦でも優磨の存在感は抜群だった。勝ち越しゴールという結果のみならず、最前線で熱く激しく、アグレッシブに戦うことで、チームの進むべき道を示してみせた。

「開幕に向けて、不安が大きい部分もあった。ただ、それが逆に良い危機感になり、試合の入りからアグレッシブに行けた。それが勝因の一つだと思う。もちろんゴールを決められたことは嬉しいが、ゴールよりも、『公式戦をまたアントラーズで戦えた』という喜びがこみ上げてきた。2016年の開幕戦は自分が生き残るために必死だったと思うが、今回は『自分が必ずチームを勝たせないといけない』という強い意志があった。あの時とは、また違う意味のあるゴールだった」

 自分自身に大きなプレッシャーをかけ、それを跳ね除けることで成長する。不安も批判も怒りも、すべて反骨心に昇華して、ゴールに結びつける。どんな状況にも屈しない強いメンタリティは、生粋のストライカーだ。

photo

 さあ、次は待ちに待ったホーム開幕戦。これまで何度も苦杯を嘗めさせられてきた川崎フロンターレが相手だが、今の我々には勝利を誓う背番号40がいる。

「今季の目標は、打倒・川崎フロンターレ。3連覇を成し遂げたクラブは、アントラーズだけで良い。『タイトルを獲る』ではなく、『3連覇を止めてやる』。そういう気持ちをもってプレーしないと勝てないし、優勝はできない」

 求められるのは勝利のみ。優磨は優磨らしく、闘志を全身に滾たらせ、アントラーズのために戦う。

photo

pagetop