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 加入1年目の昨季、和泉竜司は開幕からの27試合、チーム唯一の全試合出場を果たした。しかし、古巣・名古屋との一戦で左膝を負傷し、シーズン終盤は欠場を余儀なくされてしまった。リーグ最終節も、ACL出場権をかけて必死に戦う仲間をスタンドから見守ることしかできなかった。

「改めて、カシマのピッチでプレーしたいと思った」

 悔しさを力に変えて、和泉は懸命にリハビリを続けた。そして、ついに今年3月3日のホーム鳥栖戦で約4ヶ月ぶりの公式戦復帰を果たす。

「昨シーズン怪我をして以来の公式戦。すごく楽しみ。昨シーズンはスタンドから観ていることしかできなくて悔しい思いをした。その悔しさを試合にぶつけていきたい」

 言葉通り、和泉は気持ちの伝わるプレーをみせた。前線から積極的にプレスをかけて守備面で大きく貢献すると、64分にはドリブルから相手選手のタイミングを外した絶妙なシュートを放ち、ゴールネットを揺らしてみせた。得点後にみせた表情からはピッチでプレーできる喜びに溢れていた。

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 しかし、公式戦の復帰からわずか14日後、3月17日のアウェイ福岡戦で再びアクシデントに見舞われる。27分、ドリブルを仕掛けた際に、相手選手とのボディコンタクトでバランスを崩し、右足を負傷してしまった。検査結果は右大腿二頭筋腱損傷。約2ヶ月間の離脱を余儀なくされてしまった。

 長い時間をかけて復帰した直後にリハビリ生活への逆戻りだ。味わった悔しさは想像に難くない。ただ、和泉は冷静に怪我の治療に専念した。「早く復帰したいという思いは常に持っていた」というが、その気持ちをぐっと抑えて「ドクターやトレーナーと話し合いながら、我慢してゆっくり治す」ことに決めた。

「まずは治すことが大事だと思っていたので、患部はあまりトレーニングせずに、他の部分の筋力をなるべく落とさないようにしていた。よくなってきたところで、徐々にやれることが増えてきた。復帰した後に怪我をしないように、常に復帰した後のことをイメージしながら、より強くなれるようにリハビリを続けていた」

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 そんな懸命なリハビリの末、ついに6月16日の天皇杯2回戦で待望の復帰を果たす。6-0と大差のついた63分、エヴェラウドとの交代で和泉がピッチに送られた。選手交代の際には、ケーズデンキスタジアム水戸まで駆けつけたアントラーズファミリーから大きな拍手が贈られた。

「本当にありがたかった。その拍手で戻ってこれたんだなっていう気持ちになれた。個人的に3ヶ月はとても長い時間だった。昨年の最後もそうだったけれど、みんなが頑張っているところを見て、応援するしかできない状況というのは、選手としてとても悔しいこと。そこを乗り越えて、ようやく戻ってこれたのは嬉しい。自分のことを待っていてくれたチームメート、ファン・サポーターの皆さんには本当に感謝している」

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 今季2度目の復帰戦でチームの7点目に絡むプレーをみせた和泉は、その後、コンディションをさらに上げていった。つづく、6月20日の仙台戦は欠場したものの、「コンディションは上がってきている。まずは試合に出るために、日々の練習を100%以上の力でやること。出場時間を増やしてチームに貢献したい」と話し、トレーニングで貪欲にアピールを続けていった。

 すると、6月23日の大分戦で復帰後初となるリーグ戦ベンチ入りを果たす。結果は悔しいスコアレスドローに終わったが、75分から途中出場した和泉は、積極的な仕掛けで試合の流れを変え、存在感を放った。

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 以降は、激しいポジション争いに身を置きながらも、着実に出場時間を伸ばし、直近のリーグ戦2試合はいずれも途中出場、天皇杯3回戦では先発出場している。「ようやくみんなと一緒にプレーできた。喜びを感じるし、ようやく戻ってこれたな、ほっとしたような、安心した気持ち」と、本人もプレーできる喜びを率直に語っていた。

 ただ、プレーできる喜びを噛みしめながらも、目標はさらに高いところにある。自身のプレーに全く納得はしていないし、「短い出場時間でもチームを勝たせたい」と語る。そして、「どんな状況でもしっかりチームを勝たせられるような選手になりたい」と、さらなる進化を己に求めた。

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「昨年は個人として得点が足りなかった。今年こそしっかりこだわりたい。怪我してチームに貢献できていなかった期間も多いし、目に見えるアシストや得点で貢献したい」

 怪我を乗り越え、背番号11は強くなって帰ってきた。チームに貢献するために、和泉竜司は貪欲にゴールとアシストを狙う。

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