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 2018年にアントラーズへ加入した安西幸輝は飛躍的なスピードで成長を遂げ、日本代表に選ばれるSBにまで成長を遂げた。そして2019年7月、ポルトガルに渡り、彼の地で2シーズンプレーしたのち、今年7月にアントラーズへ復帰を果たした。

 ポルトガルでの1年目はそれはもう驚きの連続だったという。生活様式の変化だけでなく、日本と全く異なるフットボールスタイルに衝撃を受け、適応するのに苦労した。

「競技すら違うのではないかと感じるほど。Jリーグをサッカーとするならば、ポルトガルはラグビーといえるくらい違う印象を受けた。個に目を向ければ、とんでもなくスピードのある選手がいたり、めちゃくちゃ身体が強い選手がいたり。だから、戦術でどうにかするというよりは、個のスキルで打開するというのが主流だった」

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 ポルトガルリーグはビッグクラブへのステップアップを狙い、上昇志向の強い選手が揃う。Jリーグとは全く評価基準が異なり、チーム戦術よりも1対1の局面で勝利する力が求められた。安西は「肌感覚としては5秒に1回ファウルが起きるくらいのイメージ」と笑いながら話すが、当たりの激しさをみれば、あながち冗談ではないように思える。

「ポルトガルのチームは『4-3-3』のシステムが主流で、サイドには1対1に強い選手を置き、ドリブルで相手を剥がしてクロスを入れるという攻撃が主だった。それだけに、SBは攻撃だけでなく、1対1の守備が求められた。日本では誰かがカバーしてくれたり、チームでブロックを作ることも多いけれど、ポルトガルにはそうした概念がなかったように思える。マッチアップする自分が責任を持って、相手を止めなければいけない。改めて、守備の重要性を実感することになった。それこそ、ずっとマンツーマンで守ってる感覚だったから」

 ポルトガルへ渡る前は、積極果敢な攻撃参加でリスクを恐れぬプレーを得意とした。しかし、ポルティモネンセSCで監督から要求されたのは、1対1の守備力。安西は「なかなか攻撃で特長を発揮することができず、自分自身が成長できているのか、疑問に思うこともあった」と、当時抱えていたもどかしさを振り返る。

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 そんな葛藤のなかにいた安西だが、ポルトガルでの2年目のシーズンで守備の重要性を再認識させられる出来事があった。

「マッチアップした当時18歳のSBに、自分ではあまり言いたくないが、それはもう、散々やられた。そのとき、こういう選手がどんどんステップアップしていくんだろうな、って衝撃を受けた。同時に、相手を止められなかったことで、自分としては、また守備の大切さ、重要さを痛感させられた。世界から見れば、26歳という年齢は決して若くはないし、それを感じられただけでも、自分にとっては意味があったのかなと。彼を追い越すことはできないけれど、自分のなかで世界の基準を知ることができた試合という意味でも、強く印象に残っている」

 自分がもう一段上のレベルに到達するには、攻撃だけでなく、守備も磨かなくてはいけない。トレーニングや試合を通して、意識的に課題の改善に取り組み、少しずつ手応えを掴んでいった。

「守備における1対1の対応や、試合を落ち着かせるプレーができるようになった。今は自信を持っている部分」

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 そして、ポルトガルでの2年間の修行を経て、今年7月にアントラーズへ復帰した。「相馬監督は守備を大事にしていると感じるので、戦術をしっかりと理解して、守備でも貢献したい」と、守備面での成長をみせたいと安西は語る。

 また、本来のプレースタイルである積極果敢な攻撃参加も解禁だ。これまで抑えられていた分、攻撃へのモチベーションも高い。

「以前、アントラーズでプレーしていたときも、ドリブルは好きだったし、自分の特長だと思う。仕掛けるプレーについては、たとえボールを取られてもいいというくらいの思いで仕掛ける。突っ込まなければわからないというか、何も起こらない。相手にとって何が怖いかって考えたとき、ガンガン来られることだと思う。だから、積極的に仕掛けて、相手が嫌がるプレーをしたい」

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 本来の武器である攻撃力に、ポルトガルで学んだ守備力が加わった。攻守両面での貢献が求められる「アントラーズのSB」として、もう力に不足はない。

「きっと、アントラーズのファン・サポーターの方々のなかには、『2年前にチームに残ってくれていれば』と思っていた人もいれば、気持ちよく送り出してくれた人もいると思う。ただ、僕がここからアントラーズのために返せることはたくさんあると思うので、それを返していきたい」

 背番号2の継承者、安西幸輝は縦横無尽にピッチを駆け巡り、愛するアントラーズに勝利をもたらす。

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