9月18日のG大阪戦、ファン アラーノがピッチで眩い輝きを放った。中間スペースでパスを引き出し、背後への飛び出しを繰り返す。前線から猛烈な守備を続け、攻守の切り替えのスピードは圧巻だった。どれも公式戦3連敗中のチームに足りなかった要素だ。
試合後の記者会見で相馬監督は、前線の4選手を入れ替えた意図を問われ、次のように答えた。
「相手との噛み合わせも含め、狙いを持ったなかでエネルギーを持っていた選手(たちを起用した)。点が取れていないなかで、重苦しさや固さがあったと思うので、そこにもうひとつおもいきりというか、ダメでも何度でもチャレンジして風穴を開けに行くエネルギーがある選手に変更するという狙いがあった」
アラーノはまさに相馬監督が求めるプレーを体現したと言える。
今シーズンはコンディション不良があり、試合から遠ざかる期間が何度かあった。本人も相当悔しい思いを味わっただろう。ただ、アラーノは前向きにトレーニングを行うことをやめなかった。どんなときも最善の準備を尽くしてきた。だからこそ、久々の出場となったG大阪戦でいきなり活躍できたのだろう。
「非常に高い技術や、特別な才能を持っていながら、他の要素でつまずき、プロになれなかった選手をこれまで何人も見てきた。約束事や規律を守れない、集中力に欠けている、目的があいまいになっている...。彼らを反面教師に、自分の長所を取り入れながら、より細かな戦術を極めてきた。今も自分の基本的な考え方は変わらない。だからこそ、常に上の目標に向かって全力で取り組む」
そして、オフザピッチの努力も見逃せない。日本語の習得具合について本人に聞くと、ポルトガル語で「“ちょこっと”は理解できるようになった。日本語は本当に難しい」と苦笑いを浮かべながら話す。ただ、アラーノの回答を訳した高井蘭童通訳が「たぶん、“ちょこっと”ではなく、“けっこう”理解しているはず」と日本語で補足すると、アラーノは笑みを浮かべながら高井通訳に即座に「うそつき!」と切り返す。高井通訳は「ね?僕が発した日本語もわかっているんだから、本当は“けっこう”理解しているはず」と笑みを浮かべていた。
来日2年目、日本での生活にも慣れてきたアラーノには、今、心の中で描くビジョンがある。
「アントラーズは本当に素晴らしいクラブだと日々実感する。チームメートやスタッフはもちろん、各セクションで働いている人々も、とてもすてきな人間性を持っている。それを感じるたびに、『できるだけアントラーズにいたい』という気持ちになる。そのためにも、僕自身はさらなる努力が必要だし、しっかり結果を残すことが求められる」
少しでも長くアントラーズに在籍し続けること。これが彼の願いだ。
「制限下のなかで応援してくれるサポーターとともに勝利したい。川崎Fは非常に強い相手だが、我々にも良いメンバーが揃っている。その自信をぶつけていきたい。みんなでまた力を合わせて、勝利を手にしよう」
献身、誠実、尊重。すべてを兼ね備えた背番号7、ファンアラーノの活躍がチームを勝利に導く。