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 直近のC大阪戦、上田綺世はスコアレスで迎えた56分に途中投入された。交代の際、意識したことは背後への抜け出しと献身的な守備。「状況に応じたプレーをしてチームを助けたいという意識」を持ち、ピッチに入った。

 しかし、思い描いたシナリオにはならなかった。投入からわずか2分後にチームは失点を喫する。これには上田も「自分が入って失点したことで、責任を少し感じた」と言う。

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 ただ、エースストライカーとしての矜持を抱く背番号18は、すぐに顔を上げた。

「絶対に勝たせたい。そう思って前向きになった」

 精神的な強さは彼の武器の一つだ。

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 そして、66分に同点弾を叩き出す。「三竿選手からファーへ柔らかいパスが出されたとき、ファーに膨らむか、ニアに膨らむか(選択肢があった)。他の選手もいたので、後ろは任せて、自分は前で勝負しようと、ニアへ飛び込んだ」。即座に周囲の状況を把握し、判断を下した。和泉からのパスを絶妙なヘディングで合わせ、ゴールネットを揺らす。上田の真骨頂である動き出しの質が得点につながった。

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 さらに、82分には追加点を奪う。ペナルティエリア内で遠藤からのパスを受けると、相手DFに倒され、PKを獲得。このPKを自ら決めて、逆転勝利をもたらした。

 今季のリーグ戦のゴール数を11に伸ばした。2年連続の2桁ゴールはストライカーとして一つの勲章だ。試合後、相馬監督も上田について「さまざまなタスクがある中で、ゴールを決めてチームを勝たせるという部分にこだわってプレーしてくれている。今日の試合ではチームを助けるプレーをしてくれた」と、改めてその献身性と得点能力を讃えた。

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 しかし、試合後の上田は冷静だった。インタビューでの第一声は「ホッとしている」という安堵の言葉。チャンスがあれば、得点を取って当たり前。そんなストライカーの矜持が感じられた。

「現在、チームは理想的な順位にいないし、僕が望んでいた状況ではない。まだまだ足りないと思う。試合に出て点を決めるということ。これを継続的にしていかなければいけない」

 そして、勝利とゴールの喜びもほどほどに「(川崎F戦で)悔しい負け方をして、その次が大事だなと捉えていた。全員で試合に臨んだ結果、勝てたので、残りのリーグ戦も天皇杯も、この勢いで戦っていきたい」と今後の戦いを見据えた。

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 次の対戦相手である横浜FCは、残留争いの真っ只中におり、非常に高いモチベーションでカシマに乗り込んでくることが予想される。難しい試合で勝利を掴み取るためには、ストライカーのゴールが必要だ。カシマスタジアムに集う背番号12の応援は、上田にとって大きな後押しとなるだろう。

「自分自身を原動力にするのが苦手なタイプ。応援してくれる方、家族、自分が活躍している姿を見せたいと思える方々が、常に僕の原動力になってきた。フットボールを始めたきっかけも、他人のゴールを見て、自分が嬉しかったから。僕も感動や喜びを与えたい。それが今も変わらない原動力」

 カシマに集うアントラーズファミリーに喜んでもらうために。チームを勝利に導くために。上田綺世は聖地で貪欲にゴールを狙う。

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