YBCルヴァンカップ敗退が決まった名古屋との第2戦。試合後のロッカールームで、他の選手が静かに着替えやクールダウンを行うなか、一人、ユニフォーム姿のまま座り込む選手がいた。背番号13、荒木遼太郎だ。
重い腰を上げてシャワーを浴び、気持ちの整理をつけてから、記者会見室へ向かう。その途中で絞り出すように本音をこぼした。「悔しい」。気持ちは痛いほど伝わってきた。
この日も荒木は攻撃の中心として、ビルドアップからフィニッシュまで幅広い役割を託された。中間スペースで味方からのパスを引き出し、美しいファーストタッチで前を向き、繊細なボールタッチでボールを持ち運び、攻撃に変化を加えた。堅固な守備を誇る名古屋も、彼の空間認知力と判断力には苦戦しているように見えた。
しかし、数多くの好プレーも得点に繋げられなかった。特に序盤で訪れた決定的なシュートは、惜しくもポストに嫌われてしまった。あのシュートが決まっていれば、試合は全く違う展開になっていただろう。
「1戦目と同じ課題。ゴール前の決定力の差で負けたと思う」
攻撃を牽引する役割を託された者として、無得点に大きな責任を感じているようだった。
ただ、彼は強かった。いつまでも敗戦の悔しさは引きずらない。グッと込みあがる気持ちをこらえ、試合後の記者会見ではすぐに次の戦いを見据えた。
「(決定力不足は)しっかり修正していきたい。これでシーズンが終わったわけではない。切り替えてリーグ戦と天皇杯に臨んでいく」
決定力不足を時の運として片付けるのではなく、技術の問題と捉え、向上させること。同じ思いをもう味わうことのないように、個人としても、チームとしても、成長すること。この悔しさを絶対に無駄にしない。チームを勝たせられる選手になる。そんな覚悟が感じられる言葉だった。
「ピッチの上でどのような結果を出すことができるか。今年の僕にはこの部分が求められていると思う。だから、結果を残してチームに貢献できたとき、僕自身も自分のプレーに満足できると思う」
彼ならばきっとこの経験も進化の糧にしてくれる。荒木遼太郎のプレーから目を離せない。