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 ファン アラーノは加入1年目の昨シーズン序盤、コンディションが思うように上がらず、Jリーグへの適応に時間を要した。ただ、苦しい状況のなかでも、彼は真のプロフェッショナルとして懸命に努力を続けた。自ら体調管理を徹底し、試合に向けた準備も欠かさなかった。

「コンディションが良くなかったり、ミスが多かったり、プラスになれない試合もあるかもしれないが、ファイティングスピリット、最後まで諦めない姿勢はピッチで表現したい。勝ちたいという意欲や姿勢は、どんなときでも見せられる。そこだけは、どんなときでも努力し続けていきたい」

 本人の言葉通り、アラーノはどの試合でも献身的に守備を行い、圧倒的なトランジションスピードでチームに貢献した。得点に絡む場面は少なかったが、どんな状況でも勝利を諦めない姿勢を示し続けていた。

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 そして、彼の努力は結実した。昨年8月26日、FC東京戦で待望の初ゴールを決めると、ここから一気に調子を上げる。守備面での貢献のみならず、持ち前のプレービジョンやパスセンスなど、攻撃面でも真価を発揮できるようになった。

「初ゴールをきっかけに、中央へ絞ったときのスペースで自分の特長を出せるようになった。アシストという結果もついてきた。FWの良さを引き出すプレーにこだわりが持てるようになったと思う」

 昨シーズンの後半戦をそう振り返ったアラーノ。勝負の2年目に向けて十分に期待を感じさせるパフォーマンスだった。

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 しかし、今シーズンも序盤は思い通りの活躍はできなかった。4月7日のホーム柏戦で上田へ絶妙なアシストを記録するなど、昨季序盤よりもパフォーマンスは向上していたが、不振のチームを救うまでの活躍は見せられない。そして、しばらく試合から遠ざかり、復帰後もなかなか存在感を示せないまま、5月19日のアウェイ札幌戦で鼻骨骨折の怪我を負い、再び離脱を余儀なくされてしまう。本人としても「なかなかコンスタントにパフォーマンスを示すことができなかった」と少なからずフラストレーションを溜めていた。

 ただ、そんな中でもアラーノは腐ることなくトレーニングを続けた。「助っ人として来日しているブラジル人にはとても大きな責任とプレッシャーがある」と葛藤を語りながらも、「早くゴールやアシストしたいという気持ちがある。1つ決まれば、脱力感を出せるというか、自然体になれる」と己を信じて研鑽を続けた。

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 すると、6月6日のホーム清水戦で結果を出した。前半終了間際、エヴェラウドのポストプレーを信じて走り込んだアラーノは、冷静に相手GKの動きを見極めて、浮き球のシュートを決める。実に開幕から約3ヶ月半。待望の今季公式戦初ゴールだった。試合後にみせた安堵の表情はこれまでの苦悩を物語っていた。

「継続して試合に出ることができていなかったので、ゴールを取ってプレーオフステージ突破につながったのは良かった。ファン・サポーターの皆さんとカシマスタジアムで再会できたのはうれしいし、心強い。この場を借りてありがとうと伝えたいーー。なかなかコンスタントにパフォーマンスを示すことができなかった。どんな選手にとっても初めてのゴールは重要。今後もゴールやアシストを重ねて、アントラーズの勝利につなげていきたい」

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 このゴールで自信をつけたアラーノは、直近の6月20日ホーム仙台戦で、途中出場から劇的な同点ゴールを決め、チームに勝ち点1をもたらした。個人としては公式戦2試合連続ゴール。そして、待望の今季リーグ戦初ゴールだ。

 試合後、チームの結果には「チームとして目指したのは勝つこと。それができなかったことは非常に残念」と悔しさを露わにしていたアラーノだが、自身のパフォーマンスには手応えを語り、すぐに「大分戦で勝ち点3を取れるようにチーム一丸でがんばりたい」と次の試合を見据えていた。

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 そんな上り調子のアラーノの活躍が期待される次の大分戦は、クラブ創設30周年記念ユニフォームを着用する試合となる。ブラジルフットボールへの敬意と感謝を表現したこのユニフォームに、彼のモチベーションも高まっている。

「ブラジル人として、誇りを感じるユニフォーム。誇りをもって袖を通さなければいけない。アントラーズの選手として、(どんな試合でも)勝利への執念は示し続けてきたつもり。ただ、大分戦はリーグ戦においても重要な試合になるし、勝利へのモチベーションはさらに高くなると思う」

 初ゴールで重圧から解き放たれた背番号7。彼ならばこの重要な一戦できっとまた魅せてくれるはずだ。アントラーズの一員として、ブラジル人として。誇りを胸に戦う。

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