PREVIEW

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 リーグ戦の中断期間前のラストゲームに臨む。対戦相手は川崎フロンターレ。開幕から19戦無敗で首位を独走する強敵だ。ただ、今季ここまでを振り返れば、戦い方は見えてくる。

 相馬監督の就任が発表されたのは4月14日のことだった。就任からわずか3日後に迎えた明治安田J1第10節・徳島戦は、とにかく結果だけを求めて戦った。1-0で試合を終えた相馬監督は次のように語った。

「もう一度、強いアントラーズを取り戻すために前に進まなければいけない。自分たちは“チャレンジャー“。目の前の試合にフォーカスしながら、一つひとつ戦っていく」

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 初陣を勝利で飾ったものの、喜びに浸る時間は全くなかった。相馬監督が選手たちに求めたことは『戦う姿勢』を示すことだった。

「勝つことはもちろんだが、それ以上にもう一度、“戦えるチームになる“こと。“チームとして一つになる“こと。僕が大切にする部分はクラブとしても必要だと考えてくれていた。自分自身も、そこに重きを置いてチーム作りをしていくタイプ。今後は新しいことも取り入れていきたいが、まずは今、自分が大切にしていることをクラブからも求められていると思っている」

 現役時代、アントラーズで数々のタイトル獲得に貢献した相馬監督は、「自分がアントラーズの選手だったころに感じていた空気。それはチームのことを本気で“自分のこと“として取り組む姿勢だったように思う」と、当時を振り返る。そんな当時と現在のチームを比較したとき、明確な違いがあった。

「みんなが本気でチームのために戦う姿勢。何もピッチで喧嘩しろということではない。当時のチームにも、励ます声や助け合う声はたくさんあった。その上で、ぶつかるところはぶつかる。時代も変われば、選手やスタッフも変わっていくので、変化する部分ではあるが、“チームのために“、”チームが勝つために“という部分が少し薄れてしまっていたのかなと思う」

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 そして、就任直後の相馬監督がもう一つ、選手たちへ強く伝えていたことがある。それは我々が『チャレンジャー』であると認識することだ。

「まず伝えたのは、自分たちは本当にチャレンジャーだということ。本当に細かいことは思い出せないくらいなので、そのときの順位が何位だったかも忘れてしまったけれど、どの試合においても自分たちは下で、常にチャレンジャーであることを伝えた。現状からすれば、『常勝』という言葉はもはや当てはまらず、1勝することがいかに大変なことか。ただ、これは常勝と言われていた時期も同じだった。1勝するのは本当に大変なことで、だからこそ、そこに向かってみんなが一つになれるかが重要になる」

 挑戦者としての意識を強く持ったチームは、これまで以上にアグレッシブに、勇気をもって戦うようになった。徳島戦からのリーグ戦6試合で5勝1分無敗と好成績を残す。結果がついてきたことで、選手たちは大きな自信を手にすることができた。また、リーグ戦から選手を大幅に入れ替えて臨んだYBCルヴァンカップでも1勝3分無敗でグループステージ首位突破を決めた。多くの選手が公式戦に絡んだことで、停滞感は一気に吹き飛んだ。チーム内の競争はより激しくなり、全員が一つの方向へ向かえるようになった。

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 前々節の鳥栖戦で無敗記録は10試合でストップしたが、それでもチームの雰囲気は決して下向きにならなかった。試合翌日のトレーニングから活気に溢れ、互いに励まし合いながら、全員が精力的にメニューに取り組んだ。「目の前にあるものに自然と集中することが大切になる。楽しむようなトレーニングも本当に楽しまないと意味がない。だから、目の前のことに一生懸命になることが大事」。指揮官が繰り返し語る「目の前の試合に集中する」姿勢は、選手たちへ確実に浸透していった。

 迎えた前節のC大阪戦。「我々にとってはリスタートで、敗戦からどう立ち上がるかを見せないといけない」重要な試合だった。

 試合はC大阪がカウンターや背後を狙うシンプルなプレーを徹底してきたことで、非常に難しい展開になった。ただ、それでも選手たちは前線からアグレッシブにプレッシャーをかけてチャレンジを続けた。その結果、連動したプレスが相手のミスを誘い、カウンターから荒木が値千金の決勝ゴールを決め、1点のリードを全員で守り切った。試合後に指揮官も「簡単な試合ではなかったが、選手たちがこれまでどうやって勝ち点を重ねてきたのか、チャレンジをして一歩でも前に出る姿勢を持ちながら戦ったうえでの勝利だったと思う」と手応えを語っていたが、次につながる大きな1勝を手にした。

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 そして、ついに次は川崎Fとの大一番に臨む。我々は間違いなくチャレンジャーとして戦いに挑むことになる。改めて、指揮官もこう語っていた。

「どの試合にもパワーをかけて戦っているつもり。簡単に今まで以上の力は注ぐことはできないが、気持ちの面や体の面など、いろんな面で私自身も選手自身もしっかりと準備をして戦えるようにしたいと思う。気持ちの部分だけではやっていけない。今の成績を見たら圧倒的な数字を残している相手なので、簡単な試合でないことは理解している。ただ、我々にとってはチャレンジャーとしての戦いになると思う。それを完遂できれば、勝利の女神がほほえむ。そう思って準備をしていきたい」

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 我々が失うものは何もない。どんな結果になろうとも、熱量で相手を上回り、球際で勝つ。これまで積み重ねてきた自信を胸にチャレンジャーとして戦う。川崎Fが相手でもそれは変わらない。

 離れていても気持ちは伝わる。アントラーズファミリー全員で必ず勝利を掴み取ろう。

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