PICK UP PLAYER

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 ブラジルの名門、サントスを牽引していたレフティーがアントラーズに加わった。28歳、ディエゴ ピトゥカだ。

 主戦場はボランチだが、複数のポジションをこなせるポリバレントな才能の持ち主で、長短のパスを使い分ける展開力と試合を流れを読むことに長けた選手だ。加入前、本人も自身の長所を聞かれた際には、「僕の特長はパスとチームにダイナミズムを与えること。その特長でチームに貢献できればと思う」と語っていた。今のチームに足りなかったタイプといえる。

 そんなピトゥカだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初の予定よりもチームへの合流が遅れた。試合に出場できなかった期間は約3ヶ月にものぼる。いくら個人のトレーニングでベストを尽くそうとも、試合勘やコンディションを維持することは不可能だった。

「フットボールから3ヶ月も離れてしまった。プロ選手にとって、この時間はとても長い。いろいろな面でまだベストな状態ではないし、パフォーマンスを上げていかないといけない部分が多い」

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 それでも4月18日にチームに合流すると、日々のトレーニングを全力で取り組み、着実にコンディションを上げていった。そして、4月28日のYBCルヴァンカップ鳥栖戦で公式戦デビューを飾ると、ついに5月5日のYBCルヴァンカップ福岡戦で初先発を飾った。

「(福岡戦で)90分近くプレーできたのは大きな収穫。まだ50%から60%の出来で、自分がいい状態でないことは分かっていた。その中でも、それなりのプレーができた。ただ、僕の競争意識は高い。試合に出られたことはうれしいが、今日のプレーに満足しているわけではないし、1日でも早く100%の状態になれるよう努力していきたい」

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 その言葉通り、ピトゥカは来日からずっと高いモチベーションでトレーニングを続けている。全体練習が終わった後も、クラブハウスに残って自主的に筋力トレーニングに励み、Jリーグに早く適応するため、アントラーズの試合映像を見漁っている。日本とブラジルのフットボールの違いもすぐに探し出していた。

「ブラジルと日本のフットボールはものすごく違う。まずはコンタクト多いこと、そして走れる選手が多いこと。ただ、日本に来た以上は自分もそこに早く慣れて、パフォーマンスを上げなければいけないし、ベストな状態に近づけば、必ずアントラーズの力になれると信じている。映像を見たり、いろんな選手と積極的に話をしたりして、着実に状態を上げていきたい」

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 そんなプロフェッショナルな姿勢を続けるピトゥカには周囲から自然と尊敬が集まる。チームメートの上田綺世も「アントラーズの試合映像をめちゃくちゃ見ているし、リカバリーが終わったあとも残ってチームメートのトレーニングを見ていたりする」と語り、「すごくチームへの愛情を感じる」と感銘を受けた様子だった。

「日本語はまだ難しいので、通訳を介してのコミュニケーションになってしまう。ただ、若い選手が多いので、自分も年齢を重ねているわけではないけれど、ピッチ上では細かい部分を伝えていきたい。自分の経験が彼らにプラスに働いてほしいし、彼らから学ぶことも多い。そういった形で少しずつチームに溶け込んでいって、自分にとってもプラスになるように、取り組んでいきたい」

 チームメートとは言葉の壁もあるし、「まだ100%の状態ではない」ため、出場時間は限られている。ただ、彼は真面目で責任感のある選手だ。限られた出場時間でも関係はない。「たとえ5分でも10分でも、監督やチームメートに必要とされたときに自分の力を発揮する」と言い、ピッチに立てば「『出来る限りチームに貢献しよう』という気持ちをみせる」ことを誓う。

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「90分間ずっと途切れることなく後押ししてくれるサポーターには感謝しかない。僕がサポーターに恩返しできるのは、ピッチ内で戦って走ることだけ。だから、それは約束する。幸福な瞬間を届けられるように頑張るので、これからも応援してほしい」

 まだコンディションは万全ではない。ただ、彼はアントラーズファミリーに喜びを届けるため、どんなときも準備を徹底し、全力を尽くす。ディエゴ ピトゥカの真価が発揮されたとき、アントラーズはまた一つ進化を遂げる。

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