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 昨季、松村優太はプロ1年目ながらリーグ戦13試合に出場し、試合の流れを変える切り札として存在感を示した。加入当初は「周りがなかなか見えない。練習からバチバチだし、判断力を含め、全然テンポが違う。ついていくのが大変」とプロのレベルの高さにたじろぐ部分もあったが、時間の経過とともにプロの水にも慣れ、終盤には「ドリブルが通用してきた実感がある」と徐々に自信をつけていった。

 だが、1年目の結果には満足していない。YBCルヴァンカップでプロ初ゴールを記録したもののリーグ戦では無得点に終わり、「ゴールやアシストが少ない。もっと増やしていく必要があると感じた1年だった」と悔しさを滲ませた。そして、「来季はルーキーという肩書きが消える」と危機感を募らせ、「このリーグで誰にも負けないくらい、スピードやドリブルという武器を磨いて、ゴール、アシスト、状況判断の部分も進化させたい」と覚悟を語っていた。

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 新たな決意を胸に臨んだ2021シーズン、松村は開幕からジョーカーとして起用され、短い時間で存在感を示し続けた。すると、3月21日の名古屋戦でついにプロ初先発のチャンスを得る。「もともとあまり緊張しないタイプだけど、珍しく緊張する。すごく気持ちが入った」と、本人も気持ちを昂らせて試合に臨んだ。

 しかし、この試合で松村は静岡学園の先輩である吉田豊と対峙するも、1対1の勝負で経験の差を見せつけられ、得意のドリブルとスピードを完全に封じられた。大きなインパクトを残せないまま、68分に途中交代し、チームも0-1で敗れた。

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 試合を終えて、松村は「これまで途中出場が多く、終盤で相手が疲れていたり、オープンな展開になってからプレーすることが多かった。相手が整っている状態から出場したのは久々で高校以来だった。この経験がプロで出来たことは自分にとって大きいと思う」と収穫も語ったが、「結果を出せなかったのは、実力が足りないということ。もっとトレーニングを積んでいかないといけない」と唇を噛みしめた。そして、悔しさを滲ませながら、次のように語っていた。

「吉田選手はJ1で長くプレーされている経験のある選手。一つひとつの対応など、まだまだ差を感じた。対人が強い選手なので、後ろ向きでボールを受けると潰されてしまうことは分かっていたし、裏で勝負するとか、前向きで受けて勝負するとか、自分の得意な形に持っていけるように心掛けていた。だけど、いくつも(後ろ向きで受ける場面が)あった。まだまだ自分の経験が足りないし、技術も足りないと思った。この経験をこれから活かしていきたい」

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 ドリブルもスピードもJ1で通用することが分かった今、取り組むべき課題は自分の中ではっきりしていた。ずばり、『ボールの受け方』を変えること。松村は「ボールの受け方を変えていきたい。自分で試合を見返したときに、止まっていることが多かった。自分がいままで苦手だった部分でもあるし、取り組んでこなかった部分でもある」と語り、「昨季よりも出場機会は増えているので、それをこれからどう活かしていくかが大事になってくる」と語っていた。

 克服すべき課題を露見した名古屋戦の後、松村は試合から少し遠ざかった。次の浦和戦は途中出場を果たしたが、その後の3試合は出場機会なしに終わる。開幕からコンスタントに出場を続けていただけに、本人も「もどかしさ」と「悔しさ」を感じていた。

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 それでも、日々のトレーニングを全力で取り組んでいると、直近の札幌戦で再び先発のチャンスを掴んだ。

 松村は試合開始から攻守両面で積極的にプレーし、果敢なドリブル突破やスピードを活かしたチェイシングで相手に脅威を与えた。すると、32分にその積極性が実を結ぶ。相手GKのミスを誘発し、貴重な先制点をアントラーズにもたらした。その後もスピードを活かしたプレーで札幌の守備陣を脅かし、64分にはPKを獲得。得点にはつながらなかったが、相手DFを一発退場へと追い込んだ。そして、86分に途中交代するまで献身的に戦い、チームの3-0での勝利に大きく貢献した。

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 この見事な活躍に相馬監督も「先制点が大きかった試合だと思う。特に得点の場面ではマツが、自分の武器を出してくれた」と語り、「見ている人からしたら興奮するゴールだったと思う。他の選手にはできないゴール」と手放しで松村を称賛していた。本人も「今シーズン初ゴールということで、今後に向けて自信になる。2連勝もすばらしいこと。そのなかで勝利に貢献できてうれしく思う」と、手応えを感じた様子だった。

「自分が出てる試合で勝てず、個人としてもなかなか結果が出ないという、もどかしさがあったなかで、自分が結果を残してチームが勝ったという事実は自信につながるし、今日は素晴らしい試合だったと思う。ただ、次はすぐにリーグ戦がある。リーグ戦ではまだ決めていないので、早く得点を取りたい」

 さあ、次は中3日でリーグ神戸戦だ。札幌戦で高いパフォーマンスをみせた松村にとって、神戸戦は活躍の継続性が問われる試合になる。「今年は結果に直結するプレーを意識している。得点なりアシストなり、結果につながるプレーをし続けたい」。チームを勝利に導く得点とアシスト。松村優太は目に見える結果を貪欲に奪いに行く。

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