PICK UP PLAYER

photo

 鹿嶋で生まれ育った沖悠哉は、小さい頃からアントラーズのゴールマウスを守ることを夢見てきた。「どんなに時間がかかっても、いつの日か、プロとしてカシマスタジアムに立ちたい」。そんな一途な思いで日々の努力を続けてきた。

 そして、昨年8月8日、明治安田J1第9節鳥栖戦で念願のプロデビューを飾った。初舞台の高揚感は今も忘れていない。

「何より試合に勝てたのが大きかった。あっという間の90分間だったけど、ファン・サポーターの皆さんの前でプレーするのがこんなに楽しく、素晴らしいことなんだと実感できた」

photo

 ついに憧れの舞台に辿り着いた背番号31だが、プロデビューで満足することはなかった。むしろ、「何もかもが初めてあったので、自分のことで精いっぱいだし、毎試合が勝負だと思っていた」と、強い危機感を抱き続けた。そして、一つの椅子を巡る熾烈なポジション争いも沖の心に火をつけていた。

「自分がうまいからという理由で試合に出ているかと言われれば、そうではない。僕はソガさんやスンテさんよりも足りないところばかり。そんな自分がなぜ試合に出ているのか。それはきっと、足元の技術だったり、年齢が若いことによる積極性だったりを買われているんだって、自分なりに考えた。だからこそ、試合ではアグレッシブにプレーし、相手と接触したとしても負けない球際の強さを見せないといけない」

 曽ケ端準とクォンスンテ。彼ら2人に代わってゴールマウスを守ることの意味を下部組織出身の沖が理解していないはずがない。偉大なる先輩へのリスペクトとライバル意識は成長を加速させた。その結果、沖はシーズン最後までゴールマウスを守り抜いた。

photo

 プロデビューから目覚ましく立場が変わった昨シーズン。振り返れば、やはり「成長している実感がある」と確かな手応えを得た。しかし、そんな手応えよりも、脳裏に焼きついていたのは、涙を拭った昨季のリーグ最終節のことだった。

「昨年の最終節は悔しい結果で終わった。それでも、サポーターの方々が拍手で試合を締めくくってくれた。そのときに、やっぱりアントラーズが好きで、このチームで優勝したいと思えたし、そのようなチームで試合を出来ることを感謝しないといけないと、改めて思えた。サポーターの方々の強い気持ちをしっかり背負って、選手が表現できるようにがんばりたい」

 あの悔しさを、絶対に晴らさなければいけない。今季はチームとしても、個人としても「昨シーズンよりパワーアップしたところをピッチで表現しなければいけない」と強く誓っていた。

photo

「絶対に優勝したいし、クラブ創設30周年でタイトルを獲りたい。個人としては、試合に出続けることが目標。まだレギュラーを取ったとは思っていないし、激しいポジション争いがあるーー。自分はまだまだ未熟だし、すべてにおいて進化したい」

 決して現状に満足することはない。沖悠哉は飽くなき向上心を燃やし、愛するアントラーズのゴールマウスを守り続ける。

photo


pagetop