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 1年前、荒木遼太郎が東福岡高校からアントラーズに加入した。シーズン開幕前の宮崎キャンプでは、「高校からプロに環境を移して、今は練習についていくのに必死。周りの選手を見て、ほぼ毎日のように『すごいな』と感じる」と、初々しく語っていたが、ルーキーイヤーが半ばを過ぎたころには、「いいコンディションをキープできているし、試合を重ねていくなかで、どんどん自信がついてきた感覚がある。少しずつ余裕を持てことができ、序盤戦よりも周囲がよく見えている」と、言葉の端々にたくましさが感じられるようになった。そして2021シーズンの開幕前、飛躍を遂げたプロ1年目について聞けば、返ってくるのは反省の言葉ばかりだった。

「数字のことはあまり気にせず、各試合で自分の持ち味を出すことを意識していた。ただ、全体的にみると、自分としては『できなかった部分が多かった』印象。守備面では、自分のエリアで相手を潰すことができず、失点に絡んでチームに迷惑をかけたこともあった。フィニッシュに関わる部分では、自分がもっとチャンスを作ったり、ゴールを決められていれば、より勝ち点を積み上げられたし、ACLの出場権も獲得できたと思う」

 1年前、半年前、そして現在。意識の急速な変化はそれぞれの時期に発した言葉が如実に物語っている。

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 迎えたプロ2年目、今季は背番号が『13』となり、「偉大な方々がつけてきた番号」を継承した。クラブ、ファン、サポーターから大きな期待が寄せられていることも、はっきり自覚している。昨年以上の責任と覚悟をもち、「一選手として、もはや試合に出場するだけでは満足することができない。試合に出て、ピッチの上でどのような結果を出すことができるか。今年の僕には、この部分が求められていると思う」と、2021シーズンに臨んだ。

 その強い決意は目に見える結果となって現れた。開幕戦でいきなりゴールを奪うと、「調子がすごく良い」との言葉通り、第2節湘南戦では2ゴールを記録し、さらに前節の広島戦でも貴重な同点弾を決めた。リーグ戦開幕3試合連続ゴールは、クラブ史上4人目で最年少の快記録だ。

 この活躍にはザーゴ監督も「昨シーズンのキャンプから『何か違うものを持った選手』という感覚を持っていた。トレーニングを重ねて徐々に試合で使っていき、いい形で成長してきている」と称賛の言葉を贈り、「将来的にはレギュラーになる力を持っていると思うし、それを確実な力としていくために成長を続けないといけない。アントラーズのレギュラーだけでなく、日本代表を目指してほしい。そうなるように彼をサポートし続けていきたい」と、さらなる活躍に期待していた。

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 となれば、心配になるのが19歳の彼にかかる重圧の大きさだ。目覚ましい活躍とともに周囲からのプレッシャーは強くなっている。ただ、そんな心配も彼の場合は杞憂に終わりそうだ。

「ピッチに立つと、緊張とか心配とか、さらに背番号のことなども、実はあまり気にならないタイプ。僕はフットボールが本当に好きなので、試合中や練習中はもちろん、ボールに触れている時間はプレッシャーをいい意味で忘れてしまう。その瞬間のプレーに集中して、思う存分楽しみたい」

 上手くなりたい。その思いが、純粋に強い。「レベルの高い環境でプレーすることができて、日々自分の成長を感じられるし、練習に行くのが毎日楽しくて仕方ない」と嬉しそうに語る。見るものすべてを吸収し、自然と周囲に新鮮な刺激を与える。稀有な才能の持ち主だ。

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 そんな日進月歩で変貌を遂げている荒木にとって、次のアビスパ福岡戦は、特別な試合となる。ゴールを決めれば、開幕4試合連続得点となり、1998年当時の『背番号13』、柳沢敦が高卒3年目で記録したクラブレコードに並ぶことになる。この背番号を継承するに相応しい選手だと、周囲に知らしめる絶好のチャンスだ。また、東福岡高校出身の荒木にとって、プロ入り初の凱旋試合となる。気持ちも自然と高ぶっているだろう。

「染野、松村、山田、僕ら4人がこの先もっと成長して、“未来のアントラーズの中心“となり、明治安田生命J1リーグの優勝はもちろん、アントラーズが過去に成し得た“国内三冠“という偉業を達成することを理想像にしている」

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 可能性は無限大だ。この先、どんな飛躍を遂げるのか、どんな景色をみせてくれるのか。『背番号13』の成長を見られる幸せを感じよう。

 2021年3月17日、高校3年間を過ごした福岡の地で、荒木遼太郎がさらに進化を遂げる。

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