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 “アントラーズのキャプテン“という重責を受け止めて臨んだ昨シーズン。序盤はチームの成績に対する不安や心配の声をたくさん耳にした。それでも、1年間を通じて三竿健斗が胸に秘めていたのは、アントラーズが新たに取り組むフットボールスタイルへの手応えと自信だった。

「(シーズン序盤に)敗戦が続いたなかでも、非常に強度の高い練習ができていたし、自分たちがやりたいことを表現できている感覚はあった。『今は苦しいけれど、このフットボールだったら絶対に上にいける』という自信もあった。周囲が思っているよりも不安はなかったし、むしろ自信を持ってやり続けようというスタンスだった」

 思うような結果が出なくても、信念だけは決して失わなかった。ブレることのないメンタリティは、三竿健斗の強みだ。「新しいことを始めるときは、うまくいかないことが多い。失敗と改善を繰り返してレベルアップしていくもの」。現状を冷静に分析し、目の前の練習や試合に集中した。頼れるキャプテンの姿勢は、チームに落ち着きをもたらしていた。

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 三竿の言葉通り、チームは試合を重ねるごとに、進化を遂げていった。理想とするポゼッション主体のスタイルを追い求めながらも、失敗と改善を繰り返すなかで、ハイプレスとトランジションの強化を重点的に行うようになる。そして、その二つの武器を活かすために、現実的なショートカウンターを磨いた。

「シーズン序盤、なかなか勝てなかったときは、誰もが試合に出たいから監督の言葉に敏感になって、言われたことしかやらない雰囲気があった。それでも、試合をこなすごとに、監督は選択肢の一つとしてイメージを伝えてくれているだけであって、それをすべてやれと言っているわけではないと、みんな気づくことができた」

 チーム戦術の理解が深まり、基本と応用のバランスが取れるようになっていく。すると、徐々に結果が伴いはじめ、8月26日のFC東京戦から11年ぶりとなるリーグ戦7連勝を達成した。選手たちは新たなフットボールスタイルの進化を感じ、それが自信につながった。三竿は「自分が披露したいプレーを表現しつつ、周囲と連動しながらそのプレーを生かせば、さらに大きな効果が発揮できるという感覚を掴むことができたーー。チームメートが何を選択しようとしているのかを感じ取り、そのイメージに合わせて、それぞれが動き方を変えることができるようになってきた。サッカーにおいては、頭でっかちにならず、瞬時の判断をすることがとても大事。判断の共有という部分に、チームとしての成長が感じられる」と、昨シーズン後半の戦いについて、手応えを語っていた。

 しかし、チームとしても、個人としても、成長を強く感じた一方、結果として2020シーズンのタイトル奪還は叶わなかった。「ファン・サポーターの皆さんが望むような成績を残すことができなくて申し訳ない」。三竿は責任を強く感じていた。

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 それでも、彼は未来を見据え、今に集中する。「現状に対して、悲観する必要は全くない」と言い切り、「昨シーズンの戦いを通じて、今シーズンはもっと質の高いフットボールを披露して、『絶対に優勝をつかみ取りたい』という強い思いが芽生えた。新しいスタイルがチームに浸透し、試合中のプレーの幅が広がっている実感がある。手応えは昨年を通してつかむことができたし、今年の戦いに向けて、とても大きな自信を持っている」と、言葉に力を込めた。

「昨年と違うのは、1年間同じメンバーで、同じフットボールをやり続けた『ベース』があること。今年はシーズン最初から『みんなで一つになって、優勝を目指そう』という雰囲気を強く感じる。クラブ創設30周年という節目の年で、優勝を目指さないといけない。もちろん、タイトルを獲るということは簡単ではない。ただ、どんなときも、チームのために、仲間のために戦えるのが、僕たちの強み。そこを強くしていけば、おのずと結果もついてくる。シーズンの最初から最後まで、アントラーズファミリー全員で一丸となって、一つひとつ、勝っていきたい」

 タイトル奪還へ、準備は整った。確固たる自信を胸に、三竿健斗が聖地でしんかをみせる。

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