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 今年で32歳になった永木亮太は在籍5年目を迎えた。年齢にしても、在籍年数にしても、チーム内では上から数えた方が早い。本人も「チームのなかで立ち位置が少しずつ変わってきて、自分のことだけでなく、チーム全体のことも考えないといけなくなってきた」と、立場が徐々に変化していることを実感している。

 だが、今季もポジション争いは厳しい。ここまでボランチは三竿とレオのコンビが優先的に起用されており、永木は連戦のターンオーバーや試合途中から起用されるケースが多い。ピッチに立てば存在感を示しているものの、定位置確保には至っていない状況だ。

 本人はもちろん現状に「悔しさはすごくある」と語る。一人のフットボーラーとして、試合に出れないことが悔しくないわけがない。だが、いまの永木はチームを牽引する一人であり、個人の感情は優先されない。この悔しさとどう向き合えば良いのか。立場が変わったことで葛藤が生まれた。

「30代になって、20代のときよりも考え方がチームファーストになってきている気がする。自分が試合に出られないときも、怒りの感情を抑えられるようになってきた部分がある。もしかすると、それはいいことではないのかもしれないけど...」

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 チームのことを最優先に考えてきた永木は、さまざまな経験を積むなかで、良くも悪くも大人になっていった。いつからか自分の気持ちをコントロールし、悔しさを抑え込むようになっていた。

 だが、「やっぱり試合に出たい気持ちは今でもすごく強いし、その気持ちがなくなったら終わりだと思う」と、一人の選手としての気持ちは失ってはいけないと気づいた。「これまでは自分とチームで葛藤することはなかった。個人的には試合に出ていないと気持ちがなかなか保てないタイプだから」と語り、「ソガさんは気持ちがずっとギラギラしている。自分が試合に出られなかったことをすごく悔しがっているし、そういう熱い気持ちを全く失っていないから。本当にすごいと思う」と、身近にいる大先輩に刺激を受け、内なる闘志を燃やした。

 立場の変化は、ピッチ上でも葛藤を生み出していた。「正直に言えば、『もっと積極的にいきたいな』と思うときもあるけど、やっぱり何より大事なのはチームが勝つこと。そのために自分を犠牲にしなければいけないときもある。だけど、他の選手のことを考えすぎて自分のスタイルが乱れるのは避けたい。その一方で、30代の選手は若手に気をつかったり、アドバイスしなければければいけない部分もある。バランスを自分なりにうまく取っていかないといけない」と、チームの勝利と自らの活躍のバランスを取る難しさを語っていた。

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 ピッチに立つ11人全員が、それぞれ自分がやりたいようにだけプレーしていては、勝利は到底掴めない。厳しいプロの世界で勝ち続けるためには、誰かがチームのためにバランスを取り、自己を犠牲にしたとしても、汗をかくことが必要だ。

 ただ、その役割を担える選手は限られている。経験が浅い選手には試合の肝を抑えることができない。さまざまな経験を積んできたからこそ触れられるフットボールの深淵。永木は立場を変えたことで、新たなフットボールの難しさ、そして、面白さに出会えた。

「僕自身もさらに成長したいし、チームを勝利に導ける選手になりたい。そのためにもより自分を出しながらもっと努力していく。今年32歳になったけど、衰えたような姿は絶対に見せたくない。ここからもう一段階成長していく姿を皆さんにみていただきたい」

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 向上心は30代になっても、20代のころと何ら変わりない。

「チームへマイナスな意味の変化をもたらすようなことは絶対にしたくない。やっぱりアントラーズは勝ち続けていかないと評価されないチーム。その過程で『アントラーズはまた一段と強くなったな』と言われるようなチームにしていきたい。アントラーズには歴史があるし、さまざまなOBの方がいて、応援してくださる方もたくさんいる。そういう方々に悔しい思いをさせたくないし、ずっと強いアントラーズであり続けてほしいと願ってくれているはず」

 どんなときもチームのために走り、献身的に戦ってきた背番号6に成長の限界はない。アントラーズスピリットの体現者、永木亮太はさらに進化を遂げる。

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