PREVIEW

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 2020明治安田生命J1リーグも残り6試合となった。ここまでを振り返ると、本当に難しいシーズンだった。

 1月1日の天皇杯決勝に敗れたことでACLプレーオフからの出場となり、シーズンオフをほとんど取れない状態でチームは始動した。ザーゴ監督を招聘し、1月の宮崎キャンプから新たなフットボールスタイルに挑戦したが、準備期間はあまりにも限られていた。

 あっという間に迎えたACLプレーオフ、結果は0-1とホームでまさかの敗戦。雨のカシマで涙をのんだ。そこから今季国内初の公式戦となったルヴァンカップ初戦でも敗れると、リーグ開幕節の広島戦では0-3と完敗を喫した。そして新型コロナウイルス感染症の拡大により、Jリーグは中断を余儀なくされた。

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 2月25日に公式戦中断が発表されてから、4月7日にはトップチームの活動休止を強いられた。それから5月17日までの41日間、選手たちは自宅待機となり、個々でのトレーニングを強いられた。仲間と一緒にトレーニングができない、ピッチでボールが蹴られない。2011年の東日本大震災でも経験していない未曾有の事態に直面した。

 ただ、中断期間も選手たちは準備を怠ることなく、個別にトレーニングを続け、コンディションを維持した。そして、5月18日にグループトレーニングを再開し、その10日後には全体トレーニングへ移行した。そして、数度のトレーニングマッチを重ねて、チームの習熟度も高めていった。

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 しかし、毎試合チャンスをつくりながら決めきれず、ミスから簡単に失点して敗れる試合展開が続いた。本当に本当に苦しい戦いが続いた。たった1勝をあげることが、たった1つのゴールを奪うことが、どれだけ難しいのか。スタイルの大幅な変化への適応により、序盤は苦戦を強いられることは覚悟していたが、改めて勝負の厳しさを思い知らされた。

 ただ、苦しみの最中でも、己と仲間を信じて戦い続ける。選手、監督、コーチ、スタッフ、一丸となって最善の準備を尽くした。そして、何より大きかったのが、サポーターもずっとチームを信じて支え続けてくれたこと。不甲斐ない試合を見せた後でも、次の試合の勝利を信じて、応援し続けてくれた。前を向いて戦い続けられたのは、選手たちを信じてくれたサポーターの存在があったからだ。

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 新しく生まれ変われようとする中、8月20日に内田篤人の現役引退が発表された。内田のラストカシマとなった8月23日のG大阪戦、1点ビハインドの試合終了間際に劇的な同点弾が決まり、意地をみせた。

 試合後の引退セレモニーで内田は、「鹿島アントラーズというチームは、数多くのタイトルを取ってきた裏で、多くの先輩方が選手生命を削りながら、勝つために、日々努力してきた姿を僕は見てきました。僕はその姿をいまの後輩にみせることができないと、日々、練習していくなかで、体が戻らないことを実感し、このような気持ちを抱えながら、鹿島でプレーすることは違うのではないか、サッカー選手として終わったんだなと、考えるようになりました」と語った。改めて、チーム全員がアントラーズでプレーする意味を、そして責任を考えさせられた瞬間だった。

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 3日後の8月26日、アウェイFC東京戦からアントラーズの快進撃が始まった。戦術が徐々に浸透していき、選手たちがそれぞれの個性を発揮できるようになった。過密日程のなかで、9月23日の湘南戦まで破竹の7連勝を飾り、順位も大きく上昇させた。

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 10月に入っても、1週間に2試合のペースで連戦が続いた。4勝3敗となんとか勝ち越したが、白崎凌兵や和泉竜司が思いがけない負傷で戦線離脱を余儀なくされてしまう。ピッチに立つ選手は出場できない選手の気持ちを背負って戦い、自らの役割を懸命にこなした。試合に出場できない選手も、ピッチに立つ選手を最大限サポートした。苦しい時期を乗り越えたことで、チームの団結力は揺るぎないものになっていた。

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 そして11月3日、直近の横浜FM戦は、2点を先制されながらも、チーム一丸で逆転勝利を掴み取った。決勝点は、ここまで出場機会が限られていた伊藤翔のクロスから遠藤康が見事なダイレクトボレーで決めてみせた。得点後にはベンチの前で歓喜の輪ができた。誰が出ても勝つのがアントラーズ。シーズン終盤に突入し、ようやくチームの真価を発揮できた一戦だった。

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 思い返せば、本当に本当に苦しいシーズンだった。だが、どんな困難に直面しても諦めず、我々は一丸となって乗り越えてきた。選手、監督、コーチ、スタッフ、サポーター。どんな時も全員で、勝利のためだけに戦ってきた。我々には培ってきた強い絆と揺るぎない自信がある。

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 さあ、今節の相手は川崎Fだ。リーグ戦の直接対決では直近10試合で1勝3分6敗。最後に勝ったのは2015年8月29日まで遡らなくてはいけない。長年の雪辱を果たさなくてはいけない。意地とプライドにかけて、今回こそは絶対に勝たなければいけない。

 ここまで幾多もの困難を全員で乗り越えてきた。カシマスタジアムに集う全員の気持ちが強ければ、どんな相手だろうが、必ず勝利できるはずだ。己と仲間を信じ、力強く勝利を掴み取ろう。アントラーズを愛する者の心はひとつ。全員でともに戦い、聖地で歓喜を分かち合おう。

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