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 8月23日、内田篤人のラストカシマ。アントラーズファミリーの誰もが目に涙を浮かべ、耳を凝らし、試合後の引退セレモニーを見守った。

「今日、僕はここでサッカー選手を引退します。鹿島アントラーズというチームは、数多くのタイトルを取ってきた裏で、多くの先輩方が選手生命を削りながら、勝つために、日々努力してきた姿を僕は見てきました。僕はその姿をいまの後輩にみせることができないと、日々、練習していくなかで、体が戻らないことを実感し、このような気持ちを抱えながら、鹿島でプレーすることは違うのではないか、サッカー選手として終わったんだなと、考えるようになりましたーー」

 ピッチ脇で見守る選手たちも食い入るように背番号2を見つめていた。偉大な先人が選手生命を削って紡いできた歴史。このクラブのためにプレーすることの意味。そして、ここで学んだことを次の世代へ繋いでいく使命。鹿島アントラーズが大切に紡いできた伝統の価値と重要性を改めて感じさせてくれた。

 ここ数年は時代の潮流に沿う形で、アントラーズも選手の入れ替わりが激しくなった。Jリーグ3連覇を達成した当時のチームを知る選手も、内田の引退でまた一人減った。

 フットボールスタイルは変わった。でも、変わらないものもある。いまの選手たちにも、確実に伝統は受け継がれている。

 この日、後半アディショナルタイムに長い距離を走って同点弾を決めた犬飼は、試合後のインタビューで息を切らし、涙をこらえながら「本当に勝ってお疲れと言いたかった。本当にたくさんのことを学んだ。また成長した姿を見せたい」と語った。

「選手が変われば、チームの空気というか、雰囲気もガラッと変わる。優しい選手も多いし、優勝争いに慣れていない選手も多い。ただ、ポテンシャルはあると思う。いい選手は多い。結果が先に出ると一気に変わるはず」

 内田はかつてそう語っていた。選手が入れ替わっても、クラブハウスやスタジアムの雰囲気は変わらない。ともに戦ってくれる背番号12の存在がいる限り、アントラーズはアントラーズでいられる。

 中2日で迎えるアウェイFC東京戦。全ての思いを勝利への決意に変えて、全員で戦おう。どんなときも、離れていても、思いはひとつ。すべては勝利のためにーー。アウェイでも必ず勝ち点3を掴み取ろう。

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