PICK UP PLAYER

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 海外でのプレーに憧れていた。その夢がついに実現した。行き先は日本。母国ブラジルから見れば地球の真裏で、言葉や環境、習慣など、さまざまな面で異なる。だが、アラーノに迷いはなかった。異国の地でのチャレンジに心躍った。

「まず、日本の素晴らしい文化を理解すること、習慣を身につけるところを大切にしたい。敬意を持ちながら生活することが、人間として成長に繋がる。日本語を覚えたり、ブラジルとは違う文化に触れたりするのも楽しい。まだ23歳なので、経験すること、身につけるものは多くある。すべての面で成長、向上させていきたい」

 アラーノの性格を端的に表わせば、真面目。来日した直後は「少し戸惑いがあった」と言うが、1、2週間もすれば「すっかりブラジルの地元にいるような感覚」と、あっという間に環境へ適応した。謙虚に「チームが温かく迎えてくれたし、溶け込みやすい雰囲気をつくってくれた」と感謝の言葉を述べていたが、ここまで早く適応できたのも、表ではみせない本人のプロフェッショナルな努力があったからに違いない。ポルトガル語の川窪通訳によれば、「“アリガトウゴザイマス“と”アリガトウゴザイマシタ“の違いは?」など、ふとした瞬間に生まれた疑問をすぐに尋ねたり、ネットで調べたりして、自ら積極的に日本語を勉強しているという。同じピッチで戦う三竿も「日本語の勉強を頑張っているみたいね」とその姿に感心していた。ピッチ外で日本の環境に適応しようと努力を惜しまなかった結果、すぐにトレーニングでも目を見張る輝きをみせるようになった。

 しかし、トレーニングで高いパフォーマンスをみせるものの、公式戦ではなかなかチームを勝利に導く活躍ができない期間が続く。味方のために長い距離を走り、多くのチャンスをつくっているが、得点やアシストといった目に見える結果がついてこない。責任感の強さゆえの焦りなのか、ゴール前で訪れた決定機も“らしくない“ミスで外してしまう場面が目立った。そして、新加入の同胞エヴェラウドがゴール数を伸ばしていく中、アラーノの初ゴールは、ここまでまだ生まれていない。

 それでも、彼の弛まぬ努力と本来持つポテンシャルの高さは、誰もが認めている。少しばかり時間がかかったとしても、必ず活躍をみせる日は訪れるはずだ。決して焦る必要はない。本人も「ゴールにつながるようなパスが僕の持ち味。ただ、サッカーはチームスポーツ。自分がやりたいことだけをやるのではなく、お互いに助け合う気持ちが必要。そのなかには、コンディションがよくなかったり、ミスが多かったり、プラスになれない試合もあるかもしれない」と話していた。そして、アラーノは思うようなパフォーマンスが出せない試合こそ重要だということもよく理解している。「たまにボールが収まらないときもあるだろうけど、意欲だけは示したい。ファイティングスピリット、最後まで諦めない姿勢をピッチで表現したい」、「勝ちたいという意欲や姿勢は、どんなときでも見せられる。そこでけは、どんなときでも努力し続けていきたい」と、どんなときも勝利にこだわる姿勢を強調していた。ここまでの試合をみればわかる。アラーノは、その言葉通り、どんな試合でも戦う姿勢を示してきた。

「僕から皆さんに伝えたいのは、ポルトガル語の“ジュントス“。”一緒“という意味だけど、“団結“にも繋がる言葉。みんなが団結することで、新たな力が生まれ、チームがより一層強くなっていく。シーズンを通して、そういう戦いをしていきたい。選手である僕らはピッチで結果を出すために全力を尽くすので、ファン・サポーターの皆さんには、これからも熱烈な応援を続けてほしい」

 共闘精神に溢れた背番号7の活躍を誰もが願っている。ピッチ外でも常にプロフェッショナルに振る舞い、ピッチの中では気持ちの入ったプレーをみせる、彼ならばきっと期待に応えてくれるはずだ。ファン アラーノが真価を発揮したとき、アントラーズはまた一つ上のレベルへ進化することだろう。

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