PREVIEW

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「結果だけを求めるフットボールをやるのであれば、(自陣に)引いて守り、カウンターだけを狙えばいい。だが、私にとってのフットボールは違う。『パスを繋いで、相手のゴールに辿り着くこと』だ。信念を貫き、このやり方を追求していきたい」

 7月22日水曜日、アウェイのShonan BMW スタジアム平塚で湘南ベルマーレと戦った。アントラーズは立ち上がりから試合の主導権を握り、後方からパスを繋いで湘南陣内に攻め込んでいく。ボールを奪われた後の切り替えも迅速で、湘南のカウンターを許さなかった。湘南の粘り強い守備に苦戦したものの、前半はアントラーズが圧倒的にボールを支配し、狙い通りの形で試合を進めていた。後半に入っても、主導権は譲らない。53分、59分と立て続けに決定機をつくった。しかし、チャンスを決めきれないと流れは湘南に傾いてしまう。すると66分、コーナーキックから痛恨の失点を喫してしまった。その後、アントラーズは前線に人数をかけて猛攻を仕掛けるも、湘南の体を張った守備を前にゴールをこじ開けることができない。そして、0-1というスコアのまま、試合終了を迎えた。

 試合後、ザーゴ監督は「予想していた通りの試合展開になったし、湘南の戦術は分かっていた。チャンスはつくったが決めきれず、セットプレーから失点をしてしまった。失点後もチャンスを活かせずゴールを決められなかった」と、悔しさを滲ませた。この試合も課題の決定力不足は改善できなかった。「チームの結果が出ていないことで、前線の選手に焦りや落ち着きがなくなっているところがある。練習では出来ていても、試合では決まらない。選手たちには『物事をしっかりとやり続けること』を強調している」。進むべき方向は間違っていない。だから、継続することの重要性を説いた。

 新たなスタイルは一朝一夕で確立できない。まずは特性を活かしたシステムとルールを整備し、ゴールから逆算したボールの道筋を設計する。そして、選手たちとともに地道な反復練習を繰り返す。ピッチで起こる様々なシチュエーションに適応できるよう、トレーニングで戦術を落とし込んでいく。選手たちは経験を重ねることで、頭で考えて判断していたプレーが、徐々に自然と体が反応するプレーに変わっていく。根気よく段階を踏んで、チームに浸透させなくてはいけない。

 ここまで不甲斐ない結果が続いているが、新たなスタイルの浸透と定着という意味では、毎試合、着実にチームは成長を見せている。後方からボールを繋ぎ、狙い通りの形をつくり、あとはフィニッシュの局面で決めるのみ。指揮官も「私の求めているフットボールをやるという部分では間違っていない」と試合毎に手応えを掴んでおり、チームの雰囲気は悪くない。

 試合に出場している選手だけでなく、出場機会の少ない選手にもチーム戦術に適応し始めている点も非常にポジティブな点だ。湘南戦では先発を4人入れ替えて臨んだが、どの選手もチーム内での役割をこなしながら、個性を発揮した。指揮官も「私は選手たち全員のことを見ている。今日出場しなかった選手たち含め、チーム全員を戦力として考えている。今回はシラや聖真の状態が非常に良かった。全員がさらに状態を上げていけば、さらに選択肢が増えていくと思っている」と、激しいチーム内競争を喜んだ。

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「ファン、サポーターの情熱的な要求、そして応援が、選手たちをより勝ちたいという気持ちにさせてくれる。お互いに敬意を払いつつ、高め合って勝利を目指していければと思いますーー。また、掲げるのは魅力あるサッカーです。私はこれを目指していきたい。それを実現するためには、皆さんの支えなしには実現できないので、応援してもらいたい」

 舞台は再びカシマスタジアムに戻る。フットボールを愛するアントラーズファミリーがおくる拍手は、必ず選手たちに刺激と勇気を与えるはずだ。新たな時代を創るために、仲間を信じてともに戦おう。

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