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「全身全霊で1試合にかけている気持ちは見てもらいたい。アントラーズが掲げる目標は絶対に達成しないといけない。そのために、僕はピッチ上で献身的に戦うし、努力をし続ける」

 昨年末、ブラジルで活躍したエヴェラウドには多くのオファーが届いていた。金銭面ではもっといい条件があったのも事実。だが、アントラーズへの移籍を決断した。

 日本行きの決め手は「文化に興味があり、いつか行ってみたい国だったから」、「世界的にも知られていて、多くのタイトルを獲得してきたアントラーズが、僕の武器を評価して声をかけてくれて、素直に嬉しかったから」だという。また、二児の父として日本の教育環境に惹かれた点もあった移籍を後押しした。一家の大黒柱としての覚悟と責任を背負い、サウジアラビア、メキシコに次ぐ、日本への挑戦を決断した。

「Jリーグの最多優勝クラブに来れたことは嬉しいですが、来れただけで満足するのではなく、非常に高いモチベーションがあります。早く試合がやりたいというのが正直な気持ちです」

 1月12日、エヴェラウドは非常に高いモチベーションで宮崎キャンプへ合流した。しかし、母国で長いオフシーズンを過ごし、試合間隔が開いた影響で、コンディションは崩れていた。そして、慣れない環境への適応に苦しみ、なかなかトップフォームに戻らない。気持ちと体がフィットせず、もどかしさばかりが募る。

 そして、チームとしても個人としても結果が出ないまま、新型コロナウイルス感染症の影響によるJリーグの公式戦中断期間に突入した。またアントラーズもトップチームの活動休止を余儀なくされた。言葉が通じない異国の地で、先の見えない状況。不安に苛まれたことは容易に想像できる。だが、それでも真面目のストライカーは自宅で根気よくトレーニングを続けた。中断期間の地道な筋力トレーニングで体重を約2キロ増量させ、本来のフィジカルを取り戻した。

「これまで身体がフィットしておらず、環境に慣れる時間が必要でした。中断期間のトレーニングを通して、筋力も上がり、パワーも上がり、フィジカル的な自信を非常に感じています。すぐに試合をやりたいという気持ちでいっぱいです」

 全体トレーニング再開後、練習場には自らの武器と自信を取り戻したエヴェラウドがいた。言葉の壁はあるものの、徐々にチームメイトとの相互理解も深まっていく。トレーニングマッチではJリーグの特長も掴んだ。「日本とブラジルのセンターバックは少し違いがあって、日本の方がガツガツ来て、足が速いというイメージです。サッカー自体の強度の違いもあります。そこにだいぶ慣れてきました」と、活躍のイメージを膨らませた。

 そして、公式戦再開初戦のアウェイ川崎F戦。先発出場したエヴェラウドは、フィジカルを活かした強引なドリブル突破など、再開前は見られなかった積極的なプレーを見せた。しかし、ゴールを奪うことはできず、チームは敗れてしまう。すると、つづく第3節はベンチスタートになり、第4節はメンバー外となった。チームも公式戦再開から3連敗と苦しい状況は続いた。

 それでも迎えた第5節横浜FM戦、加入後初めて左サイドハーフで先発出場する。すると、開始早々の4分、左サイドでパスを受けたエヴェラウドは縦に突破して左足でクロスを送る。これにファーサイドで待つ上田がワントラップから右足を振り抜き、ゴールネットへ突き刺した。「自分の武器はパワーと瞬発力なので、縦への突破は常に意識していましたし、試合前に綺世へ『ファーサイドで準備していて』と伝えていました」と、狙い通りの形で先制点をお膳立てした。

 さらに2-1のスコアで迎えた67分、ついに待望の瞬間が訪れる。カウンターから中央で遠藤がタメをつくると、右でフリーのアラーノにパスを出し、アラーノがラストパスを送る。これをファーサイドへ走り込んだエヴェラウドがゴールに叩き込んだ。エヴェラウドは喜びを爆発させて咆哮し、アシストしたアラーノと熱い抱擁を交わした。

 結局、横浜FM戦は4-2でアントラーズが今季初勝利を収めた。1ゴール、1アシストの活躍で勝利の立役者となったエヴェラウドは、試合後のインタビューで安堵の表情を浮かべていた。

「勝てない時期が続き、フォワードなのに点を取れていなかったので、重圧はありましたし、本当に辛かったです。それでも自分に厳しい要求をし続けた結果、1ゴール1アシストという形になった。チームに貢献できてよかったと思います」

 横浜FM戦の活躍は決して偶然ではない。日頃のトレーニングを一切手を抜かず取り組む姿勢が、ゴールという結果になって現れ、チームを勝利に導いた。

「スタジアムに来て応援してくださった方、来られなくても応援してくださった方に、まずは感謝したいと思います。この勝利をきっかけにいい結果を出し続けるということが使命ですし、シーズン終盤は必ず優勝争いすることが、アントラーズのいるべき場所だと思うので、これからも続けて頑張っていきたいです」

 実直で誠実なストライカー、エヴェラウドがアントラーズを勝利へ導く。

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