PREVIEW

photo

「誰が出たとしても勝つのがアントラーズ。試合に出ている選手だけではなく、ベンチに入っていないメンバーも、常にちゃんと練習をしていれば、絶対にチャンスは来る。そういう姿勢や結果を清水戦では示すことが出来た」

 遠藤康は誇らしげに語った。今季はなかなか出場機会が巡ってこない時期もあった遠藤だが、常に準備は整えていた。黙々とトレーニングを行い、コンディションの調整に努めてきた。そのサッカーへの真摯な姿勢が、清水戦で目に見える結果として表れた。

 キャプテンマークを巻く機会が増えている三竿健斗は、遠藤の存在についてこう語る。

「ヤスさんに関して言えば、試合に出ていなくても、僕たちへの振る舞い方だったり、アドバイスを普段からしてくれています。そのヤスさんが得点を取って、アシストをしてくれたことが、本当に嬉しかった」

 試合に出場している選手だけではない。次から次へと連戦が続いていくなかで、まさに選手全員が一体となって、戦いに臨んでいる。

 今シーズンから加入した伊藤翔は、「ベンチに入ったメンバーも、前半から一緒に戦ってるし、一体感がある。こういうチームは強いだろうなっていう実感が得られるというか、誰が途中から出ても、いいメンタル状態で入っていけるベンチの雰囲気がある」と、語っていた。実際、どの試合でも、控えの選手がピッチに立つ選手たちへ水を配り、声をかけて味方を鼓舞する場面がみられる。

 指揮官も、いまのチームの雰囲気について、「スタッフもいいまとまりを見せてくれているし、選手も一体感がある。非常にいい形で進めることが出来ている」と話した。一戦必勝、チーム全員が目の前の試合の勝利だけを目指して戦っている。

photo

 ただ、チーム一丸で戦っていたとしても、8月から9月にかけて、1週間に2試合のペースで連戦が続いている状況がある。ターンオーバーも敢行しながら戦っているが、疲労の蓄積はどうしても避けられない。

 ACLを含めた連戦は初めての経験と云う白崎凌兵は、「当然、すべての試合で、自分がノーストレスの状態、ベストな状態で試合を続けるというのは、日程上もそうだし、難しくなっている」と話していた。「どんな状況であっても、勝つことが求められるチームなので、言い訳にしたくない」と言葉を続けたが、長距離移動を含む連戦で疲労が残るのは、致し方ないことだろう。

 幾多もの困難を乗り越えてきた選手たちと言えど、過密日程のなかで迎える試合は、身体的な疲労のみならず、メンタル的にも非常に厳しい戦いを強いられる。特に、試合終盤はピッチに立つ全員が極限に近い状態で、技術や戦術、論理を超越した戦いが繰り広げられる。様々な要素が複雑に絡み合うなか、試合終了を告げるホイッスルが鳴るまで、どれだけチームが一体となり、力を発揮できるか。どれだけ優れたチームであっても容易いことではない。

photo

 そんな過酷なピッチ上において、チームに大きな影響を与えられるのが、アントラーズファミリーの存在だ。

 無論、直接ボールに触れることはないが、選手へのチャントが、チームコールが、大きな歓声が、選手の「あと一歩」を動かし、ボールの行く末を変える。一人、一人の声が、スタジアムの雰囲気を変え、試合の流れを変える。決して迷信ではない。長年、フットボールを愛する者であれば、必ずそのような場面を体験したことがあるだろう。

 YBCルヴァンカップ 準々決勝 第2戦、ビハインドを負った状況で臨む浦和は、前がかりに攻撃を仕掛けてくるはずだ。押し込まれる時間帯も訪れるかもしれない。予期せぬアクシデントが起こるかもしれない。だが、カシマスタジアムには大勢のアントラーズファミリーが詰めかける。我々の声援は、チームを勝利へと導けるだろう。この極めて重要な一戦を、選手、監督、コーチ、スタッフ、サポーター、聖地に集う全員が一体となって、乗り越えられれば、必ず歓喜の瞬間が訪れる。一戦、一戦、目の前の試合を全力で戦い抜いた先には、前人未到の全冠達成が待っている。

pagetop