「いわゆる“鹿島らしさ”にやられてしまったと思います」
FC東京の長谷川健太監督は、試合を振り返って、こう証言していた。「本当に鹿島らしい試合をされて負けてしまったと。非常に悔しい結果です。今日は、鹿島の方が、決定力やしたたかに戦う、という意味で一枚上だったのかなと思いますーー。このスタジアムはやはり難しい」。
決戦前から聖地は高揚感と緊張感に包まれていた。勝利への決意を固めた選手たちがピッチへ姿を現すと、アントラーズレッドに染め上げられたスタンドから、いつにも増して大きく、情熱のこもったチームコールが注がれる。ここはサポーターの情熱が空間を支配する我々のホームスタジアム。アントラーズファミリーが最高の雰囲気をつくりだしてくれた。
「カシマスタジアムは難しいと選手たちにも伝えて、集中力をもって試合に入ったつもりだったんですが、一発目のコーナーキックでやられてしまいました。(渡辺)剛は、まだこういうスタジアムに慣れていなくて、経験不足が若干出てしまったかなと思います」
スタジアムの雰囲気がFC東京の選手を飲み込んだ。アントラーズはその怯んだ隙を見逃さなかった。
犬飼智也は試合後にサポーターの力強い後押しについて、こう語っていた。「ホームのいい雰囲気の中でやっているなと感じた。今年はホームで戦うときは、チームとしての一体感が強くなっています。サポーターが作ってくれているんだと思います」
カシマスタジアムは神秘的な熱気に包まれる。これは論理を超越した、まぎれもない事実だ。アントラーズファミリーの情熱が空間を支配する。その想いを後ろ盾にすることが出来た選手は勇躍する。指揮官も選手とサポーターへの信頼を語った。
「サポーターの皆さんと一緒に戦って、FC東京さんにプレッシャーをかけられたことを嬉しく思いますーー。我々はホームで戦うということが、アドバンテージとしてあります。勝つためのこだわり、執着心、そういうものがプレーの局面、局面で現れていました。相手に押し込まれたとしても最後は絶対に割らせない、という個人個人の意識だったり、チームとしての割り切りだったり、そういうところは自信をもって選手たちを送り出しています。そういうことが出来る選手たちなので」
選手、監督、コーチ、スタッフ、サポーター、聖地に集結した全てのアントラーズファミリーが一体となって、掴み取った勝ち点3だった。
次は、アジア連覇を目指した戦いだ。FC東京戦から中3日という日程、勝利以外は許されない状況、非常に厳しい条件が揃っている。勝負はどちらに転ぶかわからない。
だが、ここまで幾多もの厳しい戦いを乗り越えてきたことを思い出そう。グループステージ第1節では、ホームでジョホール相手に苦戦を強いられ、2-1となんとか辛勝を収めた。第2節ではアウェイ山東に乗り込み、2点リードしながら、2-2の引き分けに持ち込まれた。第3節のアウェイ慶南戦は、後半に2点のリードを奪われ、退場者を出しながらも、後半アディショナルタイムに同点に追いつき、勝ち越し点も奪って、逆転勝利した。第4節ホーム慶南戦は、実力を発揮しきれずに、0-1と悔しい敗北を喫した。第5節では過酷なマレーシアの環境に苦しみ、ジョホールに0-1と連敗した。第6節ホーム山東戦は、先制点を奪われる苦しい展開になったものの、後半途中に投入された伊藤が、わずか3分間で2ゴールを決めて、逆転勝利を収めた。サンフレッチェ広島と激突したラウンド16では、ホームの第1戦で1-0と先勝するも、第2戦では2-3と敗れ、アウェイゴールの差でなんとか勝ち抜きを決めた。
振り返ればわかる。一戦たりとも簡単な試合はなかった。しかし、すべてを乗り越えてきた。アントラーズファミリーが一体となって戦えば、どれほど困難な状況に陥ったとしても、乗り越えられる。
スタジアムで力強い声援を送れば、必ず選手たちは応えてくれるはずだ。我々も最高の声援で選手の気持ちに応えよう。歓喜の瞬間に向けて、アントラーズファミリー全員で、ともに戦おう。