「今年は自分のサッカー人生が終わるくらいの気持ちで取り組みたいです」
プロ9年目のシーズン開幕を前に、土居は並々ならぬ決意を固めていた。
転機となったのは、昨年12月、アジア王者として出場したクラブW杯だった。レアル・マドリード、リーベルプレートといった世界的な強豪と対戦し、「いつまで経っても追いつけないんじゃないか」と衝撃を受けた。
「これまでのサッカーに対する考え方や価値観を一度、まっさらにして、改めて積み上げていくというか、表現していく。そんな感覚です」
「枠にとらわれすぎないで自分の感じるままにプレーしようと思います。大事なのは、それをチームの勝利につなげること」
個人としてもチームとしても、さらなる高みを目指すため、意識をアップデートする必要がある。今季にかける思いに力を込めた。
そんな決意が結果の1つとして表れたのが、明治安田J1第10節清水戦だった。今季最高となる3万1,182人が詰めかけたカシマスタジアム。最高の雰囲気に包まれた聖地に肌が粟立った。
「カシマはやっぱり僕らの家なんです。その空気を作ってくれるのが、サポーターの皆さん。スタンドのアントラーズレッドを感じたら、もうやめられない」
サポーターの大声援が、土居の「らしさ」溢れるプレーを引き出した。前半10分に先制ゴールを決めると、その後も積極的にボールを引き出して、次々にチャンスを演出していく。まさに、「自分の感じるままのプレー」を表現できた試合だった。「左サイドに展開してから、自分がしっかりゴール前に入れていることも見せることができた。今年一番いいボールの持ち方ができた 」。今後の戦いにつながるヒントを得た。
ここから土居は勢いに乗る。ゲームメイク、チャンスメイク、フィニッシュと3つの役割をこなし、持ち味を存分に発揮していく。また、積極的に前線からプレスをかけ、守備面でもスイッチャーとして欠かせない存在になっていった。
「内容も結果もついてきていて、充実している。今はプレーしていて楽しいと思えている。それが好調の要因だと思う。どんどんいろんなアイディアが湧いてくる。うまくいかなくても、常にチャレンジしようという精神状態にある。楽しめてプレーが出来ている」
いま、背番号8はフットボールを心から楽しんでいる。意識改革の末に見出した、自分らしさを出した上で勝つ方法。聖地で迎える第1戦。広島を打ち崩すため、アントラーズには土居聖真がいる。