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 開幕からの3ヶ月、背番号5は苦しみの最中にいた。明治安田J1第1節大分戦で自らのミスから失点を喫すると、そこから公式戦3試合連続で出場機会を失う。ACLアウェイ山東戦で再び先発の機会が巡ってきたが、ここでも身体は思い通りに動かず、本来のパフォーマンスを見せられなかった。

 そんな状況で迎えたリーグ戦中断期間。韓国代表に招集されたスンヒョンは悪夢の負傷に見舞われる。診断結果は右ハムストリングの損傷。連戦がつづく重要な時期を前に、戦線離脱を余儀なくされてしまった。

「今シーズン、コンディションが思っていたよりも良くなくて。悔しいというよりかは、悲しい時間でした」

 本人はリハビリに励んだ時期をこう振り返った。次から次へと試合がやってくる過密日程。仲間たちがもがき苦しむ中、ピッチに立って貢献できないもどかしさばかりが募った。だが、我慢するしかない。復帰を焦る気持ちを抑えながら、黙々とトレーニングに打ち込んだ。

 そして、5月12日。ついに復活の瞬間が訪れた。明治安田J1第11節アウェイ神戸戦。公式戦11試合ぶりに背番号5がピッチへと戻ってきた。

 神戸戦は立ち上がりからアントラーズが主導権を握り、ボールを支配する展開となった。そんな攻勢の試合展開でも、スンヒョンは冷静にリスクマネジメントを徹底した。「ダビド ビジャ選手は常に裏を狙ってくる選手だったので、犬飼選手とコミュニケーションを取りながら、抑える方法を考えてプレーしていました」。相手のエースに対して、タイトなマークで自由を与えず、見せ場をつくらせなかった。試合を通して神戸に許したシュートは、古橋の苦し紛れのロングシュート1本のみ。アウェイで1-0の完封勝利に貢献した。

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 会心の勝利を収めてから6日後、ホーム松本戦。スンヒョンは久々にカシマのピッチに立った。松本戦も前節から引き続き、アントラーズが一方的に攻め立てる試合展開となった。スンヒョンは冷静に試合の戦況を判断し、ピンチになりそうな場面では、鋭い読みで相手の攻撃を潰していった。スコアは5-0。今季初のリーグ戦3連勝達成に大きく貢献した。

 2試合連続の完封勝利。スンヒョンの復帰とともにチームは勢い付いている。だが、本人は自らのパフォーマンスに満足していないようだ。「怪我はもう大丈夫です。ただ、コンディションに関してはこれから徐々に上げていく段階ですね」と、自身が思い描く最高の状態には至っていない。飽くなき向上心を持つ背番号5は、「コンディションと試合勘をもっともっと上げていかないといけません。相手の7番(前田大然)のような早い選手に対して、1対1の対応、個の対応の部分をもっと上手くする必要があります」と、さらなるパフォーマンスの向上を誓った。

 さあ、今夜は乾坤一擲の戦いに臨む。ACLグループステージ突破をかけた決戦だ。

「昨年のチャンピオンとしてACLに出場しているので2連覇を達成したいです。そのためにも、必ず勝たなければいけない試合なので、自分の力を発揮したい。必ず勝つという気持ちで試合に臨みたいです」

 相手はグループ首位の山東魯能。グラツィアノ ペッレやフェライニを擁する難敵だ。真価を問われる90分になるだろう。だが、誰が相手でも勝利への決意が揺らぐことはない。鹿のエンブレムを纏い、再び栄光の瞬間を迎えるために。今夜もチョン スンヒョンがアントラーズレッドの誇りをかけて、ゴールを守る。

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