PREVIEW

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 勝利と敗北を繰り返す日々。明治安田J1第7節、アウェイでFC東京に敗北を喫してから、アントラーズは公式戦6試合で2勝4敗と暗闇をさまよった。選手たちはなかなか抜け出せない苦境の中で、もがき苦しんでいた。

 それでも決してくじけることはなかった。「選手たちの顔を見る限り、前を向いている。信頼して選手たちを送り出しているので、そこは引き続きやっていかなければいけない」。アウェイ神戸戦を前に指揮官は語った。試合から試合へ。敗北の度に気持ちを切り替え、目の前の試合だけに全力を尽くす。そのひたむきな姿勢がいま、実を結ぼうとしている。

 5月12日、ACLジョホール戦から移動日を含めた中3日と厳しい日程で臨んだ神戸戦。アントラーズは立ち上がりから連戦の疲れを感じさせないハードワークで相手を圧倒した。セルジーニョと土居が前線からプレスをかけてコースを限定すると、後方のサイドハーフ、ボランチ、最終ラインの選手もしっかりと連動して、サイドに追い込みボールを奪う。連動した守備で神戸を終始圧倒し、許したシュートは1本のみ。攻撃面ではセルジーニョの1ゴールのみと、物足りなさは残ったが、完璧な試合運びで、久々に「らしい」盤石の戦いを披露した。

 試合後、選手たちもディフェンス面に確かな手応えを感じていた。最終ラインで奮闘を続ける犬飼は、「今日は全体の意識が高かったし、最初の守備のスイッチを入れてくれる前線の選手がよかった。カウンターに行っているときは、自分を含めて、健斗とスンヒョンでしっかりリスクマネジメントができていた 」と、収穫を語った。ここから連勝を――。

 中5日で迎えた松本戦。指揮官は前節と同じ11人をピッチへと送った。試合序盤から攻勢を強めながらも、なかなか得点を奪えない展開が続いたが、25分にレオ シルバが先制点を決めて、1-0で前半を折り返す。後半に入ると、聖地に終結したアントラーズファミリーの後押しを受けて、怒涛のゴールショーを展開。47分に白崎、54分にセルジ、65分に再び白崎、83分には中村がゴールネットを揺らし、5-0と大勝を収めた。

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 神戸戦につづき、松本戦も前線からの守備が機能した。土居が守備のスイッチャーとなり、ボールをサイドに誘導すると、サイドハーフ、ボランチ、サイドバックが連動してスペースを圧縮。球際の争いで負けなかったことに加え、逆サイドの選手もしっかりと中央へ絞ったことで、危険なエリアへの進入をほとんど許さなかった。

 攻撃面でも目指してきた形が表現できた。レアンドロと白崎にボールが入ると、常にサイドバックの永木と安西がサポートし、両サイドで局面の優位をつくる。さらに、機を見ながら土居とセルジーニョがサイドに流れることで、松本の守備陣を錯乱させ、幅を広く使って攻撃することに成功した。まさに指揮官の狙い通り。苦しむことなく攻撃を繰り出す選手たちは、ピッチ上で生き生きと躍動していた。

「神戸戦の反省を活かせた。相手を押し込めたし、リスク管理もできていた。自分たちでギアを落とさないようにしていきたい。神戸戦でもギアを落とさずできたが、点を取れなかった。今日は点を取れてよかった。11人が意識高くできている。今日のような試合を長く続けていきたい」

 攻守両面で存在感を示した土居は好感触を得た。開幕から3ヶ月が経過し、攻守ともにチームのベースが固まってきている。綱渡りで勝ち点を積み重ねていたシーズン序盤とは明らかに違う。ここから上昇気流に乗り、連勝街道を突き進む。その準備は整った。

 いよいよ決戦のとき。ACLグループステージ突破をかけた大一番を迎える。対戦相手はグループ首位の山東魯能だ。個人能力の高い選手が揃っており、難敵であることは間違いない。だが、この困難を乗り越えれば、チームはここから一気に浮上するはずだ。2年連続のアジア王者へ、まずはグループステージ突破を決めて、アントラーズレッド の歓喜をカシマの夜空に響かせよう。 今夜も聖地で、ともに戦おう。

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