PREVIEW

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「体が重かったのであれば、自分のマネジメントが失敗したということ。選手が迷ったのであれば、スペースの作り方や入り方を、次の試合までに整理する必要がある」

 FC東京戦の試合後、指揮官は猛省していた。試合開始からわずか30分であれよあれよという間に大量3失点。後半は意地の一発で追い上げたが、立ち上がりに生じた混乱の代償はあまりにも大きかった。公式戦9試合ぶりの敗北。積み上げてきた自信は1試合にして打ち砕かれた。

 1日オフを挟んだチームは、気持ちを新たに中5日で迎える仙台戦へ再び動き出した。悔しさを力に変える。その決意から練習は自然と激しさを増した。自信を取り戻す戦いへ。「自分たちの良さをもう一度思い出していく」。いざ、仙台戦へと臨んだ。

 結果は1-0の完封勝利。指揮官がトレーニングで改善を要求していた「ボールを受ける位置」、「前線との関わり」、「攻守の切り替え」の3点を、永木亮太とレオ シルバが見事に完遂して見せた。最終ラインも最後まで集中を切らすことなく仙台の攻撃に対処し、無失点に抑える。そして、決勝点は苦境に立たされていた犬飼が奪った。屈辱を晴らす会心の勝利。指揮官は選手への賛辞を惜しまなかった。

「前節から今節に向けて、非常にいい準備ができたなかでのゲームだった。特に中盤の選手にはいろいろな要望を出したが、前向きにやってくれたことがゲームに出ていた。クリーンシートで終えたことも非常に評価できる。本人たちは、非常に充実した90分だったと思う。しかし、これは最終ラインだけのことではない。全体がしっかり連動していたからの結果であり、そういうところが評価できるところだと思う」

 苦境からの脱却を果たした犬飼は「前節悔しい思いをしたので、やってやろうと思っていた。本当に失点ゼロで終わることができたのはよかった。これからも失点をゼロで終わる試合を増やしていきたい。ゴールを決めることができたのも嬉しいが、何よりも、失点ゼロで終われたことがよかった」と完封勝利に胸をなでおろした。

 そして、同じくFC東京戦で悔しい思いを味わった町田も「今シーズン完封した試合が湘南戦しかなかったので、完封できた部分は素直に嬉しい。みんなで常に声を掛け合ってやっていたし、みんな集中してできていた」と安堵感を隠さなかった。久しぶりの完封勝利。苦しみ抜いた最終ラインの奮闘は心を震わせるものがあった。

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 だが、難局を乗り越えたわけではない。困難とも言える戦いはすぐにやってくる。

 ホームで迎えるACL第4節慶南戦は、チームの真価が問われる一戦となる。3月から公式戦全試合で最終ラインを支えてきた犬飼と町田のコンビが警告による出場停止で欠場し、チョン スンヒョンも負傷で離脱中。今季公式戦に出場した全てのセンターバックが欠場する緊急事態だ。

 慶南戦は間違いなく厳しい戦いになるだろう。だが、アントラーズはそんな窮地をいつもチーム一丸となり、総力戦で制してきた歴史がある。他クラブにない圧倒的な層の厚さ。この総合力こそが、年間60試合の過密日程を乗り越えてきた「常勝鹿島」たる由縁だ。

 本物の王者は、逆境に立った時こそ真価を発揮する。きっと、鹿のエンブレムを纏う誇りを胸に抱いた選手たちは、この難局に奮い立つだろう。勝てばグループステージ突破に大きく近づく。2年連続のアジア制覇へ。またあの栄光の一歩近づくことが出来る。

 変革期を迎えたアントラーズが再び新しい黄金時代を築き上げるために。この与えられた試練を乗り越えれば、また一つ強くなれる。窮地にたったいまこそ、選手、スタッフ、監督、サポーター、全てのアントラーズファミリーが力を結集し、この難局を乗り越えよう。その先には、きっと輝かしい栄光の未来が待っているはずだ。

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