「センターバック2人が真ん中でどっしり構えていこう」
リーグ2連覇中の王者、川崎フロンターレを相手に町田浩樹が突出した存在感を示した。身長190cmの高さを活かした空中戦では負け知らず。地上戦でも鋭い読みで相手の攻撃を分断した。18本のシュートを打たれたが、フィニッシュの局面では必ず相手選手に身体を寄せ、犬飼智也と共に中央を封鎖することに成功している。
「流れの中から失点していないことはポジティブに捉えている。守備のところで外に追いやっていくような守備ができたと思う」
リーグ王者との戦いで町田は確かな手応えを掴んだ。チームメイトが4-4-2の守備ブロックの外側に追い出してくれれば、中央に放り込んできたボールは自分が全て跳ね返す。空中戦に絶対的な自信をもつ男の矜持が、言葉から滲み出た。
絶対的な「高さ」は攻撃面でも力を発揮する。前半27分、永木亮太からのボールを高い打点でヘディングシュート。相手を弾き飛ばす圧巻のフィジカルでゴールネットを揺らした。オフサイドの判定で惜しくも得点は認められなかったが、セットプレーでも輝きを放った。
「拮抗した試合になればセットプレーが大切になる。鹿島はセンターバックが得点をとって勝つのが伝統としてあるので」
ユース出身の町田は、偉大な先輩たちの戦いを目に焼き付けている。秋田豊、大岩剛、岩政大樹、昌子源、植田直通。チームを勝利に導くセンターバックの存在が、常勝鹿島を築き上げた。先人が紡いできた系譜を継ぐ、その覚悟は出来ている。
プロ入りからの3年間、強力なライバルの牙城を崩せず、リーグ戦の出場はわずか10試合のみにとどまった。順調にユースからトップチームまで駆け上がってきたエリートは、雌伏の時を過ごした。それでも日々、黙々とトレーニングに打ち込み、成長を続けた。来るべき雄飛の時を見据えて。
そして迎えた、プロフットボーラーとしての4年目。植田、昌子が新たな挑戦へと旅立ち、チームは新たなサイクルに突入した。新時代のディフェンスリーダーになるべく、己の力を見せつける絶好機が訪れた。
「責任感をもってやりたいです」。自身初のACLグループステージの舞台へ。大きな飛躍を遂げる準備は出来ている。