昨シーズンはアントラーズの悲願を達成した歴史的な1年となった。ACL決勝でイランのペルセポリスFCに2戦合計スコア2-0で勝利。クラブ史上初となるAFCチャンピオンズリーグ優勝を達成した。前身であるアジアクラブ選手権、アジア・カップウィナーズカップを含めると、通算12度目の挑戦で、ようやく掴んだ「アジア王者」の称号だ。
アジア王者に輝いた2018年オフシーズン。タイトル獲得を置き土産に小笠原満男が現役を引退、昌子源がクラブを去るなど、一つのサイクルが終焉を迎えた。これから新たなメンバーと共に新たな時代を築き上げていくことになる。
2019シーズンはここまで公式戦3試合を消化。シーズン開幕戦となったACLプレーオフでは、オーストラリアのニューカッスル・ジェッツと対戦した。前半18分に伊藤が移籍後初ゴールを決めると、32分には山本がヘディングで勝ち越し点を奪取。後半には、セルジーニョが2ゴールを奪い、4-1で快勝を収めた。試合後、指揮官は「連係の部分や守備の部分で期待を上回るプレーをしてくれた」と選手を高く評価。幸先良いシーズンスタートとなった。
しかし、新たなサイクルに入ったアントラーズは、いきなり苦難に直面する。Jリーグ開幕戦で昇格組の大分トリニータと対戦すると、前半18分にいきなり先制点を献上。後半に入り、一度は伊藤翔のゴールで同点に追いついたが、カウンターから失点を喫して敗北。ホームで迎えた開幕戦を1-2で落としてしまった。
「後半開始早々に追いついてから、点を取りたいという気持ちが全員に出たところで、少し前がかりになってしまった。リスクマネジメントとして、修正すべき点があった。しっかりしたポジショニングがあれば、相手の何度かあったカウンターを受けることもない。自分たちでしっかりゲームをコントロール、ボールをコントロールすることができたはずだ」
一瞬の隙を突かれた失点。新たな課題が突きつけられた。大岩監督はリスクマネジメントの徹底、ゲームコントロールの必要性を指摘した。
痛恨の敗戦から中5日、Jリーグ第2節川崎フロンターレ戦を迎えた。試合開始早々にセットプレーから先制点を許したが、21分には伊藤翔が3試合連続となるゴールを決め、同点に追いつく。前半はこのまま同点で終了。指揮官が「正しいポジショニングと次の攻撃に行くための準備ができていて、自分たちのやりたいことをよくできていた」と振り返るように、ポジティブな内容でハーフタイムを迎えた。
後半に入ると、「ボールを奪った後のポジショニングが下がっていた分、次の攻撃につなげられなかった」と防戦一方の戦いを強いられた。それでも、町田浩樹、犬飼智也を中心とした守備陣が最後まで粘り強く耐え凌ぎ、前節の敗北から学んだリスクマネージメントの徹底、ゲームコントロールを遂行。このまま1-1の引き分けに持ち込んだ。敵地で王者相手の勝ち点1獲得は最低限の結果を得たと言えるだろう。チームは確かに成長している。
しかし、指揮官は「(引き分けでいいという考えは)私の頭の中ではなかった」とより高みを目指す。選手、監督、スタッフ、誰一人、この結果には満足はしていない。キャプテンの内田篤人も「前節敗戦して、その中で迎えた2連覇中の相手に難しいゲームになると思っていたけど、チャンスはあったので、勝ちたかった。全員が、結果には満足していない」と勝利出来なかったことを悔やんだ。
変革期を迎えたチームはまだまだ成長過程。今後も苦しい試合展開が多くなることが予想されるが、一戦一戦、勝利のみを目指して戦い続けるしかない。戦い抜いた先に、国内タイトル奪回、ACL2連覇が見えてくるはずだ。更なる高みに到達するため、新たなチームは歩みを進める。
さあ、いよいよACLグループステージ開幕。第1節はマレーシアのジョホール・ダルル・タクジムと対戦する。新たなメンバーで歴史を変えるために、その一歩を踏み出すために、聖地で必ずや勝利を。歓喜の瞬間を分かち合おう。