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「皆さんにまた成長した姿を見せられるよう、全力を尽くします」

 千葉国際高等学校(現・翔凜高等学校)を卒業後、清水と神戸を経て、2016年にアントラーズの一員となったブエノ。加入当初から恵まれたフィジカルとアグレッシブな守備をみせ、ポテンシャルの高さを光らせていたが、当時のCBには日本代表の昌子源と植田直通が高い壁として君臨しており、なかなか出場機会を確保することが出来なかった。そして、2018年。更なる成長を求めて、徳島への期限付き移籍を決断した。

 徳島で過ごした1年間は、ブエノを一回り大きく成長させた。センターバックとして試合経験を積んだことはもちろん、これまで経験のなかったFWにも挑戦し、選手としての幅を広げた。そして、本人は、なによりも精神面での成長が一番の収穫だったと語る。「リカルド ロドリゲス監督のもと、選手として成長することができました。周囲に対して誠実であることが非常に重要であると感じています」。異なるポジションに挑戦したことにより、与えられた場所で「チームのためにベストを尽くす」姿勢を学んだ。

 そして、2019シーズン。厳しいポジション争いが待ち受けていることは承知の上、ブエノは約束の場所に戻ってきた。徳島での経験を糧に、どんな苦難も乗り越えてみせる。不退転の覚悟を決めて、再びアントラーズレッドのユニフォームに袖を通すことを決めた。

 しかし、いきなり苦難が訪れる。4月19日の練習中に左鎖骨を骨折し、最低でも全治約10週間の離脱、身体にメスを入れることを余儀なくされてしまう。

 ここからリハビリ生活が始まった。ピッチ上では勇猛果敢な姿勢で相手を圧倒するが、いざピッチを離れれば、温和で照れ屋な性格の持ち主。復帰を目指してひたすら踠く日々が続いても、試合から遠ざかる危機感が募っても、悔しさはあまり表に出さなかった。周囲に対して、誠実にーー。

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 シーズン開幕から6ヶ月が経過した8月10日、明治安田J1第22節・横浜FM戦。様々な要因が重なり、ようやく背番号27が今季公式戦初めて先発メンバー入りを果たした。

 待望の90分。ブエノはこれまでの鬱憤を晴らすかのような素晴らしいパフォーマンスを披露した。天賦の才といえるスプリント能力が、通常よりも最終ラインを高く維持することを可能にし、指揮官の求める「コンパクトな陣形」を保つことに大きく貢献した。

 横浜FM戦の試合後、指揮官はブエノについてこう語った。

「選手にも言ったんだけど、ブエノは非常に良いパフォーマンスをしていたし、練習に取り組む姿勢が良かった。そのほかにも、相手のスピードへの準備ということだったり、いろんな要素が嚙み合って、試合前日のメンバー選考に繋がった」

「そして、そのチャンスを彼が掴んだ。(横浜FM戦の)パフォーマンスが非常に良かった。周りに向けて、良い発奮材料、良い刺激を与えてくれた。そして、彼自身も非常にモチベーションが高い」

 ひたむきな努力が報われた。センターバックでコンビを組んだ犬飼智也は、「ブエノは完璧だったと思います。安心して任せられました。公式戦で一緒にやるのは初めてでしたけど、ブエノの特長は練習から分かっていましたし、人に行かせたら絶対に負けないので。安心していました」と、努力を知るがゆえの厚い信頼を語った。

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 8月17日。明治安田J1第23節・大分戦でもブエノは、リーグ戦2試合連続で先発メンバーに入った。指揮官は「自信をもって送り出したい」と笑顔で信頼を語った。

 スコアは1-0。ブエノは持ち前のフィジカルとアグレッシブな守備で大分の攻撃を跳ね返し、強気なプレーでコンパクトな陣形を維持することに成功した。2試合連続の好パフォーマンス。本人も「すごく自信がつきました」と手応えを掴んでいる。ブエノとの連係について犬飼も「だいぶいい連係が出来ています。上手くカバーも出来ていますし、チャレンジも出来ているので、問題ないです」と話した。

「レギュラーを勝ち取って、すべてのタイトル獲得の力になりたい。そのために、すべての力を尽くします」

 来日9年目、流暢な日本語で活躍を誓るブエノ。これまで実直な努力で幾多ものの困難を乗り越えてきた。真価をみせる準備はできている。

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