「今年はより一層、やらなきゃいけない環境になりました。今までは人任せに出来る環境だったり、源くんに頼っていたところを、自分の責任にしていく必要があります」
町田浩樹は今季に懸ける想いを語った。植田直通、昌子源と日本を代表するCBが海外へ移籍し、ポジションを確保する絶好のチャンスが訪れている。「今年はディフェンスリーダーがはっきりしていません。だからこそ、自分がもっとやっていかなきゃいけないと思っています」。変革期を迎えたチームの新たな軸になる。そう、決意を固めていた。
その言葉通り、町田はシーズン序盤から先発の座を確保する。3月1日の明治安田J1第2節川崎Fから5月8日のACLグループステージ第5節ジョホール戦まで、約2ヶ月で公式戦14試合を戦うハードな日程となったが、累積警告による出場停止で欠場した1試合を除く、13試合で先発フル出場した。まさにチームの主軸として、欠かせない存在になっていた。
しかし、5月12日の明治安田J1第11節神戸戦。町田は15試合ぶりにベンチで90分を過ごすことになった。チョン スンヒョンが長期離脱から復帰し、犬飼智也とコンビを結成。二人は相手のエース、ダビド ビジャに全く仕事をさせず、試合を通して相手のシュートを1本に抑える安定感抜群のパフォーマンスを披露し、完封勝利に貢献した。この活躍により、神戸戦以降、CBのレギュラーは犬飼とスンヒョンで固定された。背番号28はCBの先発から外れ、左SBとして出場する機会も増えていった。
「悔しさやもどかしさはもちろんあります。だけど、それを上手く力に変えていきたい」
本職ではない左SBで奮闘を続けていた町田に再びチャンスが訪れる。ACLラウンド16第2戦広島戦。スンヒョンが左ハムストリング筋損傷の怪我を負い、全治5週間の離脱を強いられてしまった。このアクシデントにより、町田は再びCBの先発に返り咲くこととなった。
スンヒョンが復帰する前に、さらなる成長を見せる必要がある。意識を高く保ち、再びCBとしての歩みを進めた。
しかし、勝負の世界は甘くなかった。CB復帰戦となった明治安田J1第17節広島戦。前半27分、柏にニアサイドで先に触られて同点弾を許してしまうと、試合終了間際には再び柏に同点ゴールを決められた。スコアは2-2。掴みかけていた勝ち点3を取りこぼす結果となった。
「本当に勝たなければいけない試合だったし、負けに等しい引き分けだと思う。2失点目まで持っていかれる過程でも問題があるし、そのあとの対応にも問題がある。二度とこのようなことがないようにしていきたい」
町田は悔しさを滲ませながら静かに言葉を紡いでいた。全力でプレーしながらも、思うような結果を残せない日々。もっと成長しなくてはいけない。自責の念に駆られた。
常勝鹿島を支えてきたセンターバックの伝統を継ぐ男として、周囲の期待と要求するレベルは極めて高い。結果を残せないと容赦のない批判が浴びせられる。町田は「周りからもかなりハッパをかけられています。年齢的には若いのですが、変な遠慮はせず、自分が最終ラインを統率するくらいの強い気持ちで取り組んでいきます」と語る。プレッシャーをモチベーションに変えようと、必死に奮闘を続ける。
決意を新たに臨んだ天皇杯2回戦。中2日という厳しい日程だったが、町田はCBで先発フル出場し、初めてトップチームでゲームキャプテンを任された。「期待とチームのなかでの立ち位置を考えた。今日は曽ケ端もいたが、今後、町田自身がどういう立場でアントラーズにかかわっていくのか、そういう自覚を促す狙いもあった。今日のメンバーでいえば、キャプテンマークを巻くという責任を持つことができる選手だと判断して託した」。奮闘を続ける町田へ、指揮官からのエールだった。
試合後に本人が「もっと守備面でも、攻撃面でも、詰めていかなければいけないところはある」と語ったとおり、天皇杯でも改善点がみつかった。だが、成長のためには歩みを続ける必要がある。一戦、一戦、全力で戦い続けなければいけない。
「連戦の最後の試合なので、みんなですべてを出し切って勝利をしたい。中2日だけれど全然大丈夫。頭の中も整理できている」
まだ、町田浩樹の挑戦は始まったばかりだ。我々、アントラーズファミリーは、背番号28に心からの情熱を送り、その成長を見届けよう。